猫を起こさないように
虚皇日記 -深淵の追求-
虚皇日記 -深淵の追求-

媾合陛下

  こう-ごう【媾合】性交。交接。交合。(広辞苑第四版)
 私の名前は媾合陛下。マスコミに作られたイメージ通り、毒にも薬にもならない頭の弱い知的にチャレンジされている人の笑顔を臣民に向ける毎日。それにしても、今日の私はどうしたのかしら。遅れたメンスのせいか、とっても気分がアンニュイ。
 「どうなされました媾合陛下」
 「疲れたわ。こんなのは本当の私じゃないもの」
 「しかし、それが陛下のお仕事でございます」
 「ねえ、あなた何故私が媾合陛下と呼ばれているか知ってる?」
 「いえ、お恥ずかしいことですが、存じ上げておりません」
 「それはね……しゃッ」
 「ああっ、たいへんだ。媾合陛下がバルコニーから二十メートルも跳び上がり、堀をひとまたぎに樹齢千年の樫から削りだした厚さ50センチの大門にディズニーのような人型の穴をあけ、外に立つ屈強なガードマンをものともせずなぎ倒して出ていかれたぞ」
 「いかん! 追え、追うのだ」

 「うふふ、久しぶりの娑婆の空気。あら、いい男。こんにちは」
 「あっ。媾合陛下だ」
 「私を知っているのね。ならなぜ私が媾合陛下って呼ばれてるかは、知ってるかしら」
 「ぞぞぞ、存じ上げておりません」
 「緊張しちゃって。 可愛いわね。いいわ、教えてあげる。それはね……しゃッ」

 「はぁ、はぁ。いました! いや、おら れました!」
 「ああっ、たいへんだ。すでに媾合陛下のおみ足が下郎の下半身をがっちりとホールドされているぞ」
 「しまった、遅かったか。(振り返り)諸君、残念だが、ああなってはもう手遅れだ」
 「おお、おお、この匂い、この感じ。久しく忘れていた女性自身の高ぶり。いいわぁ」
 「媾合陛下の御姿を御簾でお隠し申し上げるのだ。急げ急げ」
 「おお、おお、私のわがままなボディが若い精気で満たされていく」
 「ええい、散れ、下衆ども。近寄るでない。そのつまらぬ凡々たる日々の生活へと戻ってゆけ。あっ。こら、御簾を乗り越えるな」
 「そうよ、この瞬間の私が本当の私。見て、私が媾合陛下よ!」
 「ああっ、たいへん だ。媾合陛下が男を下半身にプラグインしたまま御簾を突き破って蜘蛛のように道路に飛び出し、向かい来る車をあたかもそれらが豆腐ででもあるかのように次々と破砕しながら、幹線道路を御殿場方面へ逃走なされたぞ」
 「見られたか。今ここにいる全員を射殺しろ。無条件発砲を許可する。そう、全員だ。一人たりとも生きて帰すな」
 「ぱんぱんぱん」
 「きゃああ、今生では私自身の血を分けた息子としての実存に押し込められているけれど、来世では光の王女としての私の夫なることが親神様によって定められ確定している偏差値72のみのるちゃんが、額の中央の漫画的な拳銃に撃たれた記号から血と脳漿を吹き出して重力方向へあおむけにブッ倒れたわ」
 「みんな見でえぇぇぇわだじよぉぉぉわたじが媾合陛下なのよぉぉぉぉ」

媾合陛下

  こう-ごう【媾合】性交。交接。交合。(広辞苑第四版)
 私の名前は媾合陛下。マスコミに作られたイメージ通りの私を演じるために、今日は来たくもない清水寺へ観光に来ているの。それにしても、今日の私はどうしたのかしら。遅れたメンスのせいかとっても気分がアンニュイ。
 「お疲れのようですね」
 「私の中には寺社仏閣めぐりなんて枯淡の心境は、少しもないのだもの。こんなのは本当の私じゃない」
 「しかしそれが貴方のお仕事です、媾合陛下」
 「ねえ、あなた何故私が媾合陛下と呼ばれているか知ってる?」
 「いえ、先月こちらに配属された新人なものですから、存じ上げておりません」
 「ふふ、それはね……しゃッ」
 「ああっ、たいへんだ。媾合陛下がまるで清水の舞台からとび降りるように思い切って清水の舞台からとび降り、五メートルも落下したところで全身のたるんだ皺に風をはらませて、まるでムササビのように奈良方面へと飛び去ったぞ」
 「追え、追うんだ」

 「ああ、久しぶりの娑婆の空気。いいわぁ。あら、修学旅行の学生ね。こんにちは」
 「あっ。媾合陛下だ」
 「私のことを知っているのね」
 「そんな。や、やめて下さい」
 「ふふ、女に触られただけで赤くなるなんて、本当にうぶね。私がどうして媾合陛下と呼ばれているのか、教えてあげるわ。大丈夫、怖がらないで……しゃッ」

