猫を起こさないように
日: <span>2020年12月27日</span>
日: 2020年12月27日

アニメ「シン・エヴァンゲリオン劇場版・本予告」感想

質問:シンエヴァの本予告、出ましたね。試写会を見た人の評価もすこぶるいいみたいですし、これは期待できるのでは?

回答:うーん、試写会の感想っていっても、関係者のでしょ? Qのときも公開前に原画マンだったかのひとりが、「我々はとんでもない怪物を作りだしてしまった」とか興奮ぎみにツイートしてたの覚えてんだけど、フタを開けたら中身はあんな感じだったじゃない? 作る側は創造の熱狂で作品への客観性なんか吹きとぶものだし、アニメーターの方々の評価は、全体のバランスというより切片へのフェティシズムーー「今の動きすごいな!」「この構図キマッてるね!」ーーにあふれているので、一般的な評価者としてはまったく信用できません。私とエヴァの関係はさんざん語ってきましたけど、熱烈な恋愛でゴールインしたはずの夫がDVモラハラ野郎だったと判明し、長い苦難の結婚生活の果て、別れ話を切り出したら、もう暴力はふるわない、真人間になって定期的に家へカネも入れる、なんて泣きながら言われて縁を切れず、どこか信用しきれないまま、いつまたなぐられるかビクビクしている幼妻と同じなのです。

 つらつらと本予告を見た感想など述べると、ぶんだー(笑)とピンクタラコとコネメガネがいくら出てきても鬱の底みたいに気持ちは動きませんが、無重力空間でアスカの下半身を執拗に映し続けるのにはEDなのにチンピクでしたし、シンジさんが初号機のコクピットに座っているのには目頭が熱くなりました。第三新東京市を背景にした、旧劇の量産機とのバトルとは大違いの、ヌルヌルと重量感の無いCGぽい殺陣がわざとだとすると、冒頭10分の映像でも画面外から繰演線が見えてるみたいな指摘もあったし、ストーリーにVR的な要素も入ってくるのかしらん。でもね、もし13号機(たぶんカヲル君が乗ってる)がラスボスなのだとしたら、本当にガッカリですよ。エヴァって、理由もわからず我々を滅ぼしにやってくる、ディスコミュニケーションの象徴としての、天使の名を持つ正体不明の使徒に、どう人類が抗うかという巨大なスケールの話だったのに、前も言いましたけど空前絶後の大駄作であるQ以降、浅間山荘の内ゲバの話へと卑小化されちゃってるんですよ。エヴァの魅力をエヴァの創始者が理解していない、あるいは我々が小出しの情報から二十六年もカン違いをしていたのだとしたら、これほど不幸なすれちがいはないでしょう。予告の最後の「さようなら、すべてのエヴァンゲリオン」ていうシンジさんのつぶやきにしても、旧劇の「さよなら、かあさん」に引っかけてんでしょうけど、エヴァンゲリオンって単語が機体を指してんのか、なんかの概念を指してんのか、作品そのものをメタく意味してんのか、まず「ボクの考えたカッコいい台詞」ありきみたいな感じに響いて、物語からは浮いちゃってる気がするなー。

 あと、十年くらい前にルーブル行って、ほぼ貸切の状態で館内を見学して、モナリザの防護ガラスにキチガイがティーカップを投げつけてついた傷も間近で見た私だから言うんですけど、テーマソングの歌詞、なんかダサくないですか? それと、もし本作が並行宇宙の結論に落ちるのだとしたら私がもっとも見たいのは、2011年に震災が起こらず、2014年か2015年に破の続きとして新エヴァが終わる世界線です(もちろんエンディングは、beautiful worldのアカペラ・バージョン)。予感ですけど今回のシンエヴァは、話の緻密さは脇に置いて、若干の謎の整合性は投げうって、スターウォーズ9みたく大団円のための大団円をやる気がします。そして公開が終わったら、エヴァ界隈はシークエル後のスターウォーズみたいな状況になるのではないでしょうか。全体としては冷めてるけど、マンダンロリアンとか「わかってる」スピンオフが局所的に傷を癒やしてくれるみたいな。読んだことないですけど、ANIMAのTVアニメ化とかね。残りの1ヶ月は一縷の希望ーーシンエヴァにまつわるこれまでの映像情報すべてがフェイクで、純然たる破の続編としてのエヴァ急が上映され、騒然となる会場でひとり莞爾として笑うーーにすがりながら、下を向いて過ごしたいと思います(静かにうつむく)。え、冬にたたずむ謎の子どもキャラ、だれなんでしょうねって? (ゆっくり顔を上げて)前にも言いましたけど、トウジと委員長の子どもなんじゃないですかね。ちょっと父親の面影があって、鼻ッぱしらの強そうなとこ、萌えますよね……。

 「(ハンドポケットの銀髪が遠目で)キボウ……これがリリンの言う、希望ですか」

追悼「シン・エヴァンゲリオン劇場版:呪」