猫を起こさないように
野望の王国
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 「さあ、いよいよ残り時間も2分を切りました。オールアメリカ大学選抜対東大のせんずり試合も14対14の同点! 東大の攻撃は直腸前立腺まで残り10cmといったところ。三年前までひ弱なボウヤだった東大せんずりチームが突然強くなり、関東大学せんずりリーグで優勝し、今またこうしてオールアメリカ大学選抜チームと互角にせんずれるのも……」
 「クォーターバットの片丘君と、アヌスマンの立花君の、二人の力によるものです!!」
 「さぁ、左手にボールを握り込んだ片丘の直腸に、立花がじりっじりっとものさしの挿入を続けます。ここは慎重にいかなければいけませんね、佐上原さん」
 「ええ、男性本能の一時的達成が近いからといってここであわててはいけませんよ」
 「オールアメリカ、胸の筋肉を小刻みに動かし、そり残しの脇毛をちらつかせ、必死のディフェンスを試みます」
 「ここらへんのやり方はさすがですね。凡百のチームだったらこのまま男性本能の一時的達成へかけあがらせてしまうところです。私たちの頃のアメリカチームと言えば、すさまじい肉食のパワーだけで押し切ってしまう、裏返せば守りの弱いチームだったんですが…」
 「片丘、その攻撃を目線だけで巧みにかわします。直腸前立腺まで残り7cm」
 「こういったテクニカルな部分ではやはり日本に一日の長があります。相手の執拗なディフェンスをかわすために並の選手はつい顔ごとそむけてしまいがちなんですが、それだとディフェンス側に次の防御のためのいらぬ情報を与えてしまう」
 「なるほど。片丘の角度が次第に上昇してきました。業を煮やしたオールアメリカはついに威信をかけて下半身の露出を開始しました。しかしこれは下手すると反則をとられて、東大チームの勝利を一気に確定させてしまう恐れがありますが、佐上原さん?」
 「残り時間が一分を切っていますからね。彼らも必死です。私があそこで、いや、あそこに立っていてもそうするでしょう。しかし、(ハンカチで額の汗をぬぐいながら)なんて緊迫感だ。私はここ十年でオールアメリカにブリーフまで脱がせたチームというのは知りませんよ」
 「残り時間は30秒を切りました。立花、ものさしを握る手を入れ替えてにじむ汗をぬぐいます。ああっ。オールアメリカ、バットを上下に揺さぶり下腹部に打ち当てることでパチパチと音を鳴らし始めました。こ、これはどういう…」
 「(蒼白な顔面で)恐ろしい…なんていうディフェンスだ。視覚的ディフェンスならば顔の角度や目線でまだ逃げようがある…だが、今オールアメリカがやっているような聴覚的ディフェンスは右手にバットを、左手にボールを握り両手のふさがっているオフェンス側には回避する手段がまったく存在しない。思い出しました。これは二十年前オッペンハイマー博士が提唱した戦法だ。その当時世界でだれも実践に移せる者はいなかったという話です。こんな教科書にしか見れないような高度なテクニックを身につけているだなんて、今年のオールアメリカは米せんずり史上最強だと言っても過言ではありませんよ」
 「ええ、ええ。しかし、そのオールアメリカと互角に渡りあっている東大チームも間違いなく日本せんずり史上最強を冠するに値すると言えるでしょう」
 「その通りです」
 「片丘、苦しそうだ。片丘の恋女房立花が片丘のひきしまった尻えくぼを撫でまわして勇気づけます。直腸前立腺まで残り3cm」
 「立花も辛いでしょう。せんずりは本当に孤独な作業ですから。誰かが手を貸してやることはできない、誰も助けてやれないんです。そしてその孤独を超克した人間こそが真のせんずり行者と言えるのです」
 「(涙ぐんだ声で)なんという感動的な光景でありましょう。忌まれ、さげすまするせんずりがなんという高い精神性をもってここ国立競技場のグラウンドに展開されていることか。この光景は現在地球をとりまく衛生網でもって世界中へリアルタイムに発信されています。観客は二重の意味で総立ちです」
 「わああっ、わああっ」「がんばれ、東大」「せんずり帝國日本の御名を今こそ取り戻すんだ」
 「お聞き下さい、この歓声。この試合はもはや一せんずりゲームという枠を越えて、戦後日本の歩んできた道の可否を象徴する高みにまで登りつめているのです!!」
 「ぎらり」「ぎらり」
 「歓声にオールアメリカのするディフェンス音が一瞬かき消された隙をぬって、立花一気に突き上げた~っ!!」
 「ああっ。あれは実戦せんずりの創始者・御古神慰兵衛が極めたと言われる直腸蠕動感知挿入式…!! まさか、一大学生に過ぎない立花君があの技を……!!」
 「片丘の鍛え上げられた腹の筋肉が収縮する!! ほとばしる欲望!! 達成です、男性本能の一時的達成の達成です!!」
 「ピピィ~ッ」
 「試合終了! 丁度このとき試合終了です! 14対15、東大みごとに全米大学せんずりチームに勝ちました! 日本せんずり界初の壮挙をなしとげました!」
 「(泣きながら)すばらしい、すばらしい。私はこの試合に解説者として立ち会えたことを神に感謝したい」
 「立花と片丘、この二人のすごい男は万年ドン尻の東大せんずりチームをついに世界のトップレベルに押し上げたのです!! そしてこれは同時にせんずり帝國日本の歴史的な勝利でもあります!!」
 「わああっ、わああっ」