猫を起こさないように
艦これ
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雑文「GENSHINとEVANGELION、そしてKANCOLLE(近況報告2023.4.14)」

 ナヒーダ編の第2章を読んで、大泣きしている。つくづく原神って、「偶然に家庭を持つことができてしまった就職氷河期オタクにとっての水戸黄門」だと思います。「故郷に帰り、家族と再会する。それがいちばん重要なこと」「時間という病は、すべての者を死にいたらしめる」ーー記憶と経験が時間で変化するのを「成長」と定義し、魂の輪廻を認めながらも成長の漂白だとしりぞけ、それぞれが過ごす一度きりの生を大切にせよと、目を合わせて語りかけてくる。そして、記憶と経験が消えてしまったあと、己が名付けをした存在だけが「生きた足跡」として世界に残されるという「当たり前さ」を正面からぶつけられ、シンプルな「ただいま」の一言に涙が伝い落ちるのです。でもね、本邦の初老オタクがこんなふうにヒネクレてしまったのは、何から何までエヴァンゲリオンが悪いんですよ(唐突)!

 毒親に苦しめられるアダルトチルドレンを「なんかカッコいいもの」として思春期の自己定義に組みこませてしまった、じつに罪深い作品だと言えるでしょう。多くの若者たち(当時)は病んでいるフリをするうちに、その偽りの病が人格の一部になってしまったのです。エヴァ新劇も、破の段階までは過去のトラウマを乗り越えて大人になろうとするミサトや、妻の死を乗り越えて息子と和解しようとするゲンドウの姿を真摯に描こうとしていました。シンエヴァ公開の際に「解呪」なる単語がネットに踊りましたが、多くのオタクたちが現実の20年を苦しんできた「家族の問題」を、世界の謎と並走しながらキャラクターの人生として解決してくれれば、おそらく私も「解呪」されただろうにと夢想するのです。ナヒーダのする「恨みを忘れてくれとは言わない。ただ次の世代のため、対話に応じてほしい」という龍への説得を聞きながらそんなことをボンヤリと考え、3人目の彼女のための課金を心に決めました。

 あと、ゆるく厳選した装備とにぶい反射神経で最高難度をクリアできる原神の調整を、本邦の神経症的なゲーム制作者たちには、ぜひ見習ってほしいものですね! ハナからふつうにクリアさせる気のない、艦これのイベント海域とかね! アニメ2期の後半を見ましたけど、相変わらず日常パートの演技の付け方と間の取り方が独特っていうか、意味不明ですね! あのさあ、「彼女は歩行を始めた。まず、利き手側の右足を膝裏部分がほぼ90度になるまで引き上げる。次に、前方の地面へ向けて踵を斜めに振り下ろす」みたいになってんだよ! もしかして演出志望の方にとってだけ、何がダメかを言語化することでよい教材になる可能性はあるかもしれませんけどね! しかしながら、そんなツッコミは些細なものであり、なんと最終話において鬼畜米英が味方になったのには、心底から驚愕させられました! ゆとりーー「え、日本ってアメリカと戦争してたんですか?」ーー世代への痛烈な皮肉でやってるんですよね? いったいぜんたい、我々は何と戦わされてるんですか! チクショウ、残りバケツが50を切りやがった! 艦隊これくしょん、史上最低のゲーム体験や!

アニメ「艦これ第2期」感想(3話まで)

 艦これアニメ、第2期?の3話まで見る。2話以降、無視と称賛しかないタイムラインに、まったく感想が流れてこなくなった理由がわかりました。うーん、どうして毎回こうなっちゃうんでしょうねえ。最大限に譲歩したとして、10年近く提督をやってきた戦史研究家なみに太平洋戦争にくわしい人物が、1ページあたり3行しか書かれていないラノベの行間をスーパー早口のウンチクで埋めないと楽しめない感じが、全体にただよっています。前シリーズの1話に「クロモソームの少ない学芸会における気のくるった出しもの」みたいな書き方をしましたけど、本作での真っ暗な背景でキモいクリーチャー相手に美少女の上半身だけが動きまくる戦闘シーンは、「車椅子バスケの幕間で行われる残念なパラパラダンス」にしか見えません。9年目の古強者プレイヤーとして、何の素養もない一般人がこれを目にしたときの感想を想像するだけで、悶絶しそうになります。

 艦これのプロデューサーが自分の考えに固執するという意味で、ファンガスばりの超弩級おたくであることは有名ですが、初期の炎上に懲りたのか最近ではめったに表舞台へ姿を見せなくなりました。しかしながらその影響は消えるどころか、本作にも彼のブランド(焼印)からたちのぼる臭気がむせかえらんばかりに横溢しているのです。みずから構成と脚本までを手がけて、イベント海域の難易度調整のようにグリップをきかせているこの第2期?は、教室で自作のイラストノートをクラスメイトに取りあげられ、「へー、おまえこういうのが好きなんだー」と辱められるときの記憶、泣き笑いの表情で絶句するような感覚に満ちあふれています。だからさあ、ちゃんとプロの脚本家を雇えよ! なんでただの軍艦好きのアマにプロと同じことができると思ってんだよ! 出ッ歯を水平方向に突き出しながら、「ラノベやアニメの脚本ぐらい、だれにでも書けると思いましてー」じゃねえんだよ! ストーリーテリングは言語運用能力とは無関係の、ことほぐべき「異能」なんだよ! 幼少期のアガサ・クリスティの逸話を読んでこいよ! 小鳥猊下の挫折を20年も追いかけてきて、そんなこともわからねえのかよ!