 「みなさま、カリフォルニアより遠路はるばるお疲れさまです。さて、みなさまの右手に見えますのが聖徳太子ゆかりの法隆……あっ」
 「オゥ、何デスカアレハ」
 「マグワッテイルネマグワッテイルネ激シクマグワッテイルネ」
 「みみみみなさま、左手をごらん下さい。ええと、その、鹿。そうです、愛らしい鹿の親子が」
 「ガイドサン、コレドノヨウナニポンノ文化」
 「おお、おお、久しく忘れていたこの匂い、この感じ。いいわぁ」
 「お母さん、お母さん」
 「私知ッテマス、アレニポン語デ”青姦”言イマス。古キ良キニポンノ文化」
 「私モ聞イタコトアリマス、青空ノ下デ姦通スルカラ”青姦”言イマス」
 「サスガカリフォルニア大学デニポン文化ヲ専攻シテイルダケノコトハアリマスネ、スティーブ」
 「もういや、もういやぁ」
 「中学生ニキビダラケノ顔ヲ思想的ナ真ッ赤ニ染メテイルネ」
 「お母さん、お母さん」
 「サスガカリフォルニア大学デ政治思想史ヲ専攻シテイルダケノコトハアルネ、ステファニー」
 「衆人姦視ノ中デノマグワイガ快楽ヲイヤ増シテイルノダネ」
 「サスガカリフォルニア大学デ心理学ヲ専攻シテイルダケノコトハアリマスネ、ジェイン」
 「はぁ、はぁ。いました! いや、おられました!」
 「ああ、たいへんだ。媾合陛下のおみ足がいたいけな中学生の腰を折れそうなほどにがっちりとホールドしているぞ」
 「もういやです、私帰ります。帰るんだからぁっ」
 「しまった遅かったか。(振り返り)諸君、ああなってはもう手遅れだ。お隠し申し上げろ。媾合陛下の御姿を御簾でお隠し申し上げるんだ」
 「おお、おお、若い身体の精気はなんて強いのかしら。私のわがままなボディが悦びにうちふるえているわ」
 「オゥ、何デスカコノ人タチ」
 「コウイウノニポンゴ語デナンテ言ウカ私知ッテマス。”無粋”言イマス」
 「サスガカリフォルニア大学デニポン文化ヲ専攻シテイルダケノコトハアリマスネ、スティーブ」
 「国家権力ノオーボーダゾ」
 「ええい、散れ、寄るなこの毛唐どもめ。貴様らの目に触れるだけで穢れだ。とっとと自分の国に帰って、前向きと無思考を取り違えることのできる単純さで、今日受けたトラウマのカウンセリングでも受けてろ。あっ。こら、御簾を乗り越えるな」
 「オーボーデスオーボーデス。国家権力ノオーボーデス」
 「ソウダソウダ。我々ニハ法ニ約束サレタ”知ル権利”ガアルゾ」
 「サスガカリフォルニア大学デ政治学ヲ専攻シテイルダケノコトハアルネ、ステファニー」
 「そうよ、この瞬間こそが飾らない本当の私。私が媾合陛下なのよ」
 「ぼきり」
 「ああっ、たいへんだ。媾合陛下が人間の本来にはあり得ない方向に上半身を曲げた、紙より白い顔色の男子中学生を腰にプラグインしたまま、毛唐の数人を戦車のように踏みつぶし、鹿の親子を人間の側の勝手な投影を排除したやりかたでまるでそれらが単なる畜生に過ぎないとでもいうかのように引き裂き、その先にそびえる五重塔をまるでそれが運動会の棒倒し競技用の棒に過ぎないとでもいうかのように彼女がいつもチンポにするごとくに倒壊させ、蜘蛛のように走り去って行くぞ」
 「見られたか。今ここにいる毛唐どもを全員を射殺しろ。無条件発砲を許可する。そう、みんなだ。一人も生きて国外に出すな」
 「ぱんぱんぱん」
 「オゥノゥ、グランパガ”トムトジェリー”ノヨウニ厚サ2ミリノ紙状ニ潰サレテ遙カ上空カラヒラヒラト舞イ降リテキタ私トイウ実存ハダニエル・キイスニ原作ヲ提供デキルホドノ心ノ傷ヲ負イマシタ」
 「サスガカリフォルニア大学デ心理学ヲ専攻シテイルダケノコトハアリマスネ、ジェイン」
 「みんな見でえぇぇぇわだじよぉぉぉわだじが媾合陛下なのよぉぉぉ」

