猫を起こさないように
インターステラ―
インターステラ―

インターステラ―


インターステラ―


理論物理学の重鎮を科学考証に迎えた本作の実相は、SFというよりむしろコミュニケーションを主題に据えたファンタジーである。我々の意思疎通は、頼みにならない郵便屋が届ける、番地まで宛名の書かれていない手紙のようなものだ。いつ届くかわからないし、届いても開封されたかどうかわからない。その曖昧さは、親から子へ渡されるときの言葉の性質にもっともよく表れる。差出人はいつか開封されることを願って投函し、手紙が読まれたかどうかは受取人だけが知っている。そしてこの性質はまた、「いまここにいないもの」という意味での死者と対話を可能にしており、テロ後の、震災後の世界における我々のコミュニケーションの本質を喝破しているのだ。とは言いながら、インセプションやダークナイト・ライジングを自信満々で世に送り出してしまうノーラン監督だから、娘萌えが昂じた結果、偶然そういうメッセージ性を孕んでしまった可能性も否定はできない。そのすれ違いがあったとしてさえ、疑いのない傑作である。