 ……すいません、年甲斐もなく少し興奮してしまいました。あと、オープニングの曲も大作映画のエンディングがごとき壮大さで、例のプロデューサーの作詞らしいんですけど、あのさあ、なんでプロの(以下略)! ……非常にバランスが悪く、これを冒頭に配して毎回を聞かせる自己陶酔の雰囲気に、失敗の原因がまざまざと表れていると思いました。おたくが忌避されてきた理由の最たるものが客観性の欠如、いわゆる「空気の読めなさ」であることを、あらためて他者のふるまいから自覚させられています。何年もこんなゲームをプレイし続けているのが、とても恥ずかしいです。

アニメ「BASTARD!! 暗黒の破壊神」感想

 艦これイベント最終海域を進行中。諸君のようなエリートとは異なり、乙へ落とした難易度にさえヒイヒイ言ってるクソ提督だが、潜水マス大破撤退の苦しみは諸君の抱いているそれと何ら変わるものではない。現在、4本目(4本目……!!? )のゲージ破壊に取り組んでいるところだが、己の内に潜む暴力性を強く自覚させられている。大和改二重への改装のため、山のように放置されていた限定任務に着手し、設計図0枚から勲章をかき集めたのに、その最強戦艦が資源を食うばかりでいっこうに仕事をしないからだ。ご存じのように、このイベント海域、ゲージ削りとゲージ破壊でやっていることの見かけは同じなのに、ゲームの本質がまったく変化してしまう。前者は資源と時間が成果として累積する定期預金(古ッ!)であるのに対して、後者は有り金すべてを畳に並べてサイコロの目にベットする場末の賭場と化すのだ。

 現状をまともに認識しては発狂するしかないので、意識を坊ノ岬での大破撤退からそらすために、ネトフリでバスタードをながら見しはじめる。まったく本作といいスプリガンといい、当時の中高生のうち、「就職氷河期を生き残った連中だ、ツラがまえが違う」みたいな管理職になったサバイバーどもが、いよいよ現場の実権を握りはじめ、あと10年ちょっとを逃げ切るだけの立ち場になって、もう好き放題やりだした感が伝わってきますねー。さらに10年を待てば、次世代のnWoファンが管理職として現場の実権を握り、「少女保護特区」や「MMGF!」を出版したりアニメ化したりしてくれると考えると、まだまだがんばれるって気持ちになります(ぐるぐる目で)。

 さて、今回アニメ化されたバスタードはスプリガンと違って、お世辞にもクオリティが高いとは言えませんが、あの時代の空気感だけはたっぷりと詰まっており、いろいろと当時を思い出して懐かしい気持ちになりました。アニメの出来について、ドぎつい原作ファンが新旧を比較したドぎつい絡み方ーー主人公の声が甲高すぎるのは同意しますーーをしているのを見かけ、ある世代にとってはとてもとても大切な、名実ともに神話的な作品だったことをあらためて確認できました。ちょうどグループSNEあたりが、海外のテーブルトークRPGやゲームブックなどを翻訳・翻案して本邦へ紹介し、急速にファンタジーの世界観が主に中高生男子の人口へと膾炙していった時期に、バスタードの連載はスタートします。最初期の本作は、既存作品を丸パクリした設定にヘヴィメタル趣味をふりかけただけの、メタ視点の悪ふざけが過ぎる極めて同人的な内容で、まさか10週打ち切りをまぬがれて大長編と化し、ここまでの伝説的な扱いをされる作品になるとは、だれも予想していなかったように思います。個人的にはそれほどハマらなかったのですが、呪文詠唱を丸暗記して唱えるのが流行ったり、周囲の盛り上がりはなんとなく記憶にあります。

 適切かどうかはわかりませんが、他作品をからめて全体の印象を述べると、ランスシリーズのような悪ノリのパロディと下ネタで始まったのが、氷をあやつる四天王の登場ぐらいから作者の真剣度が増して、語り方の質が大きく変わります。メタが鳴りをひそめると同時に、物語はギアを上げてグングンと加速していくのですが、やがてベルセルクと同様、作画を細密化させすぎるという自縄自縛ーーこちらは話のスケールを大きくしすぎたせいもあると思いますーーに陥って、ついには肝心のストーリーを頓挫させてしまいました。今回のアニメ化は、物語の質が変わる前の段階ーー最後は続編前提のヒキで、2期が無ければ目も当てられない尻切れトンボーーで終わっており、新たにバスタードへ触れた層に、昨今の倫理観とあわぬがゆえの悪印象だけを与え、本作を知る必要の無い「頭文字F」にまで発見されて、どこかで吊るし上げをくらって中絶させられないか、続きを期待する者としてちょっと心配しています。