媾合陛下

  こう-ごう【媾合】性交。交接。交合。(広辞苑第四版)
 私の名前は媾合陛下。今日は国を代表する大使としてA国大統領との夕食会に招かれているの。たくさんのVIPに囲まれて今日ばかりはさすがの私も少し緊張気味。
 「ああ、不安だわ。通訳はまだ到着しないの」
 「たった今お着きになりました」
 「押忍。遅参をお詫び致す。今日の通訳の御役、腹を切る覚悟で務めさせて頂く」
 「こちらがチョンガチョンガ連邦からいらっしゃった通訳のミハイロウィチ・ゲリチンスキー氏です」
 「ええと、あの。(小声で)ちょっと、大丈夫なの?」
 「ゲリチンスキー氏は日本語、英語、そしてチョンガチョンガ連邦の公用語であるハッチョレ語の三カ国語をよくするトリリンガルの英才でございます、媾合陛下」
 「ただいまご紹介に預かりましたゲリンチンスキーでございます。本日はお日柄もよく。以後お見知りおきをおひけえなすってござ候」
 「不安だわ」
 「ああ、大統領がいらっしゃったようです」
 「”Oh, Ms.INTERCOURSE! Nice to meet you!”」
 「ええと、あの、通訳」
 「御身の後ろに控えて候。大統領殿はただいまこのように申された。『おお、あなたとお目にかかることはナイスだ、媾合陛下』」
 「お招き頂いたのですからこちらからもご挨拶を」
 「え、あああああのあの。ここ、こんちこれまた大統領。よっ、にくいねこりゃ」
 「もう少し国家の代表としての威厳をお持ちになって下さい」
 「だって。外人なのよ。それも大統領っていったらすげえ外人じゃないの」
 「貴国の大統領殿に我ら媾合陛下の御意見をかしこみかしこみ奏上し申し上げる。”Hey, Mr. FUCKIN’ President. I absolutely hate you!”」
 「”…Huh? What is she saying now!? No, Shit!”」
 「ねえ、なんか怒ってるわよ」
 「媾合陛下、大統領殿はただいまこのように申された。『あぁん? 今そこのアマは何て言いやがった。うんこ嫌い』」
 「どうも何か気に障られたようですな。文化的差異というやつでしょうか。なんとか場を取りなして下さい、陛下」
 「わ、私が?」
 「あなたがいま我が国の代表です」
 「ええっと、ええっと。あの。了見の狭いことは無しにして今日は楽しくやりましょうね。って、いいかしら。よろしく頼むわよ、ゲリチンスキーさん」
 「かしこまった。貴国の大統領殿に我ら媾合陛下の御意見をかしこみかしこみ奏上し申し上げる。”I guess your ASSHOLE is too tight, Mr. President. Deeper, harder, I’m just CUMing!”」
 「ああっ、たいへんだ。何か我々には理解不能な理由に顔を真っ赤にした大統領が核発射と大きなフォントで書かれたリモコンを片手に大股に部屋を出て行かれるぞ。御国の危機だ。どうしようどうしよう」
 「ガタガタ騒ぐんじゃないよ。ピンチに肝がすわるのは性分ね。私も媾合陛下と呼ばれた女。見てなさい……しゃッ」
 「嗚呼なんたるちやサンタルチヤ南無八幡大菩薩、媾合陛下のおみ足がカニばさみの要領で今まさに部屋を出んとする大統領殿を二十センチも沈み込むような思想的な匂いのする赤の絨毯の上に押し倒し、その下半身をがっちりとホールドしたまま近代格闘における不落のマウントポジションに持ち込んだで御座るよ」
 「しまった。早ぅ広間の扉を閉めるのだ。一人も中に入れるな。一人も外に出してはいかん。残った人間は全員射殺しろ。そうだ、メイドも秘書官も、とにかく全員だ。一人たりとも生かしてこの部屋から出すな」
 「ぱんぱんぱん」
 「きゃああ。日本のメイドフェチに高く売ろうと思っていた、やっぱり全くの新品よりも多少は様々の体液が付着していたほうが喜ばれるのでここ二三日洗わずに着ているお仕着せが、私自身のみなに乳牛と形容される巨大な胸に突然うまれた漫画的な記号からの『おいおい、もう死んでるぜフツー』というくらいの大量の出血で汚れてしまい、もう売り物にならなくなってしまったわ。という内容のことを英語で実はしゃべっている英語圏の人間という私の実存だわ」
 「”!? Holyshit! It’s so good!! One thousand worms are living in her PUSSY!!!”」
 「媾合陛下、大統領は今このように申された。『聖なるうんこ。すげえ気持ちいい。彼女の子猫ちゃんはカズノコ天井だミミズ千匹だ』」
 「ああ、さすが外人、それも一国のトップともなるとモノの大きさが違うわね。これよ、この感じ。これが本当の私なのよ」
 「”God damned! This is too good to stand any more!!”」
 「ああ、わがままな私のボディが毛唐の精気で満たされていくわぁ」
 「媾合陛下、大統領殿は今このように申された。『神のうんこたれ。これはこれ以上耐えるにはあまりによすぎます』」
 「みんな見でえぇぇぇわだじよぉぉぉわだじが媾合陛下なのよぉぉぉ」
 「大丈夫か、聞こえているか、大統領殿。我ら媾合陛下の御意見を奏上し申し上げる。”Look at me! I’m Ms.INTERCOURSE!”。聞こえているか、大丈夫か、大統領殿」

D.J. FOOD(1)

