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逃げ上手の若君
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ゲーム「エルデンリングDLC:シャドウ・オブ・ザ・エルドツリー」感想

 ゲーム「エルデンリング」感想

 エルデンリングDLC「シャドウ・オブ・ザ・エルドツリー」をようやくクリア。常のごとく、最初に水をBUKKAKEておきますと、2とは言わないまでも外伝などの位置づけで、アイテム持ちこみなしのレベル1から遊びたかったというのが、いつわらざるファースト・インプレッションでした。本DLCは、あらゆるレベル帯のプレイヤーを一堂に会させるためのバランス調整として、特定のアイテムを集めるほど、与ダメが上昇して被ダメが下がるという仕組みを導入しています。これはキャラクターレベルの影響を少なくし、フィールドの探索に意味を持たせる「冴えたやり方」だとは思うのですが、当該のアイテムに関する物語的な説明は薄く、各地の篝火で味気なくメニューから強化をするにとどまり、専用のモニュメントなども存在しないため、非常にゲーム的な調整だと感じさせてしまっている点は、神話的世界観をウリにするエルデンリングにとって、いささか雑な処理になっている気はしました。また、ジャンプでボスの範囲攻撃をかわすことを強制したり、しゃがみ状態でほんの一部の草むらをステルス移動させたり、ほぼ死んでいる「アイテム製作」コマンドのためにウィッカーマン?討伐用のツボを作らせたり、既存のアクションとギミックをなんとか流用してオープンワールドへ適応させようとする努力は伝わるのですが、デモンズソウルから15年と6作を経た現在、そろそろ完全新規のシステムによるダークファンタジーの制作を模索してもいい時期ではないかと思います。

 「ゲームは1日1(or2)時間!」を座右の銘とする社畜にとって、時間あたりの発見がプラトー状態となったあとは、例によって「ゲームは1日22時間!」な先人の攻略過程a.k.a.粘液トラックをなぞるだけの「瀕死の奴隷」と化してしまったものの、いっさいの情報を遮断した初見の探索は、キングズフィールド2より連綿と続く、これぞフロム・ソフトウェアといった破格の面白さで、ひさしぶりの充実したゲーム体験であったことを、ここまでさんざん腐しておきながら、本作の名誉のためにお伝えさせていただきます。特に、発売初週の日曜日にいどむこととなったレラーナ戦は、ボスたちが弱体化される前の「触られたら、即時蒸発」という地獄・鬼ゴッコ状態で、影の地への迂回路なんて知りもしないものですから、軽く数十戦のリトライを強いられることとなりました。本DLCでは、レラーナをはじめとして、体力ゲージが50%を切ると行動パターンの大きく変容するボスがおり、新たな動きを見極めて対応を習熟させたくとも、ゲージ半分への到達さえヒイヒイ言っているミドルエイジの反射神経では、賽の河原の石積みのほうがまだ進捗があるような状態に陥ってしまいます。人生に少年漫画的な覚醒が無いことを痛いほど知るマネジメント層は、協力プレイとは名ばかりの丸投げで、レラーナ打倒を下請けに外注しようと考えはじめるわけです。そうして、他世界のプレイヤーを召喚すべく、下卑た表情で鉤指を使った瞬間、かつての蓮コラのごとく床一面にビッシリと金文字が現れ、思わず「ヒッ」と殺される前の悪役じみた声がほとばしったのも、終わってしまえば楽しい思い出だと言えるでしょう。呼ぶ褪せ人、呼ぶ褪せ人、ほぼ全員と表現しても過言ではないほど、「左手に大盾、右手に長槍」というエルデンリング的には「誉れを捨てた」よそおいだったという事実をお伝えすれば、攻略情報の薄い時期にだけに訪れる、あの阿鼻叫喚の空気を感じていただけると確信しております。

 ファーストパッチ以前は、どのボスからの被ダメもあまりに大きすぎ、旧エヴァで例えるならば「ビームのタメ時間がゼロかつ動きの俊敏なラミエル」みたいな相手ばかりであり、「触られたら即死だが、盾の上からなら無傷」という一種異様な状況が、大盾マンを増殖させていったのだと分析できるでしょう。この重装備優勢の環境が、ゆるやかに「股間にシャブリリのブドウを2つ装備しただけの、レベル1短剣装備な”避け上手の若君(全裸)”」へ収束していくまでが、ソウルシリーズの変わらぬ伝統だと言えるかもしれません。動画配信でゲームを擬似体験する層にとっては、ローリングとパリィだけでボスを封殺する様子などを見ると、「なーんだ、エルデンリングって、簡単そうじゃん」などとナメた感想をいだくのかもしれませんが、じっさいにコクピットへ腰をすえ、操縦桿をにぎらされれば、たちまち音速のGで首ごと持っていかれ、なにもできないまま一瞬でブラックアウトする結果に終わることでしょう。本DLCのボスたちは、スキマ風のびょうびょう吹くパンスケのCHITSUにINKEIをエクストラポレートするような気軽さで、まばたきひとつのうちに2コマ漫画でゼロ距離へと接近し、コブシの根本までをキツキツのみぞおちに埋めてくる、高速のステゴロ番長ばかりなのDEATHから! 「シューティングゲームに搭載されていたらゲームバランスが崩壊するだろう、敵の弾の異常なホーミング性能」や「最新の人工知能も真ッ青な、プレイヤーの動きではなくボタン入力を検知した敵の回避行動」などは無印からいまだ健在で、影樹の地での冒険において再び、幾度かキャラクターではなくプレイヤーのステータスが「発狂」となりかけました。ロックオン状態からは、どれだけローリングしてもかわせない、大質量カバのゴキブリダッシューー満タンの体力が噛みつき3回でゼロになるーーに、褪せ人のマナコはスカーレットロットもかくやというほど、マネジメントの不可能なアンガーで真ッ赤に染まりましたからね(すぐに修正されたようです)!

 「妹による近親姦を目的に、兄の魂を移植した他人の遺体」という最高に気のくるったラスボスを、他世界のプレイヤーに外注してブッたおしてもらったいまは、情報なしの初回プレイでは決して回収できないNPCイベントーーすべての褪せ人が「撃たれる前に殺す」をモットーとする例の虫の死にかけを視界に入れた瞬間、反射的にたたきつぶしてしまい、バキボキにフラグをへし折るなどーーをイチから追いかけるべく、2周目の準備にとりくんでいるところです。装備や魔術や戦技や遺灰のリストを調べていくと、本編もふくめて信じられないほど膨大な取りこぼしをしていることがわかり、あらためてエルデンリングというゲームの規格外の規模を実感させられて、クラクラと目眩がしております。しかしながら、1日22時間プレイヤーが1週間で8周してゲームに熱力学的な死を与えるのに対して、1日1(or2)時間プレイヤーは極限にまでプレイタイムを縮小することで、有限なはずのゲーム体験から無限の主観時間を取りだせるのは、まさにフリーマン・ダイソン言うところの「永遠の知性」の定義そのものであり、エリート(ノット・ソー)サラリーマンの持つ特権だと言えますね!