 原作の展開、特にセリフをほぼ忠実に再現したこのアニメを眺めるうちに思ったのは、バスタードは少年漫画が本当に「少年・イコール・男の子」だけのものだった時代の作品だったんだなあということです。精通前と精通後ーー女性の警戒心と主観的な接触の意味が変わるーーを行き来する主人公が、女性ヒロインたちの処女性に異常なまでのこだわりを見せるところへ、特にそれを感じます。いまはどうかわかりませんが、かつての少年漫画が持っていた絶対の不文律とは「寸止め」、すなわち「主人公とヒロインが絶対にセックスを完遂しないこと(ペッティングまではオーケ)」でした。これは「セックスすることが相手との契約になり、二人の関係性と己の内面が永久に変更され、以後はそれが死ぬまで継続する」という価値観であり、セックスという行為に最大級の意味づけをし、ひたすらに「一穴一棒主義」を信奉する強い倫理観の表れなのです。裏を返せば、セックスした瞬間に失われる可能性の流動を担保し、少年の持つ無限の未来を異性から隔離しているとも指摘できるでしょう。

 かつてのオタクというのは本当に純粋な、無窮の愛がこの世に存在することを信じて、いつまでも探し続ける人たちのことでした。そんな我々にとって、ランスシリーズのエンディングが感動的だったのは、あの時代のすべての少年漫画がどこかであきらめて、それを手放していった先に、ただひとつ残された古い物語として、無窮の愛は確かに存在すると示してみせたことでしょう。つまり、バスタード時代の少年漫画が抱いていた「人生を永久に変更するセックス、そして至高の愛」という夢想に満ちたテーマを、ついには男性の視点から語り切ったのだと言えます。

 ともあれ、今回アニメ化された範囲だけでは旧世代のオタクたちが、なぜあれだけバスタードに熱狂していたのかサッパリ伝わらないと思いますので、我々の名誉のために、せめてアンスラサクス戦ぐらいまでは映像化してほしいものです。

ゲーム「2021年の艦これ」雑文集

アニメ「艦これ1話」感想
ゲーム「艦これ2014夏イベント」感想
ゲーム「艦これ2019夏イベント」感想
ゲーム「艦これ2019秋イベント」感想
雑文「或るおたくの症例(艦これ2020年秋イベント実録)」

 艦これ、アルコールを入れつつ日課の演習消化へ取りかかろうとして、警戒陣の追加に新たなイベントが始まったことを知る。一瞬で酔いは醒め、肌がヒリついた。いま「世界で最もプレイしたくないゲームは何か」と尋ねられれば、答えは間違いなく「艦これ」だろう。そんなにイヤなら、やめればいいのにって? ハハッ、ラブリーなアドバイスをありがとう。「FF11は人生」になぞらえるなら、「艦これは刑期」なのさ。

 潰しても潰しても、ゴキブリみたいに次から次へと出現するゲージにゲンナリする。あのさあ、中規模イベントの「中規模」って、どういう意味で使ってんの? 何度も何度も出撃させられて、キンキン声の砲撃戦を見せられるイライラったらないんだけど、どうせ内部的には接敵の瞬間に戦闘結果が出てるんでしょ? 艦これイベントへの苛立ちの大部分って、チンチロで例えるなら「シゴロが出るまでサイコロを振り続けろ」みたいな回数の試行を求められるのに、過程の90%が見ているだけで介入できないところに起因してると思う。「3倍速」「オート進軍」「戦闘スキップ」の機能が実装されれば、イベント海域のストレスは(私にとって)大幅に軽減することでしょう。

 よしッ、第3海域のボスゲージ破壊ッ! いやー、乙かれ(笑)さまでした! これであと三ヶ月は艦これに触らなくていいと思うと、清々しい気持ちで目頭が熱くなってきますね! 他のすべては最悪ですが、この解放感だけはいつも最高です! もちろん、攻略の過程で新規ドロップ艦が手に入るなんて望外の幸運にはめぐまれていませんが、潜水艦と駆逐艦は戦力的にもう飽和状態で必要ないし、理由はわかんないんですけど「マキナミ」って艦名がすごい不快感を呼び起こすので、私のイベント攻略はこれにて終了です!

 ……え、まだ後段作戦あるの? もう2海域ほど追加されるって? あのさあ、もういちど聞くけど、「中規模」ってどういう意味で使ってんの? 1海域あたり3〜4ゲージあるのを5海域って、イベント毎にどんどん規模が肥大していってんだけど、とりあえず「大規模」の定義を教えといてくれる? 今後のつきあい方を考えさせてもらいますので!

 あと突然の近況報告ですけど、半年ぶりくらいにマウスとキーボードを新調することになりました。(イヤそうに)もしかして、また艦これですか? (悲しそうに)そう、また艦これです。イー・フォーの第4(第4!)ゲージ破壊、昼間に敵旗艦を大破まで追い込んでの夜戦突入、さらに第二艦隊は無傷で、「これはもらった!」と息まいていたらカットインまでぜんぶカスダメ、装甲破壊ギミックも解除してんのに、残りHP2が削りきれずガシャン。はい、ここでいまは懐かしい、あのキーボード・クラッシャーの動画を思い浮かべて下さい。我にかえったら、なぜかマウスとキーボードが反応しなくなっていました。ヘヘ……ちくしょオォ……どうしてオレって奴あよオォ……ちくしょオォ……(魔物のパイオツに顔をうずめながら)。

 ゲージ、ギミック、ゲージ、ギミック、ギミック、ギミック、ゲージ、ギミック……ウオアアァァァーーッ! 小鳥猊下であるッ!