  「 Jam, Jam! MX7! 今週もまたD.J. FOODの”KAWL 4 U”の時間がやってきたぜ! それではいつものように始めよう、Uhhhhhhhhhhhh, Check it out!
  まァ、俺もさまざまの現代人が当たり前にやるような選別の儀式をくぐりぬけてきてここにいるんだが、受験戦争? ハ、そんな遊びのような、たとえ敗れてものうのうと誰も見ないHPを作りネットワークに負荷を付加するだけの情報を送信して自己満足できるような、腐った水の生ぬるさとははるかに遠かったね! 勝つことがすべて、敗北はすぐに死そのものを意味した…そう、あの血のベトナムではね…。今ではこんな一地方局のD.J.にこじんまりとおさまっている枯れた俺の実存だけど、血気盛んだったあの頃には米軍司令部などに乗り込み、しばしば単独でやつらを壊滅させたものだったさ! っていうか今現在チャンピオン誌上で壊滅させている真っ最中なんだけどね! おっと、いけない! これ以上しゃべったら俺の正体がいったい誰だかみんなにバレちゃうよ! さぁて、いつもの犬のようなおしゃべりはこれくらいにして、まず最初のお便りは東京都にお住まいの東鳩マルチさんからだ! 『ボクはじつは全然あなたのことなんか好きじゃないんですけどね。おぉい、みんな聞こえてるかぁ! オレはこんなにビッグになったぞぉ(爆笑)! あ、もちろん全部冗談だから気を悪くしないで下さいね(^^;。今まではしおりと言えば藤崎詩織でしたけど、これからはやっぱ斎栞(はぁと)だと思うんですよね、ボク的に。とりあえずこないだのコミケで買った同人誌の一覧つけときますんで(爆)、ボクがどんなやつなのかこれで判断してみて下さい(微笑)』YoYoYoYoYoYoYoYo, Yo Men! 死んでしまえ! 次のお便りは千葉にお住まいの子猫の吐息ちゃんから! 『最近なだらかにふくらみはじめた胸が、恋にも似た切ない痛みをうったえるようになった12歳の私という実存なんですが』 YoYoYoYoYoYoYoYo, Yo Men! 生きろ! 最後の一枚は大阪府在住の小鳥くんからのお便りだ! 『こんばんは、D.J.FOODさん。何度も迷ったんですけど、重大な告白をするためにペンを取りました。僕はオナニーをするさいにしばしば乾電池を使うんですけど』YoYoYoYoYoYoYoYo, Yo Men! くたばってしまえ!
  おっと、もうこんな時間だ! みんなからのお便り待ってるぜ! それじゃ、来週のこの時間まで、C U Next Week!」

D.J. FOOD(2)

 「 Jam, Jam! MX7! 今週もまたD.J. FOODの”KAWL 4 U”の時間がやってきたぜ! それではいつものように始めよう、 Uhhhhhhhhhhhh, Check it out!
 まァ、今ではロータリークラブという単語を取り扱うような際にも『おお、いやらしい! この童女趣味者め! オマエは欲求不満か! オマエは潜在的犯罪者か!』などと叫びパーティの席でうろたえとりみだすことも隠微な幻視を抱くこともなくなり、『ふぅん、それはちょっとイカした子猫ちゃんだね。はぐれメタルほどではないにしてもね』とクールに応対できるほど充分に成熟してしまった枯れた地方局のいちD.J. という俺の実存なんだけど、血気盛んだった頃にはしばしば名古屋方面へむけて片手で新幹線を投げ飛ばしたものさ! いやァ、あの頃は若かったからね、婦女を誘い込むために子犬だろうが老婆だろうがいい人であるところの俺を演出するための小道具として暴走する新幹線の前にしばしば配置したものだったね! そしてしばしばその子犬を助けることで意図的に競技失格になったものさ! 老婆は見捨てたけどね! 加うるに当時の俺の左足はしばしば着脱式だったよ! おっと、いけない! これ以上話したらみんなに俺の正体がいったい誰なのかバレちゃうよ! ところでロータリークラブっていったいなんだろうね! さぁて、いつもの犬のようなおしゃべりはこれくらいにして、まず最初のお便りはセミパラチンスクにお住まいのアレクセイ・グリゴリーウィチくんからだ! 『ごほ、ごほ。D.J. FOODさん、こんばんは。いつも楽しく聞いています。最近なぜかいやなせきが止まらないんです。母はそんなぼくを心配していろいろ看病してくれるんです。先日も精がつくようにって、いびつな形をしたふた抱えもあるびっくりするような大きな野菜をたくさん市場から買ってきて、野菜シチューをつくってくれました。母のためにも早く元気になりたいです。最後に、はがきが汚れてしまって読みにくくなっていることをお許し下さい。さっきちょっと血を吐いたんです。ほんのちょっとだけ。それでは』YoYoYoYoYoYoYoYo, Yo Men! 死んで・・・しまうの? 次のお便りは長崎にお住まいの虹のしずくちゃんからだ! 『最近かすかにうぶげの生えはじめた、おへその下あたりが恋にも似た切ないうずきをうったえるようになった14歳の私という実存なんですが』YoYoYoYoYoYoYoYo, Yo Men! 合格、ごうか~く! 最後の一枚は大阪府在住の小鳥くんからだ! 『こんばんは、D.J. FOODさん。何度も迷ったんですけど、重大な告白をするためにペンを取りました。ぼくはじつはオナニーをする際しばしばおいなりさんを掃除機に吸引させながらブッかくんですが』YoYoYoYoYoYoYoYo,Yo Men! くたばってしまえ!
 おっと、もうこんな時間だ! みんなからのお便り待ってるぜ! それじゃ、来週のこの時間まで、C U Next Week!」 

