猫を起こさないように
日: <span>2026年7月13日</span>
日: 2026年7月13日

ゲーム「原神・Luna8」感想

 原神、ナド・クライ編の最終アップデートであるルナエイトをクリア。月面のマップがドカンと追加され、フィールド探索とストーリー進行が一体となったプレイ体験に、フォンテーヌまでにあった原神の楽しさをひさしぶりに思いだしました。重力ギミックと月面基地、そして機械じかけの「傀儡」の実装とくると、どこかプラグマタとのシンクロニシティを感じさせます。さらに野暮なツッコミをするならば、宇宙に向けてメッセージを送信することの危険性を説くくだりは、まんま三体の「暗黒森林」をなぞっていて、なんだか笑ってしまいました。原神そのものが自身の終わりを意識していることを、すべての語りにおいてほのめかしていきますが、「偽りの天穹」の向こう側になにを置こうとしているのか、まったく不安がないと言えば、ウソになるでしょう。なんとなれば、アチーブメントのひとつに”Love is destructive.”をしこんでくるような、「第三降臨者」といったサード・チルドレンを彷彿とさせるワードをシレッと使ってくるような連中ですから、天穹がガラスのようにヒビ割れてくだけ散った先に、パイモンのコスプレをしたプログラマーと制作スタジオの実写を映すのではないかというメタ的な恐怖を、どうにも捨てきれないためです。大半の人は知らないか、すでに忘れているでしょうけれど、円盤のみに収録されている旧エヴァ劇場版をテレビフォーマットに落としこんだ第26話の次回予告は、ガイナックス社内に敷設された線路の上を走る列車の視点から撮影された実写であり、熱烈かつ盲信的なエヴァ・フォロワーであるホヨバ幹部たちが、ぜったいにこれをオマージュ元にはしないという自信はありません。

 また、今回の更新分で出色だったのは、サンドローネの生いたちにまつわる挿話でした。簡単にまとめてしまえば、フランケンシュタインを始祖とする被造物の葛藤なわけですが、オリジナルが「愛さないなら、なぜ生んだ」という嘆きの慟哭であるのに対して、こちらは「愛してくれて、ありがとう」という誕生への讃歌になっている。本来ならば、「永遠の繁栄を約束するものは、家族である」という中共プロパガンダの臭気がただよいそうなところなのに、制作側が強く意識している「原神という破格の旅の終わり」がシナリオ全体にオーバーラップしていて、強い感動へと昇華させることができています。サンドローネの喪失に満ちた人生を通じた「やがてすべて失われるものに、愛をそそぐ意味はあるのだろうか?」という問いに対して、「やがてすべて失われるとしても、いだいた感情や記憶はずっと残っていく」といらえをかえすのは、原神の終焉へと向けられたメッセージでありながら、死という終わりを持つ我々の人生へ敷衍される普遍的な回答にもなっている。さらに、論理と感情の初期的な乖離というテーマは、多くのおたくたちがかかえる問題であり、泣いている小さな自分を高い位置からながめながら、「馬鹿だな、泣けばまた、ひどくなぐられるのに」と冷めた考えでおのれの弱さを突きはなすのは、我々の過ごしてきた人生の実相に近いのではないでしょうか。ゆえに、サンドローネの論理が鏡うつしの感情を抱きしめるさまに自身の来し方を投影して、ひどく心をゆさぶられてしまうのです。

 正直なところ、ゴミの集積場である「星々の幻境」が体現するところの、中華街のごとき”生き汚なさ”には辟易しており、かなり気持ちは離れていたのですが、今回のバージョンアップでしばらくぶりに、物心両面における原神の美点を再確認することができました。もちろん、生粋の萌えコションである小鳥猊下は、たちまちサンドローネを2凸し、モチーフ武器もキチンとそろえ、レベルマとスキルマをすでに達成済みであることを、みなさまにお伝えしておきます。あと、サンドローネとコロンビーナの関係性は、機械人形と月の神という出自ゆえに、生殖と美の喪失を考慮する必要がなく、直近に語った「百合という現象」に対する、変則的かつ条件つきの正答になっているような気がしました。