 艦これ春イベ(春なの?)、乙乙乙乙乙にてクリア。「神はサイコロをふらない」って言葉がありますけど、艦これのイベント海域って、サイコロをふりまくる神がへべれけでチンチロをションベンさせまくってるような印象です。今度こそ、本当にこの苦役から解放され……え、E5のドロップ艦って、宗谷なの? 巻波はなんか音の響きがイヤなので(理由はわからない)無視したけど、「南極のタロとジロ」を音読して号泣する大人へ「え、なにコイツ? なんで泣いてんの? 怖ッ!」と白けた視線を向けていた子どもとしては、宗谷を引かずばなるまい。リキ、行くぞ(老齢の犬が億劫そうにまぶたを上げる)!

 うん? 艦これのイベントやってないんですかって? 最近、私の死因は艦これ由来の脳出血か大動脈解離ではないかと半ば本気で恐れているため、できるだけ意識に上せないよう、言語化せぬようにプレイしており、菩提樹の下で魔羅にウザがらみされながら結跏趺坐を崩さぬ釈尊の修行みたいになっている。現在、E3-4のゲージ破壊に着手しており、体感で9割以上となる夜戦マスでの大破撤退に、悟りの完成は近い。乙難度にも関わらず、使用したバケツは1,000近く、消費した燃料は150,000を優に越えており、小規模とは名ばかりの、過去最低のイベントだと断言することに何のためらいもございません。

 艦これ夏イベ、友軍を待たずに乙乙丙にてクリア(友軍を待っていたら、どこかの血管が破れて死ぬと思ったので)。以前、モンハンワールドだったかの感想で「レベル50で激闘、レベル99で楽勝だったのが、いまやレベル99がゼロ地点でそこから高い技量を求められる」って書いたけど、今回のイベントもまさにそんな感じですね。「前回までの甲難易度クリア報酬やランカー装備を漏れなく所持し、艦娘はケッコンしてできるだけ高いレベルにして、装備改修とステータス改修を上限に近づけておく」が攻略の前提にされてるので、総体としての難易度が甲に引っ張られる形でずっと上がり続けてるんですよね。いよいよサービス終了に向けて、カジュアル・プレイヤーを振り落としにかかっているのではないかと疑うほどです。今回、はじめて丙に落としてクリアしましたけど、体感的にはそれでも前回の乙ぐらいの難易度はあったような気がします。FF14にも感じたことですが、「レベル99で最強装備」が攻略の前提であるゲームが増えてきたのは、まともなレベルデザインをできる人材がそのノウハウをどこにも残さず、業界から姿を消してしまったからなのでしょうか。昔のゲームは「下手でも時間をかければ報われる」ように作られていましたけど、最近のゲームは「時間をかけても報われるとは限らない」ものばかりで、人生の残り時間が気になる世代にとって、怖くて新しく始められないものばかりになってきています。「じゅぢちゅ廻戦は面白そうだけど、若い作家の長編はもう怖くてさわれない」という話を以前しましたが、「作者が死んで、もう続きが見れない」なら、まだ気持ちの整理をつけようがありますが、「自分が死んで、もう続きが見れない」なんてことになれば、怨霊として化けて出るしかありません。オタク趣味が市民権を得た結果、息ぬきの娯楽や気軽なエンタメに過ぎなかったものが、あまりに人生の時間や労力を多く要求する方向に進んでいる気がします。「鬼滅の刃」や「チェンソーマン」の素晴らしさは、この観点からも説明できると思いました。