少女地獄

 「こんにちは」
 「ああっ。そ、そんな。ぼくの、ぼくの幻想の、ロリィタァァァァ!」
 「あなたは小鳥くんがバイオを購入するとき同種類のデブと一緒に『いまさらバイオって感じじゃないしねえ!』とことさらな大声で叫んであてつけてみせたわよね。あのときの小鳥くんの愁いをふくんだ悲しげな表情は、今でも思いだすたびにあたしの胸を痛ませるの。大好きな小鳥くんの悲しみをすすぐことができるのなら、この世にただ種を維持するためだけに無意味に存在する、キルケゴールの言うところの『自然の大量生産物』たち何人の生とひきかえにしてもいいと、あたしは心から思うわ」
 「そうか、そうか、人間の肌というのは本来こんないい匂いのするものなんだ。それなのにあのくそ女どもときたら、いやな香水の臭いをぷんぷんさせて、俺たちをどうしようもなく不能にさせて…くそっ、くそっ!」
 「というわけで、お楽しみ中のところ失礼ですけど、これからあなたを殺しちゃいます。えへ。ごめんね」
 「ぶすり」
 「ぎゃあっ」
 「きゃはっ。目の細かい砂を少し余裕ができるくらいにゆるく詰めた水袋を差し貫くときのような感触。長年刃物と親しんできたあたしだからわかるの。肝臓ゲットぉ。死んじゃえ、死んじゃえ~。誰にも見返られることなく、一人ブタのように死んじゃえ~」
 「ごぼ。くそ、ちくしょう、俺だって、こんなふうには、ありたくなかったんだ。できることなら、もっと、高い何かに、ごぼ。なんで、俺は、いつも、いつも」
 「ぶすり」
 「ぎゃあっ」
 「きゃはっ。『キィン』という音とともに手首に鈍くひびく硬質の手触り。長年刃物と親しんできたあたしだからわかるの。金玉ゲットぉ。死んじゃえ、死んじゃえ~。誰にも愛されることのなかった何の生産性もないこれまでの人生を、死ぬ瞬間に初めて客観的に後悔しながら一人ブタのように死んじゃえ~」
 「待って、おいていかないで、ぼ、ぼくの、ロ、ロリィタ…」
 「おもしろぉい。立ち上がろうとして何度も血糊に足をすべらせてひっくり返ってるわ。片玉を失ってバランスがとれないのね。まるで出来損ないのおきあがりこぼしみたい。見て見てぇ。ブタ踊りブタ踊りぃ。ぶっざまぁ」
 「ごぼ…やだ…こんな…おか…あ…さん…」
 「こら。探したんだぞ。今までどこ行ってたんだ」
 「あっ、パパ。あのね、小鳥くんをいじめる悪いおとなのひとを殺していたの。今日は六人も刺殺しちゃった」
 「そうか。さぞ猊下もお喜びになるだろう。いいことをしたな、真奈美」
 「えへへ」
 「今日の夕食はハンバーグだってママが言ってたぞ」
 「やったぁ。あたし、ハンバーグだぁい好き!」

