猫を起こさないように
媾合陛下
媾合陛下

媾合陛下

  こう-ごう【媾合】性交。交接。交合。(広辞苑第四版)
 私の名前は媾合陛下。マスコミに作られたイメージ通り、毒にも薬にもならない頭の弱い知的にチャレンジされている人の笑顔を臣民に向ける毎日。それにしても、今日の私はどうしたのかしら。遅れたメンスのせいか、とっても気分がアンニュイ。
 「どうなされました媾合陛下」
 「疲れたわ。こんなのは本当の私じゃないもの」
 「しかし、それが陛下のお仕事でございます」
 「ねえ、あなた何故私が媾合陛下と呼ばれているか知ってる?」
 「いえ、お恥ずかしいことですが、存じ上げておりません」
 「それはね……しゃッ」
 「ああっ、たいへんだ。媾合陛下がバルコニーから二十メートルも跳び上がり、堀をひとまたぎに樹齢千年の樫から削りだした厚さ50センチの大門にディズニーのような人型の穴をあけ、外に立つ屈強なガードマンをものともせずなぎ倒して出ていかれたぞ」
 「いかん! 追え、追うのだ」

 「うふふ、久しぶりの娑婆の空気。あら、いい男。こんにちは」
 「あっ。媾合陛下だ」
 「私を知っているのね。ならなぜ私が媾合陛下って呼ばれてるかは、知ってるかしら」
 「ぞぞぞ、存じ上げておりません」
 「緊張しちゃって。 可愛いわね。いいわ、教えてあげる。それはね……しゃッ」

 「はぁ、はぁ。いました! いや、おら れました!」
 「ああっ、たいへんだ。すでに媾合陛下のおみ足が下郎の下半身をがっちりとホールドされているぞ」
 「しまった、遅かったか。(振り返り)諸君、残念だが、ああなってはもう手遅れだ」
 「おお、おお、この匂い、この感じ。久しく忘れていた女性自身の高ぶり。いいわぁ」
 「媾合陛下の御姿を御簾でお隠し申し上げるのだ。急げ急げ」
 「おお、おお、私のわがままなボディが若い精気で満たされていく」
 「ええい、散れ、下衆ども。近寄るでない。そのつまらぬ凡々たる日々の生活へと戻ってゆけ。あっ。こら、御簾を乗り越えるな」
 「そうよ、この瞬間の私が本当の私。見て、私が媾合陛下よ!」
 「ああっ、たいへん だ。媾合陛下が男を下半身にプラグインしたまま御簾を突き破って蜘蛛のように道路に飛び出し、向かい来る車をあたかもそれらが豆腐ででもあるかのように次々と破砕しながら、幹線道路を御殿場方面へ逃走なされたぞ」
 「見られたか。今ここにいる全員を射殺しろ。無条件発砲を許可する。そう、全員だ。一人たりとも生きて帰すな」
 「ぱんぱんぱん」
 「きゃああ、今生では私自身の血を分けた息子としての実存に押し込められているけれど、来世では光の王女としての私の夫なることが親神様によって定められ確定している偏差値72のみのるちゃんが、額の中央の漫画的な拳銃に撃たれた記号から血と脳漿を吹き出して重力方向へあおむけにブッ倒れたわ」
 「みんな見でえぇぇぇわだじよぉぉぉわたじが媾合陛下なのよぉぉぉぉ」