雑文「或るおたくの症例(艦これ2020年秋イベント実録)」

 ネット越しとはいえ、二十年ほどもおつきあいいただいていると、私の人格的な陥穽とか異常は親族のように理解いただいていることと思う。おたくを罹患した自分において、大人になるということは、精神的な成長や人格的に陶冶されることとイコールではないと警戒し続けてきた。二十歳ぐらいで固着した本性は、どれだけ時間を重ねようとも決して変わることはない。人格の歪んだ部分、欠けた部分に自らの意志でもって義肢をあてがい、正常のような見かけでふるまうことができる、それが私にとっての大人になるということである。幾度も手痛い失敗を繰り返し、そのたびに擬態の能力を高めていく繰り返しだった。けれど、うまく擬態を装っていける時間が長く伸びれば伸びるほど、もしかして本当に私は成長して、人格が陶冶されて、充分に成熟したのではないかと錯覚する瞬間が訪れる。もういまの私はかつての異常な私のようではなく、長く私を苦しめてきた症状は完治したのではないかという、都合のいい錯覚。アル中病棟で読んだ「ぬか漬けのキュウリが生のキュウリに戻らないのと同じ」で、異常な嗜癖を病んだ者は、おたくを病んだ者は、二度とそうでなかった状態へは戻れない。その事実を定期的に、痛烈に突きつけてくるものがある。そう、艦これのイベントだ。これまでの甲難度と同じレベルの乙難度ゲージ破壊に数万の燃料と数百のバケツを空費させられ、いったん攻略を中断して資源確保に当たっていた。そして昨晩、友軍艦隊が来ているのに気づき、これでようやく鬱陶しいやり残しの仕事を清算してしまえると、再び最終ゲージの攻略に乗り出したのである。するとどうだ、友軍艦隊はカスのようなダメージしか与えず、尋常ならざる敵最終編成の撃破にはまったく届かない。かりそめの希望がひるがえって絶望に転じるとき、それは限りなく深くなる。息苦しい暗がりの洞窟を延々と進んだ先、出口の陽光へと踏み出そうとした瞬間に、襟元をつかまれてグイッと暗闇に引き戻されたときに感じるだろう絶望。前衛艦隊が無傷のままボスの夜戦に突入し、すべてのクリティカルが敵旗艦に吸い込まれるという妄想を抱いたまま、やめどきを失っていく。撤退を繰り返すたび、心の中に昏く重たい感情が累積していくのがわかる。そして幾度目の出撃だったろう、最初の空襲マスで一隻が大破した瞬間に、それは決壊した。キーボードを殴りつけ、マウスのコードを引きちぎり、コントローラーを机に叩きつける。怒りの自失から我にかえると、モニターは倒れ、右手には血が伝い落ちていた。もしこの感情が人へ向けば、間違いなく殺してしまうような性質のものだ。穏やかな表情で日々を過ごしている自分、もしかしたら敬意や信頼を寄せられさえする自分の内側に、こんな制御不能の異常な汚れたものが潜んでいる。そして時折、外へ噴出しては自分を絶望させる。

 艦これは、きらいだ。ずっと忘れていたいのに、私が異常者であることを、幾度も幾度も思い出させるから。

ゲーム「MHWI:黒龍ミラボレアス」感想

 例のアドバタイズ・ドラゴンやってる。現環境で支配的な要素への逆張りだけで作られた、正にキメラティック・メタ・モンスターであり、制作側の想定する手順を完璧にトレースすることでしか討伐できない。フロンティアの雷龍のときみたいに、アルコールを抜いてソロで真剣に練習を繰り返せば勝てるのだろうが、私の気持ちの大半はオススメに向いており、アイスボーンにそこまでする熱量がもうない。バカ高い体力のせいで部位破壊が異様に渋くなっており、負けると素材がほぼ手に入らないこともやる気を大きく減退させる要素だ。カンコレのゲージ破壊や新艦ディグにも感じることだが、同じ時間を使って現実で手に入るものへ思いをいたせば、この年齢になって何も手に入らないまま素材と燃料と、何より貴重な時間が完全に虚空に消滅する作業なんてやってられるか、というのが正直な気持ちである。

「アルバトリオンを倒せ」
「倒せない。引退しよう」
「ミラボレアス実装です」
「懐かしい。復帰しよう」
「アルバトリオンを倒せ」
「は?」

 狭い地形に広い範囲攻撃で殺されるの納得いかない……

 ねえ、みんなそんなゲームうまいの? ぼくはファミコンからずっとやってるけど、ぜんぜんうまくならないよ?

 ムービーが入ったので倒したかと思ったら、「まだ2回も変身を残している」状態だったんですって。へー、すごーい、つよーい、さいきょーう(棒)。

 ミラボレアスが倒せず、復帰8時間で再び引退。モンハンって昔は、ドラクエで例えると「あるていど装備を整えれば、レベル30くらいで下手でも頑張れば勝てる」みたいな調整だったのに、いまや「完璧に装備を整えたレベル99を前提として、上手ならば勝てる」みたいなゲームになってるな、と思った。

 アルバトリオン、ミラボレアスと来て、私がモンハンに求めてたのって、「良質なアクション」じゃなくて「ごっこ遊び」だったんだなあって、つくづく思った。「キン消しを戦わせる小学生のような、自分が最後に勝つことを前提としたプロレス死闘ごっこ」がやりたいのに、「20分以上、一瞬も集中力を切らさず、最適な行動を選択し続けるアクションゲー」をやらされるのいらんねん。マルチプレイにしても「1人弱いヤツが混じると勝てない」のいらんねん。ゲームやねんから、弱いもんを助ける英雄ごっこをさせてえや。チームの足手まといになるのんは、リアルだけでもうじゅうぶんやねん。最近の格闘ゲームとかでもそうやけど、「素人には静止にしか見えない視線や体重移動のフェイントから、頭部への回し蹴り一発で決着」みたいの、ほんまいらんねん。そういうのは他のフィクションで摂取するから、ゲームくらいもっと雑に遊ばせてほしいねん。あと、こないだからやってる投票やけど、フォロワーの君たちに読んでもらうためにしとんちゃうねんで。君たちのフォロワーに「過去作を再発見」してもらうためにしとんねんで。投票数と同じ数のリツイートがないの、おかしいんとちゃうか? たのむで、現世利益と萌え画像をちゃんと誘導してや!