媾合陛下

  こう-ごう【媾合】性交。交接。交合。(広辞苑第四版)
 私の名前は媾合陛下。ホワイトハウスでの惨劇から一ヶ月、A国の威信をかけた大追跡をすんでのところでかわす死と隣り合わせの毎日。今日も今日とて名前も知らない土地で放置された丸太小屋の干し草に身を横たえるの。何か危険なものを一枚下に孕んだおそろしく静かな大気が、今夜が無事には過ぎ去らないだろうことを私に告げているわ。
 「媾合陛下、たいへんです。小屋の周囲を完全に取り囲まれています」
 「窓よりの眺望を媾合陛下に慎んで奏上し申し上げる。完全装備のヤンキーどもが数百人、ここからうかがえるだけで戦車が四台、上空には両脇にミサイルを二本づつ抱え込んだヘリが旋回しているで御座るよ」
 「大げさすぎますな」
 「やつらはいずれ私個人の暴力が一国家の軍事力に匹敵するまでに成長するだろうことを見越しているのよ」
 「がしゃん」
 「四方からのライトがこの小屋を攻撃目標として照らし出したで御座る。夜闇に浮かび上がるこの小屋の様子はまるで嵐の海に乗り出すボートのように頼りなくあの鬼畜米英どもの目にうつり、やつらの男根的な優越感を大いに満たしているのだろうと想像するだにはらわたが煮えくり返るで御座るよ」
 「”Surrender within thirty-second. Or we’ll begin to attack you.”」
 「媾合陛下にきゃつら鬼畜米英の意味するところをかしこみかしこみ奏上申し上げる。『三十秒以内に投降せよ、さもなくば我々は攻撃を開始する』」
 「媾合陛下、どうしようどうしよう」
 「あわてるんじゃないよ。どのみちやつらにゃハナから私たちを生かして帰す腹づもりなんざないのよ。何事も高度な次元にまでつきつめると単純なところに結論が戻ってくるものよ。動物のナワバリ争いと同じで、二度と歯向かう気を起こさないように叩きのめしてやればいいだけのこと。私のやり方を見てなさい・・・しゃっ」
 「ああっ。たいへんだ。媾合陛下が丸太小屋の壁面を暗喩的に破砕しながら象徴的なきりもみでA国軍の手ぐすねひいて待ちかまえるまっただなかへ飛び出していかれたぞ」
 「彼我兵力差は1対数千。分が悪いぞこりゃ」
 「媾合陛下、媾合陛下ァ!」
 「きゃおらッ」
 「ああっ。媾合陛下の下半身を露出した御足の一閃と同時に数十人のヤンキーどもの首と胴体が永遠に泣き別れたぞ」
 「媾合陛下にかしこみかしこみ奏上し申し上げる。七時の方向よりヘリから放たれたミサイルが地上数センチの位置を砂埃を巻き上げながら急速接近中で御座る。注意されたし。注意されたし」
 「ぐぼ」
 「嗚呼なんたるちやサンタルチヤ南無八幡大菩薩、媾合陛下の下唇が(この表現で賢明な読者諸賢には何のことだかもうわかりますよね?)ぱっくりと開くと飛来するミサイルを根本まで呑み込んだで御座るよ。棒状の物体の挿入を我々健康な成人男性に否が応にも連想させる傍目からもそれとわかるほどに膨れ上がった媾合陛下の下腹部の年齢制限漫画的蠢きは、我々に日本という国に生まれて本当に良かったとあらためてしみじみと実感させる高度に文化的風情で御座るよ」
 「君は日本人じゃないけどね。ああっ。その無上にエロティカな様相にA国軍兵のほとんどが股間に両手を突っ込んだ内股状態で戦闘不能に陥ったぞ。媾合陛下、戦後日本の歩んできた道は間違っていなかったのですね。加えて媾合陛下が局部の筋肉の律動だけで放送禁止的液体でぬめるミサイルを打ち返したぞ」
 「直撃を喰らったヘリが黒煙をあげながら深夜の森に墜落していくで御座る」
 「”My God! She is one of the worst VAGINA-MONSTERs in the history of human!!”」
 「媾合陛下にきゃつら鬼畜米英の意味するところをかしこみかしこみ奏上し申し上げる。『ああっ!女神さまっ。彼女は人類史上最悪のヴァギナモンスターの一人だ。俺はエイリアン2で彼女がシガニー・ウィーバーと戦っているのを見たことがあるよ』」
 「きゅらきゅらきゅらきゅら」
 「ついに戦車部隊が動き出したで御座るよ」
 「地上戦最強兵器の登場に我々の媾合陛下になす術はいったいあるのか」
 「しゃっ」
 「嗚呼なんたるちやサンタルチヤ南無八幡大菩薩、媾合陛下が乙女の恥じらいを具象する部分で(この表現で賢明な読者諸賢には何のことだかもうわかりますよね?)戦車の砲塔を根本までずっぽりと呑み込んだで御座るよ。そして媾合陛下自身からしたたる液体があたかもそれが濃硫酸であるかの如く、いかなる苛烈な銃撃をもはねかえすブ厚装甲をみるみる溶解させていくで御座るよ」
 「”Fire, Fire!!”」
 「媾合陛下にきゃつら鬼畜米英の意味するところをかしこみかしこみ奏上し申し上げる。『クビだ、クビだ』」
 「ああっ。媾合陛下の皮膚一枚と女性の有する特殊臓器一つ隔てた下で現在発生しているだろう無数の爆発を知らない部外者の目から見たならばそれは年齢制限ゲームにおける地球外生物の触手に今まさになぶられているようでもあり、これまた戦後の日本文化を世界に向けて高く止揚する光景であります。媾合陛下、A国軍は壊走を始めましたぞ」
 「あの光は何で御座るか」
 「N州上空にキノコ雲の発生を確認」
 「これで君の国もようやくやっかいばらいができたというわけだ」
 「そしてあなたは次期大統領の座を手に入れる。すべてシナリオ通りというわけですな」
 「ふふふ。それでは我々の新しい関係に乾杯しよう」
 「両国の輝かしい未来に」
 「乾杯」

