猫を起こさないように
日: <span>1999年1月26日</span>
日: 1999年1月26日

媾合陛下

  こう-ごう【媾合】性交。交接。交合。(広辞苑第四版)
 私の名前は媾合陛下。今日は国を代表する大使としてA国大統領との夕食会に招かれているの。たくさんのVIPに囲まれて今日ばかりはさすがの私も少し緊張気味。
 「ああ、不安だわ。通訳はまだ到着しないの」
 「たった今お着きになりました」
 「押忍。遅参をお詫び致す。今日の通訳の御役、腹を切る覚悟で務めさせて頂く」
 「こちらがチョンガチョンガ連邦からいらっしゃった通訳のミハイロウィチ・ゲリチンスキー氏です」
 「ええと、あの。(小声で)ちょっと、大丈夫なの?」
 「ゲリチンスキー氏は日本語、英語、そしてチョンガチョンガ連邦の公用語であるハッチョレ語の三カ国語をよくするトリリンガルの英才でございます、媾合陛下」
 「ただいまご紹介に預かりましたゲリンチンスキーでございます。本日はお日柄もよく。以後お見知りおきをおひけえなすってござ候」
 「不安だわ」
 「ああ、大統領がいらっしゃったようです」
 「”Oh, Ms.INTERCOURSE! Nice to meet you!”」
 「ええと、あの、通訳」
 「御身の後ろに控えて候。大統領殿はただいまこのように申された。『おお、あなたとお目にかかることはナイスだ、媾合陛下』」
 「お招き頂いたのですからこちらからもご挨拶を」
 「え、あああああのあの。ここ、こんちこれまた大統領。よっ、にくいねこりゃ」
 「もう少し国家の代表としての威厳をお持ちになって下さい」
 「だって。外人なのよ。それも大統領っていったらすげえ外人じゃないの」
 「貴国の大統領殿に我ら媾合陛下の御意見をかしこみかしこみ奏上し申し上げる。”Hey, Mr. FUCKIN’ President. I absolutely hate you!”」
 「”…Huh? What is she saying now!? No, Shit!”」
 「ねえ、なんか怒ってるわよ」
 「媾合陛下、大統領殿はただいまこのように申された。『あぁん? 今そこのアマは何て言いやがった。うんこ嫌い』」
 「どうも何か気に障られたようですな。文化的差異というやつでしょうか。なんとか場を取りなして下さい、陛下」
 「わ、私が?」
 「あなたがいま我が国の代表です」
 「ええっと、ええっと。あの。了見の狭いことは無しにして今日は楽しくやりましょうね。って、いいかしら。よろしく頼むわよ、ゲリチンスキーさん」
 「かしこまった。貴国の大統領殿に我ら媾合陛下の御意見をかしこみかしこみ奏上し申し上げる。”I guess your ASSHOLE is too tight, Mr. President. Deeper, harder, I’m just CUMing!”」
 「ああっ、たいへんだ。何か我々には理解不能な理由に顔を真っ赤にした大統領が核発射と大きなフォントで書かれたリモコンを片手に大股に部屋を出て行かれるぞ。御国の危機だ。どうしようどうしよう」
 「ガタガタ騒ぐんじゃないよ。ピンチに肝がすわるのは性分ね。私も媾合陛下と呼ばれた女。見てなさい……しゃッ」
 「嗚呼なんたるちやサンタルチヤ南無八幡大菩薩、媾合陛下のおみ足がカニばさみの要領で今まさに部屋を出んとする大統領殿を二十センチも沈み込むような思想的な匂いのする赤の絨毯の上に押し倒し、その下半身をがっちりとホールドしたまま近代格闘における不落のマウントポジションに持ち込んだで御座るよ」
 「しまった。早ぅ広間の扉を閉めるのだ。一人も中に入れるな。一人も外に出してはいかん。残った人間は全員射殺しろ。そうだ、メイドも秘書官も、とにかく全員だ。一人たりとも生かしてこの部屋から出すな」
 「ぱんぱんぱん」
 「きゃああ。日本のメイドフェチに高く売ろうと思っていた、やっぱり全くの新品よりも多少は様々の体液が付着していたほうが喜ばれるのでここ二三日洗わずに着ているお仕着せが、私自身のみなに乳牛と形容される巨大な胸に突然うまれた漫画的な記号からの『おいおい、もう死んでるぜフツー』というくらいの大量の出血で汚れてしまい、もう売り物にならなくなってしまったわ。という内容のことを英語で実はしゃべっている英語圏の人間という私の実存だわ」
 「”!? Holyshit! It’s so good!! One thousand worms are living in her PUSSY!!!”」
 「媾合陛下、大統領は今このように申された。『聖なるうんこ。すげえ気持ちいい。彼女の子猫ちゃんはカズノコ天井だミミズ千匹だ』」
 「ああ、さすが外人、それも一国のトップともなるとモノの大きさが違うわね。これよ、この感じ。これが本当の私なのよ」
 「”God damned! This is too good to stand any more!!”」
 「ああ、わがままな私のボディが毛唐の精気で満たされていくわぁ」
 「媾合陛下、大統領殿は今このように申された。『神のうんこたれ。これはこれ以上耐えるにはあまりによすぎます』」
 「みんな見でえぇぇぇわだじよぉぉぉわだじが媾合陛下なのよぉぉぉ」
 「大丈夫か、聞こえているか、大統領殿。我ら媾合陛下の御意見を奏上し申し上げる。”Look at me! I’m Ms.INTERCOURSE!”。聞こえているか、大丈夫か、大統領殿」