 まあ、あんま知りたくないだろうけど、ここ私の日記帳なんで近況を報告するね。いろいろ文句もつけたけど、ワールドおよびアイスボーンは携帯機をかなぐり捨てたという一点において名作であると認定できるし、これが人生において最後のモンハンになる気がするので(次作がまたスitchyだかゆう小人マシンなので)、引退したとか言っておきながら、仕事が終わってからアルコール入れる前に野良ミラボレアスへ通ってんのね。これがまあ、ぜんッぜん勝てないわけ。第一形態は誰かが死んだら誰かが即リタイアして終わるし、第二形態に進んでもみんな慎重すぎて頭が壊せないまま時間切れ、そんで十回に一回ぐらい第三形態までたどりついても、強力な範囲攻撃のおかげで熱した鉄板に落とすバタのようにハンターたちが瞬時に蒸発していく(含む自分)。そんで、いま私がやってんのは一回こっきりの「特別任務」で、クリアできたらミラボレアス討伐自体が「フリークエスト」へと移行すんのね。クリアできなきゃ「特別任務」をやり続けるしかなくって、これってつまり、毒虫を共食いさせる例の儀式の壺の逆バージョンで、日を追うにつれてどんどんヘタクソで弱いヤツが濃縮してく仕組みになってんの。何度も敗退を繰り返すうち、自分が反射神経の衰えたゲーム下手の中年美少女で、フレンドもおらずギルドに入るコミュ力も無い、リアルをそのまま反映したゲームライフに涙が出てくんのよ。で、しょうがないからせめて装備だけでも作って終わろうと思うんだけど、それ以外の素材は腐るほどあるのに邪眼だけが足りない。それもそのはず、邪眼って剥ぎ取りか頭部を二段階破壊しないと手に入らない上級素材なの。でも、いっかいも討伐したことのない下級モンハンプレイヤーなのに、なんか邪眼がいっこ必要な装備を持ってんのよね。調べてみたら、ネコのぶんどりで1パーセントの確率で手に入るよって書いてある。そっから、名付けて「ぶんどリタイア」マラソンが爆誕するわけよ。「この1パーセントが引けなきゃ、オレは今まで生き残ってこれなかったろうな」っつって根こそぎフランケンごっこしながら半日ほど延々とぶんどっては帰還を繰り返すんだけど、邪眼はゼロ。それ以外の素材は腐るほどあるからぜんぶ売るんだけど、本当に欲しいものは何ひとつ手に入らないのにカネだけが増えていくわけ。技術もなく、仲間もなく、友人もおらず、ただカネだけがしんしんと積もっていくその様子はまさに己の人生を眺めているようで、急に寒くなったこととあいまって、どんどん気が沈んでいくのよ。そんな虚無マラソンの傍らで、ネットフリックスの「ラストダンス」全話を視聴できたことだけが、きょう唯一の収穫でした。もしかして「デカスロン」の、のちに大統領になる黒人選手の人物造詣って、マイケル・ジョーダンを下敷きにしていたのかな、と思いました。モンハンきらい。

 邪眼マラソンの末、一匹もミラボレアスを倒していないにも関わらず、ドラゴン大剣装備が完成した。これがまー、アホみたいにつよい。アルコールを入れながら雑にプレイしても(歴戦王でさえ!)ほとんど死ぬことがなくなり、まさに求めていた理想のモンハンが実現したのであった。このまま終わるのも癪なので、毎日数回ミラボレアスに通ってる。きょうは英雄の証が流れるまで追いこんだが、圧倒的な存在感を示す太刀がひとりで4乙してクエスト失敗となった。ほんとクリアできんの、コレ?

 あと、ミラボレアスの直下ブレスと「あれもモンスターである以上」という台詞にすごくシン・ゴジラみを感じる。

 ミラボレアスたおせた!

 ミラボレアスのアホいてこまして、よっしゃ、ぜんぶの武器つかえるようにしたろゆうてドラゴン装備で防具くみはじめんねんけど、ずっとサボっとったからタマがぜんぜん足らんねん。んで、イベクエながめとったら、滅日あるやん。歴戦テオたおすヤツやねんけど、オスやからか知らんけど、封じられたタマ、確定でみっつも落とすねん(モンスターやし、キンタマみっつついとんかもしらんな)。アマプラでダイ大ながしながら滅日マラソンすんねんけど、声優はんがエエ声でカタカナ2文字に気持ちこめて「ギラ!」とか「イオ!」とかしゃべんの聞いてたら、だんだん恥ずかしゅうなってきて、顔があつなってくんねん。そしたら、うしろから音もたてんとしのびよってきたジャリが首かしげて、「おとうちゃん、こんなんすきなん? きめつみいひんのん?」とかきいてくんのに、「ち、ちげーし! ジャンプ連載時はもっとおもしろかったし! ちんぽデルパ!」とか大声でどなって泣かしてもうたり、もう最悪やねん。まあ、ジャリのくだりは妄想やねんけどね。歴戦テオ周回しまくってて思ったんやけど、いまはやりのキツメのおめこ?のゲーム化は、なんや格ゲーになりそうな気ぃすんねんけど、上弦とのバトルとかモンハンのシステムでワチャワチャやるんがしっくりくるんとちゃうかな。知らんけど。