小鳥猊下の日常

 「ぴたクールのCMでロリータがあげる『気持ちいい…』というあられもない嬌声を録音編集して実戦投入するそこのおまえ、一歩前へ出ろ。殴ってあげるから」
 「あっ。小鳥猊下が成人男性なら誰もが抱く当たり前の義憤にかられた様子で薄い両肩を無理に怒らせながらケンシロウのように両の拳をぼきぼき鳴らしつつ御出座なされたぞ」
 「なんてあからさまな童女趣味なのかしら。でも愛してる!」
 「スーパードールリカちゃんを何のオリジナリティもない企画アニメと鼻で笑うそこのおまえ、一歩前へ出ろ。殴ってあげるから」
 「で、小鳥猊下なんですけれども、今日は普通にありふれたかれの日常を彫刻してみたいと思います。なぜって、あのようにスリリングでアクロバテックでバイオレンスでエロスな日記ばかりを読まれると、たいそう神々しくもめでたい御姿をネットワーク上に卓越した文章にてメタファライズなされる小鳥猊下の実存とは、病室毎に鉄柵のついた入るは簡単出るは棺桶看護体制は最悪だけれども看護人の給料はべらぼうにいい類の特殊な病院に収容されている人間なのではないかと洞察力に欠ける知的にチャレンジされた一部の臣民たちに邪推されてしまうからで、それは私にとってとても心外だしとてもやりきれないからです。そんなことは全然ないです。当サイトが、両親ないし養育者との関係から発生した初源の不全による不安の神経発作を何か特殊な個性ででもあるかのように毎日の日記に記述し、あまつさえ同情を求める皮膚病の赤犬の図々しさで自らの病気に周囲を巻きこもうとし、日本人口の総体に対してほんのわずかの人間を巻きこむことに成功するという次元の低い金にならない達成で自分を得て、一時的な安心感に口の端からだらしなくよだれを垂らすようなよくあるパラノ・サイトとは全く次元を異にした成熟した大人のおっぴろげサイトであることはここにいらっしゃるみなさまが一番よくわかっておられるはずです。それでは当国の執性官をつとめる私めが、慎んで今日の猊下の御様子を公開させていただきます。
 「太陽も空の半ばを過ぎようというころ、小鳥猊下はようやく身体が二十センチも沈み込むような天蓋つきのベッドから気怠く御身体をお起こしになります。猊下の御尊顔は真に高貴な者がしばしばそうであるように紫色の靄に畏れおおく覆われており、下々の者にはその表情をうかがい知ることはできません。ビロオドのカーテン越しに射す柔らかな午後の日射しに目を細めながら、意識の覚醒するまでのあいだしばし猊下は御自らのかたちの良いなまめかしいピンク色の乳首をもてあそばれます。小鳥猊下は空調などという野暮で不健康なものは使いません。猊下に仕える黒人女が、今日は少々汗ばむ気温ですので、身の丈ほどもある大きな葉でもってゆっくりと緑の爽やかな匂いのする涼風を送ります。その一方で別の黒人女がオリイブ油を手づから小鳥猊下の抜けるような白い肌に塗りつけます。それは芸術に理解のある者が見たならば『アイボリーとエボニー』と名付けたくなるような見事な一枚の絵画を思わせる有様です。小鳥猊下のきめ細かい肌の官能的な手触りはすべての婦女子をたちまち降参させてしまうほどです。今日も何を血迷ったのか、油を塗る役目の黒人女が頬を紅潮させながら舌を前につきだしつつ猊下のブリーフを脱がしにかかりました。その際にちょっと見えた先端もやはり真に高貴な者がしばしばそうであるように紫色の靄に畏れおおく覆われており、下々の者にはその朝立ちっぷりをうかがい知ることはできません。機嫌のよい朝はさせておく場合もあるのですが、今日の猊下はどうやら虫のいどころが悪かったようです。そのローマ闘士もかくやと思わせるような見事に筋肉の発達した右足を振り上げると、破廉恥女のみぞおちから横隔膜、背骨へと文字通り突き抜けるような足先蹴りをお見舞いしました。口から動脈が破れたことを証明するような真っ赤な鮮血を吹き出しながら破廉恥女は床を転げ回りましたが、その頃には小鳥猊下の高貴な頭脳には彼女のことは微塵も残されていませんでした。小鳥猊下の憂いにけぶる瞳は――当然猊下の御尊顔は真に高貴な者がしばしばそうであるように紫色の靄に畏れおおく覆われており、下々の者にはその表情をうかがい知ることはできませんのでこの表現は修辞的想像に過ぎませんが、それはきっとこの世界に存在する最高の芸術家の夢想する究極の美をもしのぐ麗しさでございましょう――すでに今夜の乙女にする性の妙技の夢想へと向けられていたのです。我が宗教国家において初夜権は猊下の上にあり、そしてそれが猊下の行う唯一の国務なのです。

D.J. FOOD(3)

 「 Jam, Jam! MX7! 今週もまたD.J. FOODの”KAWL 4 U”の時間がやってきたぜ! それではいつものように始めよう、Uhhhhhhhhhhhh, Check it out!
 まァ、今では安孫子素雄がよくゴルフ漫画でやり今もやっているような、ボールが発射される際に高々と鳴り響く『ドピュ』という擬音に電車内でのけぞり、「先に球形のひっかかりのついた棒! 玉! ドピュ! おお、少年誌でなんという犯罪的な! おまえは青少年性犯罪の悪魔的扇動者か!」と叫んで人々の顰蹙を買うこともしばしばの俺の実存だったんだけど、今では充分に枯れた地方局の一D.J.という立場でもって近所の女子小学生にそれの表記されているページを見せながら「でも実際こんな音しないよね」とたずね、彼女らが早く逃れたいものだからしょうがなくうなずくところに「ふぅん。なら桜ちゃんは聞いたことがあるんだね、実際に。今そういう意味のことを言ったよね? ああ?」と畳みかけ合わせた狂信的な目をしつこくそらさずに難詰する、ふつうの成人した職を持たないHPは持っている大人がしばしばやる程度のことをお父様方の日々の晩酌のようにつつましやかにやるだけなんです。そしてあの頃は血気盛んなものでしたから、初登場の頃はただのへたれキャラだったのにストーリーが進むにつれ次第に渋い脇キャラとしての重要性を持ち始め、その自前のサザエさんのような髪型で声が潰れるまで仲間を応援したり、仲間を戦場に送り込むための肉の橋になったり、それらの事実で男色的な意味合いを読者少女層に感じさせて絶大な人気を博したり、そして感動させんがための物語のご都合主義的必然でついうっかり死んでみたり、すぐに復活して読者少女層の支持を失ったり、最後のほうにはやたら影が薄くなってみたり、そんな日々の暮らしでした。AVビデオをこそこそ借りるくらいには姑息でしたし、だからといって性犯罪を犯さない程度には生活に充足していました。そんな青春でした。あの頃の友人は今では総理大臣やってます。わからぬもんですよ。さぁて、いつもの犬のようなおしゃべりはこれくらいにして最初のお便りは…これは書いてないな、住所不明のあしたのジョーウィルくんから! 『ミサイルかっこいいよ、ミサイル! チンポみたいで! ムカついたら全部ブッこわしてくれるしさぁ! ゴジラかっこいいよ、ゴジラ! チンポみたいで! ムカついたら全部ブッこわしてくれるしさぁ! 最近あんた調子のってるよ!』YoYoYoYoYoYoYoYo, Yo Men!  や、やんのかコラァ! 次のお便りは仙台にお住まいの北へちゃんからだ! 『最近外につもる私の性的な純潔さをひそかに暗喩するところのまっしろな雪を見てると思うんです。この白を、たとえば泥やそれに類する汚れのたっぷりとついたゴム長靴で(それぞれがいったい本当は何を意味しているのかは言いませんよ)ぐちゃぐちゃになるまで汚すことができたらどんなに胸がすくだろうって思うんです。FOODさん・・・』YoYoYoYoYoYoYoYo, Yo Men! 斉藤くん、宮城行きの新幹線の切符大至急入手して! 最後の一枚は大阪府在住の小鳥くんからだ! 『こんばんは、D.J. FOODさん。何度も迷ったんですけど、重大な告白をするためにペンを取りました。ぼくはじつはオナニーをする際しばしば尿道に異物を挿入し、両手をつかわずに自力でそれをひり出すことで快楽を得るんですが』YoYoYoYoYoYoYoYo,Yo Men! くたばってしまえ!
 おっと、もうこんな時間だ! みんなからのお便り待ってるぜ! それじゃ、来週のこの時間まで、C U Next Week!」 

