猫を起こさないように
小鳥猊下の日常
小鳥猊下の日常

小鳥猊下の日常

 「ぴたクールのCMでロリータがあげる『気持ちいい…』というあられもない嬌声を録音編集して実戦投入するそこのおまえ、一歩前へ出ろ。殴ってあげるから」
 「あっ。小鳥猊下が成人男性なら誰もが抱く当たり前の義憤にかられた様子で薄い両肩を無理に怒らせながらケンシロウのように両の拳をぼきぼき鳴らしつつ御出座なされたぞ」
 「なんてあからさまな童女趣味なのかしら。でも愛してる!」
 「スーパードールリカちゃんを何のオリジナリティもない企画アニメと鼻で笑うそこのおまえ、一歩前へ出ろ。殴ってあげるから」
 「で、小鳥猊下なんですけれども、今日は普通にありふれたかれの日常を彫刻してみたいと思います。なぜって、あのようにスリリングでアクロバテックでバイオレンスでエロスな日記ばかりを読まれると、たいそう神々しくもめでたい御姿をネットワーク上に卓越した文章にてメタファライズなされる小鳥猊下の実存とは、病室毎に鉄柵のついた入るは簡単出るは棺桶看護体制は最悪だけれども看護人の給料はべらぼうにいい類の特殊な病院に収容されている人間なのではないかと洞察力に欠ける知的にチャレンジされた一部の臣民たちに邪推されてしまうからで、それは私にとってとても心外だしとてもやりきれないからです。そんなことは全然ないです。当サイトが、両親ないし養育者との関係から発生した初源の不全による不安の神経発作を何か特殊な個性ででもあるかのように毎日の日記に記述し、あまつさえ同情を求める皮膚病の赤犬の図々しさで自らの病気に周囲を巻きこもうとし、日本人口の総体に対してほんのわずかの人間を巻きこむことに成功するという次元の低い金にならない達成で自分を得て、一時的な安心感に口の端からだらしなくよだれを垂らすようなよくあるパラノ・サイトとは全く次元を異にした成熟した大人のおっぴろげサイトであることはここにいらっしゃるみなさまが一番よくわかっておられるはずです。それでは当国の執性官をつとめる私めが、慎んで今日の猊下の御様子を公開させていただきます。
 「太陽も空の半ばを過ぎようというころ、小鳥猊下はようやく身体が二十センチも沈み込むような天蓋つきのベッドから気怠く御身体をお起こしになります。猊下の御尊顔は真に高貴な者がしばしばそうであるように紫色の靄に畏れおおく覆われており、下々の者にはその表情をうかがい知ることはできません。ビロオドのカーテン越しに射す柔らかな午後の日射しに目を細めながら、意識の覚醒するまでのあいだしばし猊下は御自らのかたちの良いなまめかしいピンク色の乳首をもてあそばれます。小鳥猊下は空調などという野暮で不健康なものは使いません。猊下に仕える黒人女が、今日は少々汗ばむ気温ですので、身の丈ほどもある大きな葉でもってゆっくりと緑の爽やかな匂いのする涼風を送ります。その一方で別の黒人女がオリイブ油を手づから小鳥猊下の抜けるような白い肌に塗りつけます。それは芸術に理解のある者が見たならば『アイボリーとエボニー』と名付けたくなるような見事な一枚の絵画を思わせる有様です。小鳥猊下のきめ細かい肌の官能的な手触りはすべての婦女子をたちまち降参させてしまうほどです。今日も何を血迷ったのか、油を塗る役目の黒人女が頬を紅潮させながら舌を前につきだしつつ猊下のブリーフを脱がしにかかりました。その際にちょっと見えた先端もやはり真に高貴な者がしばしばそうであるように紫色の靄に畏れおおく覆われており、下々の者にはその朝立ちっぷりをうかがい知ることはできません。機嫌のよい朝はさせておく場合もあるのですが、今日の猊下はどうやら虫のいどころが悪かったようです。そのローマ闘士もかくやと思わせるような見事に筋肉の発達した右足を振り上げると、破廉恥女のみぞおちから横隔膜、背骨へと文字通り突き抜けるような足先蹴りをお見舞いしました。口から動脈が破れたことを証明するような真っ赤な鮮血を吹き出しながら破廉恥女は床を転げ回りましたが、その頃には小鳥猊下の高貴な頭脳には彼女のことは微塵も残されていませんでした。小鳥猊下の憂いにけぶる瞳は――当然猊下の御尊顔は真に高貴な者がしばしばそうであるように紫色の靄に畏れおおく覆われており、下々の者にはその表情をうかがい知ることはできませんのでこの表現は修辞的想像に過ぎませんが、それはきっとこの世界に存在する最高の芸術家の夢想する究極の美をもしのぐ麗しさでございましょう――すでに今夜の乙女にする性の妙技の夢想へと向けられていたのです。我が宗教国家において初夜権は猊下の上にあり、そしてそれが猊下の行う唯一の国務なのです。