猫を起こさないように
月: <span>2020年9月</span>
月: 2020年9月

ドラマ「半沢直樹2」感想

 え、だってそうでしょう? 組織名と役職名を明らかにしながら上長の許可も得ないまま業務内容に関する個人の感想を衆人環視の便所壁に書きちらすんですから! もし「ぼくたち、すごくがんばりました!」なんて言いながら納品してくる下請け業者がいれば、その場は笑顔で慇懃に対応しながら次回の契約更新は見送りますね! リーサラ・ウェポンであるッ!

 遅ればせながら、話題のハーフ澤NAOKIをチラ見しておるが、みんな大好き水戸黄門フォーマットーーあちらは開始45分で印籠、こちらは開始45分で土下座ーーを踏襲した銀行歌舞伎がたいへん楽しい(家人はスッと立っていなくなるので、下品な面白さなのだろう)。感心したのはテンポの速さで、最初はまちがって総集編を再生したかと思ったぐらいである。昭和のドラマ(スクール・ウォーズ)で育った身にとっては、10話で終わりなんていうのはほとんど打ち切り(スクール・ウォーズ2)みたいな短さだ。しかしながら、ネット動画のテンポに慣らされた客層を引き戻そうとする工夫と努力には違いなく、そのネットに愛され助けられながら週刊誌フォーマットを脱却できず馬脚をあらわしたマッソー男の態度とは好対照をなしていると言えよう。そして過剰な演技と感情を抜いてみれば、あらためて我が身をふりかえっての日々の仕事の無意味さに気づかされた。世の中の文系仕事はこのドラマのようにマイナスをゼロへ戻すだけの作業に満ちあふれている。現実はもっと淡々としており、面罵も土下座もないままに人が殺されていく。さらに組織内で死んで亡霊になっていることに、当の本人さえ気づいていない場合も多い。社内調整や人間関係のバランス取りに汲々とするばかりで、多くの時間を費やしながら何のプラスも達成できない。これこそが政治を含めた本邦における文系仕事の正体であり、高度に編まれているがゆえに局所的で普遍性を持てないブルシット・ジョブの塊である。

 質問:猊下はトゥー↑、トゥー↑、フォー↓(ハリソンフォードの真似で)・バケーションなのかな。

 回答:いえ、ノー・バケーションでした。謎の定額制サービス「働かせホーダイ!」が適用されていますので。

映画「ミッドサマー」感想

 みんぞくがくにくわしいかしこいせいようじんのぼくがかんがえたさいきょうのいんしゅうときさい、あるいは前置きの長すぎる北欧ポルノ。キリスト教による強固な枠組みを、まったく異なる文化の価値観で揺さぶって怖がらせる、ホステル系の映画と思って大いに期待して視聴を開始しました。まず言いたいのは、緊張感の持続で恐怖を高めるホラーというジャンルに、147分の上映時間は長すぎます(聞けばディレクターズカット版はさらに30分ほど長いようで、余計なシーンや余計な長回しまみれの本編へ、さらに追加する要素があることに驚く)。最初のうちは、奈良コミューン在住なので法の埒外と理解不能性の話や、小鳥猊下という存在は正に異界の体現だ、みたいな話をしようと考えてたけど、開始1時間ぐらいでそんな気分はすっかり消え失せました。ホラーの怖さの本質って「理外にあること」だと思うんですが、本作はすべての場面が理に落ちていて、徹頭徹尾アタマ(西洋の)で作ってる感じがプンプンにおいます。そのくせ、72歳で姥捨てヘルダイブさせる共同体の大祭が90年周期だったり、ディテールたっぷりの儀式がどうやって世代を越えて継承(ヘレディタリー!)されているのか、劇中の情報だけではサッパリわかりません。ならば、そのディテールがよくてきているかと問われれば、「昨夜いたした美女が、翌朝見ると老婆でビックリ」みたいな古典のエピソードが示すように、太陽の光はあらゆるごまかしをまさに”白日の下に”さらす効果があるため、かなりポスプロで色を触ってるはずなのに、セットや小道具のテクスチャから漂ってくる作りごと感をごまかしきれていません。舞台設定にしても、昔なつかしい「人喰いクロンボ土人にさらわれる白人カップル」の逆を描くことでポリコレと新奇さを同時にクリアできると考えたのが着想の出発点ではないかと推測しますが、全体的にとても成功しているーー性交はしていましたがーーとは言えないでしょう。そうそう性交の話です! そもそも、あんな状況で男性のチンコは立ちません、それだけは確実に言えます。気の抜けた、男女の腰の動きがバラバラの(まるで挿入してないみたい!)おセッセ1回で手軽に着床できるなら、不妊治療なんてこの世に存在しないでしょう。閉じられたコミューン内での繁殖問題を真剣に扱うなら、もっと汗みずくの老若児童男女くんずほぐれつの大乱交をこそ描かなきゃダメじゃないですか! だれがだれの父親かわからないから、共同体のみんなが家族って呼びあえるんでしょ! 観客が本当に見たかったのは、大乱交・胎児を子宮からスマッシュ・アウト・ブラザーズ(ひぎぃ)でしょ! ホラ、次回作への素晴らしいアイデアの示唆にお礼は? ありあすたー(ありがとうございました)! あと、本作の白眉である「ババア介添え・だいしゅきホールド」でググッてもゼロ件でバズってる気配がないのは、直後の場面における白人男性のチンコの先端(亀頭)が赤すぎたことへの衝撃が原因ではないでしょうか。