少女地獄

 「こんにちは」
 「ああっ。私の、幻想の、ロリィタァァァ!」
 「貴方は小鳥くんのホームページを金も払わず切り取り強盗の図々しさでさんざんっぱらねめまわした後『何なんですか、あのHPは。二度と行きません』という内容のメールをわざわざ送信したわよね。それを知ったときの小鳥くんの、自分の性病を医者に知らされたときのような、悲しげな愁いをふくんだ表情は今でも私の幼い胸を痛ませるの。あのときの小鳥くんの悲しみをすすぐことができるのなら、この世界に存在するその努力は無しにただ愛されたいといやらしく舌を突き出してみせる皮膚病の赤犬のような有象無象ども何人のただ環境破壊に貢献するだけの無駄で無価値な生とひきかえにしてもいいと私はこころから思うの」
 「なんて愛らしい。なんてすばらしい石鹸の匂いのするすべすべした肌なのかしら。そして無垢な少女性を存分に引き立てる上等の洋服。私が望んで望んで望み続けて手に入れられなかったものたちよ。両親は子供時代の私の実存に無上の愛撫ではなく殴打でもって応えたわ。もし私があなたのようだったら、私はどんなに愛されたことだろう。ちくしょう、ちくしょう」
 「というわけで、お楽しみ中のところ失礼ですけど、これからあなたを殺しちゃいます。えへ。ごめんね」
 「ぶすり」
 「ぎゃあっ」
 「きゃはっ。ゲットぉ。水枕に使う分厚いゴム袋を差し貫くときのようなちょっと抵抗のある感触。長年刃物に親しんできた私だからわかるの。心臓ゲットぉ。死んじゃえ、死んじゃえ~。誰にも見返られることなく、一人太りすぎて自力では動けなくなったトドのように死んじゃえ~」
 「ごぼ。私だって、本当は、こんなふうな、誰からもかえりみられない、醜い、私でありたかったわけじゃ、ないのに。私は、いつも、いつも、次の朝目覚めたら、違う私にと、願いつづけて、惨めな一人の眠りを、眠ってきたのに。ごぼ」
 「ぶすり」
 「ぎゃあっ」
 「きゃはっ。ゲットぉ。想像よりはるかに固い薄膜を突き破る抵抗に続いてぷちぷちとひも状の何かをひきちぎる感触。長年刃物に親しんできた私だからわかるの。眼球ゲットぉ。死んじゃえ、死んじゃえ~。巷間にあふれる平等な意味のある生という無数の例証が近代社会を表面上成立させるための幻想に過ぎないことや、容姿などの個体差により生まれながら分けられた人生の明暗の真の不平等さや、自分自身の惨めでこの上なくリアルなスケールを死ぬ瞬間にはじめて実感しながら一人太りすぎて自力では動けなくなったトドのように死んじゃえ~」
 「待って、おいていかないで、私のロリィタ、私が本当はそうあらねばならなかった、そうあるべきだった私のすがた…」
 「おもしろぉい。あふれる血に残された視界をふさがれ、両手を前向きにさしのべる格好で電柱を抱きかかえるように自分から思いきり激突して重力方向にブッ倒れたわ。歯を剥きだしてシンバルをたたきながら前進する猿の人形みたぁい。きゃっきゃっ。もっともっとぉ」
 「ごぼ…やだ…こんな…おとう…さん…」
 「こら。探したんだぞ。今までどこ行ってたんだ」
 「あっ、パパ。あのね、小鳥くんをいじめる悪いおとなのひとを殺していたの。今日は十五人も刺殺しちゃった」
 「そうか。さぞ猊下もお喜びになるだろう。いいことをしたな、江里香」
 「えへへ」
 「今日の夕食はスパゲティだってママが言ってたぞ」
 「やったぁ。あたし、スパゲティだぁい好き!」