 そういや特別任務のアルバトリオンたおしてへんわってなって(なって、やて。サブイボたったわ)、ミラボレアスのアホいてこましたあとやからかもしらんけど、装備もものごっつうつよなってるし、ぜんぜんたいしたことあらへんなゆうてヘラヘラ戦っとったら、属性DPSチェック3回もやりよんねんな。野良パーティでノーミスやったのに、3回目のフィールド攻撃でみんなまとめていんでもたわ。モドリ玉もつかわれへんし、フィールドひろうて壁ドンもなかなかでけへんし、なんや難易度の上げ方がごっつゲーム的やねん。環境を利用した本格狩猟アクションみたくはじまったワールドやのに、アイスボーンの最後はどいつもこいつもイー・スポーツやねん。ホンマはらたつわ。

 それと、ちんぽやらおめこやら、かんとの上品な方々にはエゲツない言い方して、えろうすんませんでしたな。かんにんやで、知らんけど。おあいては、しおみまこ、まこまこでしたぁ……ってだれやねん! いま完璧に脳内でセリフが再生されたで、こわっ!

ゲーム「艦これ2014夏イベント」感想

 艦これの夏イベントが始まったので、本日の11時02分ちょうどに最初の海域へ艦隊を送り出した。どうやらアニメ化も決まっているようで、きっと今年のコミケトーも一時帰還した英霊たちが目を覆って空を仰ぐような感じになるのだろう。

 個人的なことを言わせてもらえば、今回のイベントに至る運営側のブレないやり方にひどく感心している。史実通りミッドウェーからの沖縄決戦(岡本喜八!)をやってしまえば、太平洋戦争をモチーフにしたこのゲームに残されたテーマは無く、本質的には役割を終えてしまう。周辺の異様な盛り上がりを考えれば、この最大にして最後の海戦を持ってくることは、来年にでも再来年にでも、あと何年かは引き伸ばせたはずなのだ。

 しかしながら、大和をかなり早い段階から登場させたことからもわかるように、このブームがいつか必ず終息していくことを運営側はすでに見越しているように思う。おそらくはその終わりの時点から振り返れば、いちばん熱く盛り上がっていたと思い出されるだろうこの夏に、しかも原爆の投下から終戦へと至る正にこの時期をねらって今回のイベントを合わせてきたことに、私は確かな強い意志を感じるのだ。これまでに幾度か紹介した愛するブラッドベリのフレーズ、「おれたちは滅びていくのかもしれない」が表現する静かな諦観をこの狂騒の盛夏に忘れない姿勢へ、私は最敬礼を送りたい。

 だから、萌えではない方の状況をこそ意識しながら、今回のイベントを楽しみたいと思う。最近では思い出したときに艦隊を遠征に出すくらいしかしていなかったから、きっと高難易度の終盤ステージはクリアできないに違いない。

 でも、それでいいのだ。私たちの祖先も、ついにそれを果たさなかったのだから。終わりの延長線上にある今を、いつか思い出として語る今を、いっしょにじっくりと味わおう。

 そろそろ諸君のプリキアータイムも終わっただろうか。タイフーンに降りこめられたkinky地方在住(用例:His sexual demands are kinky.)の俺様が、ミッドウェーを攻略しながら片手間にダラダラとしゃべろうかと思う。

 チクショウ! 本土が攻められてるってのに、燃料が底をつきはじめた! 大和型の大破すること、まさに豆腐の如し! そのたびに鋼材が四桁単位でフッとんでいく! こいつァ、リアル沖縄決戦の様相を呈してきやがった!

 なに、燃費の悪い大和型をわざわざ使わなくても、金剛型とか長門型を使えばいいじゃないですかだと? バカヤロウ! マリー・アントワネットみたいなこと言ってんじゃねえ! おれァ、大和じゃなきゃダメなんだよ! 大和といっしょに、史実をくつがえすんだよ!

 燃料が、尽きた……!! (男の戰いの抑揚で)

 あと一度撃破すれば、露助ないし毛唐、もしくは紅毛人、あるいは鬼畜米英を本土から永久に追放できるという大詰めで、初めてボスマスからそれた。ちょうど燃料は尽きた。本当に、心の底からブッ殺してやりたい。憎悪でさえ、シミュレーションの対象なのか。

 沖縄決戦の反省会すっぞ、コラァ!

 このキソ野郎が! なんちゃって雷巡め、ちっともカットインしやがらねえ! たまにしたと思ったら、ドヤ顔で雑魚ばっかねらいやがって! アリューシャンの先輩方にヤキ入れてもらいてえのか!

 神妙な顔で聞いてるフリしてんじゃねえぞ、このヤマンバギャルめが! ポンポンポンポン爆竹みてえに大破したかと思や、立ちバックで突っ込まれたみてえな気に障るツラしやがって、ドM野郎め!