雑文「スターウォーズ・シークエルとBLMについて」

 ジョン・ボイエガがBLMーーくわしくないが、ブラック・マジシャンかボーイズ・ラブ・マニアックの略称と思われるーーについて語っているインタビューを読んだ。スターウォーズ・シークエルにおける自分の扱いの悪さを人種問題の観点で批判しており、さすがに今回ばかりはデ銭を擁護する気分になった。

 「オイオイ、ボイエガちゃん、フィンがああなったのは主にライアン・ジョンソンのクソ野郎の天童よしみ推しが原因で、人種問題はぜんぜん関係ないだろ! それに人種以前の話で、役者としての雰囲気や立ち居振る舞いにサミュエル・L・ジャクソンほどの魅力が無かったのが、次代のメイス・ウィンドゥになれなかった主な理由だろ! 公衆の面前で情動失禁みたいなスピーチしてるヒマがあったら、まず俳優としての未熟さを自分自身の責任と認めて、演技力の研鑽にはげめよ! なんでもかんでもスキン・カラーのせいにするから、みんなだんだんめんどくさくなって、弱い差別から強い不快に変じた感情を心の底へ沈めて、表面上は無視や無関心を装うようになるんだろ!(突如たちあがって、声音を使って小芝居を始める)」

 「(気色ばんで)ええッ、日程を一日延長するだって? 会場費とか人件費とか、どうすんだよ。チケットの払い戻しも出るだろうし、運営スタッフのスケジュールだって押さえなおさなきゃならない。そもそもウチの翌日から別団体が予約いれてたはずだろ?」

 「いま会長が頭下げに回ってるよ。そっちの延長分も、ウチがぜんぶ払う方向で調整するらしい」

 「オイオイ、莫大な労力と費用じゃないか! もちろんアイツの事務所に請求書を送りつけるんだろうな?」

 「バカ言うな。そんなことしたら差別を容認する会社として、ヤツらの標的にされちまう。安くはないカネだが、ひかえめに賛意を表明することで社会的な評判も下げずにすむ。必要な広報費用と考えるんだ」

 「オレは納得いかねえよ。情緒不安定なガキの世迷言に、大の大人が右往左往させられてよ。てめえのコンディションが悪いから、状況を利用してこしゃくな時間かせぎをしてるだけなんじゃねえのか?」

 「かもしれん。だが、本当のところは本人にしかわからんさ。ともかく、いまヤツらはパワーを持ってる。ヤツらの正面に立たないようにすることが肝要だ。表面だけでいいから、逆らわず同調してると思わせるんだよ」

 「ファック、やりきれねえ! ヤツらがやってるのはただの不法行為じゃねえか! いつまで暴力におびえて、こんな理不尽の言いなりにならなきゃいけないんだよ!」

 「すぐさ。幸い、ヤツらを駆動しているのは感情で、強い感情は対象を必要とする受け身なエネルギーだ。大事なのは、それを燃やすフュエルを与えないことさ。くれぐれも本音をネットに書いたりするなよ。そうすれば、じきにガス欠になって鎮火する。いつものようにな」

 「わかったよ、オレも大人になるよ……賛意を表明するメッセージを発出して、サポートしているふりをすることが、ヤツらへの最大の仕返しってわけだな(狡猾な微笑み)」

 「(笑顔でサムズアップ)いいぞ、自分たちの行動で社会が変わったと錯覚させるんだ」

 『このような悪は、なくさなければなりません。私たちは、世界で長いあいだ望まれていた変化へ参画することを約束します。** **、あなたは私たちのヒーローです』

 ……ってなるだろ!(これ以前の文章をすべて名詞化する安易で愚劣な表現)

雑文「東のとしまえん、西の生駒山上遊園地」

 吐死魔怨?とやらがクローズしたようだが、平城宮跡在住の小生にとっては旧エヴァ第弐拾参話におけるアスカの心境であり、降下しながら「なによ、奈良ドリームランドのときは報道しなかったくせに」と、エル・シー・エルに満たされた場所ではありえない、演出としての落涙をいたしている次第である。

 ホワイト・ビーチの熟達による大熊ネコの長寿繁栄はガン無視され、アッパー・フィールドのクソ不手際による大熊ネコの死亡が大きく取り上げられるこんな不均衡の世の中じゃ、ポイズン!

 古都の夢の国はデ銭のボスを激怒させ、鬼畜米英からのガイアツで潰されてしまった。だが、としまえんとほぼ同時期、1929年に設立された生駒山上遊園地は未だに健在であり、遊具から食堂から、「昭和のコールドスリープ」としか形容できない仕上がりで、訪れるたびにタイムスリップの気分を味わえる。

 カントン在住の貴様らは、としまえんロスとやらを慰撫するため、「ちょっと東京へ行ってはる」エンペラーを拉致同道した上で本来の意味での帰京を敢行し、生駒ケーブルを利用するがよい(戦時中、帝国海軍が大阪湾の哨戒に用いた本邦最古の大型遊具・飛行塔から手を振りながら)。