猫を起こさないように
ゲーム「エンドフィールド・潮起ち、故淵離る」感想
ゲーム「エンドフィールド・潮起ち、故淵離る」感想

ゲーム「エンドフィールド・潮起ち、故淵離る」感想

 エンドフィールド初の大型アップデートを更新分までクリア。正味のプレイタイムは5時間ほどで、ゆっくり会話や商談を楽しむためのコース料理へ饗された一品なのに、あまりのかつえからガツガツと手づかみで一瞬にたいらげてしまったことを、いまは頬を赤らめて恥じております。リリースから1ヶ月を経たいま、本作に感じている”不安点”をここに書きしるしておきましょう(”不満点”ではないことに、注意が必要です)。板垣恵介の絵柄で描かれた、勤続35年無遅刻・無欠勤系サラリーマンにとって、他のスマホゲーにくらべて重ためのデイリー消化を1日も欠かさないのはあたりまえの前提として、はたしてコツコツたくわえた素材が陳腐化しないかは、とても気になるところです。現在、キャラと武器のレベル限界突破素材は数百、帝江号の施設を強化する宇宙建材にいたっては数千の在庫があるのですが、これらを使いきる未来がまったく想像できません。今回のアップデートにおいて、アホみたいにあまる星4キャラの潜在強化アイテムに使い道が用意されたので、完全なる虚無的作業ではないーー軽快な操作感とともに、美少女キャラの臀部をながめ続けるのは、やはり楽しいーーと信じながら、どこか不安は残ります。

 また、前回の感想で申しのべた「評判のはずのストーリーがビックリするほどつまらない問題」は、今回の更新を通じてもまったく払拭されていません。中華ゲーお得意の”任侠”と”家族”をテーマにした場面の語りはさすがに心を動かされるーー捨て子であるタンタンが「大事に思ってねーなら、おくるみをリボンで飾ったりしねーよな?」みたいな、会ったこともない両親の心中を想像する独白には、ジワッと目じりに涙が浮かびましたーーのですが、ストーリー全体がキャラクターに固有の状況をあたえる目的でビルドアップされるため、動機と展開に納得感がありません(シンエヴァかよ!)。今回のメインストーリーを簡単にまとめますと、「城の輜重隊を襲撃した賊が返り討ちにあったのを何年も逆恨みしており、その復讐心に敵幹部のカヲル君がつけこんで、親族を殺された兄は悪のパワーを増幅させた」みたいな、情状酌量の余地すらない、ただの犯罪者の逆ギレなのです。おまけに、タンタンの眼帯は魔眼設定なんだろうなーと思っていたら、襲撃の晩にケガをしただけーーわざわざ争いの場に、幼な子を連れてくる意味がわからないーーだと判明します。にもかかわらず、ボス戦のムービーでは眼帯の外れた左眼が黄色いエフェクトで輝いたり、ライティング部門とゲーム制作部門の連携をうたがう、非常にチグハグした印象をあたえます。

 魔眼つながりで話を少し原神方向へ脱線させますが、両目を見ひらいたコロンビーナに「両腕をそなえたサモトラケのニケ」的な感想をいだいてしまったことを告白しておきます。つまり、人の想像力による確定しない無限の選択肢を、あるひとつの正解に押しこめられたような落胆と窮屈さを感じたのでした。話をエンドフィールドにもどしますと、「音楽が耳に残らない」という話をしましたが、今回のパートにおいて中国語の男声独唱で朗々と歌いあげる「いずみのうた」は、かなり悪めだちしているように感じました。ジャッキー・チェンでうぶ湯をつかった身に、香港映画の全盛期を彷彿とさせ、強い郷愁をさそった一方で、本邦の若いユーザーから、一種のギャグのように受けとめられないか心配になります(けっこうしつこく、何回も流れるので……)。このチョイスが正解だったのかは、のちの歴史に判断をゆだねるとして、リリース後の同時期に京劇の女性歌手を持ってきた原神の慎重な姿勢との差が、きわだつポイントだとは言えるでしょう。もしかすると、ゴリゴリの集成工業システムといい、逆張りで骨太の男っぽいセンをねらったのかもしれません。

 しかしながら、「ボーイッシュな見かけをした少女の中身が、じつは小学生男子のガキ大将」というタンタンの造詣は、リボンの騎士やラ・セーヌの星(古ッ!)につらなる由緒正しい”とりかへばや物語”になっているように思います。つどつどの表情から挙動まで、精緻にその内面を彫刻ーー他の中華ゲーと一線を画した本作の美点は、「唇の演技」にあると指摘しておきますーーすべく、ていねいに作られていて、特に帝江号での休憩中に片あぐらで座る彼女の様子には、おもに下半身へ電流が走りました。初のアップデートを通じて、エンドフィールドの正体は「金髪碧眼の超絶美少女なのに、中身は偏差値35の中国人」なのではないかという疑惑と不安は深まってきましたが、そんなことはタンタンとイヴォンヌのモデリングを前にすれば、ささいなことにすぎません。ここをアークナイツというコンテンツの終末地にしないため、みんなでプレイしよう、エンドフィールド!