「おら~しんのすけだど~」
「あら、進之介さま。どちらへ?」
「おら~しんのすけだど~」
「吉原って、なんですの?」
「ぞぉうさんぞぉうさん」
「あの。私は良くは知らないのですが、吉原ってそういうことをなさる場所でしょ?」
「ぞぉうさんぞぉうさん」
「よかった。菊乃は進之介さまがそんなことをなさる方ではないと信じていましたわ」
「おら~しんのすけだど~おら~しんのすけだど~」
「あの。もしお暇だったらでよろしいんですが、今日は菊乃におつきあい願えませんか?」
「おら~しんのすけだど~」
「よかった。断られたらどうしようかと思ってました」
「おら~しんのすけだど~」
「おら~しんのすけだど~おら~しんのすけだど~」
「くすっ。進之介さまったら冗談ばっかり」
「おら~しんのすけだど~」
「あら、雨。進之介さま、雨宿りして参りませんこと?」
「おら~しんのすけだど~」
「弱りましたわね。止みそうにありませんわ」
「おおおおら~しんのすけだど~」
「あっ。進之介さま何を。いけませんわ、こんなところで。いゃん」
「ぞぉうさんぞぉうさん」
「あら、ちっちゃくって可愛い」
「ぞぉうさんぞぉうさん」
「いけませんわいけませんわ。こんなふしだらな。ああ、ああ」
「おおおおら~しんのすけだど~」
「痛ッ。そこじゃございません進之介さま。もう一つ下ですわ」
「おおおおら~しんのすけだど~」
「痛ッ。進之介さま行き過ぎですわ。もう一つ上です」
「おおおおら~しんのすけだど~」
「ああ、そこですわ。進之介さま進之介さま」
「おおおおら~しんのすけだど~おおおおら~しんのすけだど~」
「ああ、進之介さま。菊乃は、菊乃は嬉しゅうございます」
「おおおおらおらおらおら~しんのすけです、いやもとい、しんのすけだど~しんのすけだど~」
「進之介さま…菊乃は、もう…」
「おおお、ごほっごほっ、しししんのすけです、しんのすけ。おおおおら~しんのすけです。すいません、しんのすけで。しんのすけししし」
「ああッ!…しんの…すけ…さま…」
「ふふ、しかし存外につまらぬものだな、菊乃」
と、最後に進之介さまが見事にカットアップされた琥珀色の蛇の肌のようにぬめる筋肉から、白い湯気とそり残しの脇毛をちらちらさせながら、小杉十郎太の声で言ったということです。