 大口あけて笑ってんじゃねえぞ、英検5級のイカサマビッチ帰国子女めが! 砲撃なんざハナから期待しちゃいねえが、オマエが毎回ちゃんと探照灯うってりゃ、とっくにこの戦争終わってんだよ!

 てめえもだよ、役立たずの尻軽空母が! 前から思ってたけど、なんで目の焦点があってねえんだよ、このテカテカトルコ相撲パイオツロンパリ野郎が! どの性癖層に訴求してんのかわかんねえよ!

 目ェ伏せてお通し作ってますみたいな顔してんじゃねえぞ、このドサ回りの演歌歌手めが! 高校生のガキがいそうなツラして、なんで3スロットなんだよ! スロットは秘裂の隠喩じゃねのかよ!

 土下座だ! おまえら全員、大和ねえさんに土下座しろ! 

ゲーム「艦これ2019秋イベント」感想

 艦これのイベントは、仕事にそっくりだ。

 前のイベントのダメージから完全には回復しないまま次のイベントが始まってしまうところなんか、仕事にそっくりだ。

 一隻の大破で連合艦隊を撤退させるとき、チーム力は最も弱い者のレベルになるというマネジメントを思い出させるところなんか、仕事にそっくりだ。

 敵の旗艦をあと一撃にまで追い詰めながら撃沈を逃したとき、部下のミスで大きな契約を逃したことを思い出させるところなんか、仕事にそっくりだ。

 イベントの終了時期と残り資源から逆算して難易度を下げるとき、納期と天秤で質へ目をつぶる決裁を思い出させるところなんか、仕事にそっくりだ。

 イベント海域をクリアしたときの「もうプレイしなくていい」という解放感は、オフィスで迎える納品後の朝の虚脱感を思わせて、仕事にそっくりだ。

 そして毎回、「もう辞めよう、もうこれで終わりにしよう」と思うのに辞められないところなんか、仕事にそっくりだ。

 艦これのイベントは、仕事にそっくりだ。

 (何らかの激情に駆られて握ったこぶしを激しく交互にキーボードへ叩きつけながら)ウオアアアアーーッッ!! 小鳥猊下a.k.a.キーボードクラッシャーであるッ!

 社畜には、イベント開始と同時に攻略へ取りかかることは、ほとんど不可能である。時間も資源も圧倒的に足りず、試行錯誤の余地はあらかじめ奪われている。なので、先行者のクリア編成と装備を丸々コピーすることからイベントが始まる。慢性の鬱病で、音と光がとてもつらい。特にキンキンした若い女性の声が耳にさわる。モニターの明るさをできるだけ低減し、音声設定からBGMとVoiceをあらかじめ殺しておく。SEを切らないのは、戦闘終了とギミック解除の音を聞き逃さないためだ。なぜなら量子力学の観測問題ーー注視しながらプレイすると必ず道中大破し、ボスにはカットインせず撃破を逃す現象ーーを回避するため、攻略中は画面を他のウィンドウで覆って見えないようにするからだ。つまり私にとって、クリアまでの行程はセガサターンのリアルサウンドとほとんど変わらないのである。リアルイベントにもいっさい興味はないし、なぜプレイを続けているのか自分でもわからない。たぶん、アルコールと同じ類の耽溺なのではないかと思う。

 たったいま、甲甲乙乙乙乙でクリアしたお……もう年内はプレイしなくてすむお……ほんとうに、ほんとうにうれしいお……不幸のない状態を幸福と呼ぶんだお……(バスタオルに顔を埋める)

ゲーム「艦これ2019夏イベント」感想

 うん、カンコレ? ……3海域だけだし、久しぶりに甲勲章ねらえるかもなどと考え、じっさい友軍が来るまえにイー・ツーをすんなりと抜けてしまったのがマズかった。イー・スリーも最終段階にさしかかり、ボスの装甲破壊ギミックに着手するも、なぜか基地防衛の航空優勢がなかなかとれない。調べてみると甲は乙の倍ほど制空値が必要なのだという。なけなしの装備をかき集めてみると、イー・ツーでもらったばかりの局戦の熟練度を最大まで上げれば、ギリギリ航空優勢の制空値に届きそうな感じである。そこで、イー・ワンに戻っての熟練度上げを始めた。

 幾度も出撃・撤退を繰り返すが、熟練度は遅々として上がらない。ちょうど二十回目の出撃後ぐらいだろうか、私の脳髄にトカトントンが響き始めた。人生の貴重な時間を、こんな無駄な作業に費やしていていいのか。何か大病をして、人生の残り時間が決まった場合、まっさきに後悔するのは正にこの時間なのではないかーーそう考えると、手が止まった。

 それ以来、一週間ほど遠征による資源回復も行わず、放置したままである。もしかすると、本当に引退かもしれない。

 カンコレのイベントどうなりましたか、だって? ハハハ、君はこんなバスエ・サイト・マネジャーの昏い趣味にまで気をかけてくれるいいヤツだなあ! あるいは、クリア済みの甲提督が優越感でなぐりに来ているのか、んん? まあ、その気分はわかる。イー・ツー・甲をクリアできないグズどもを見るのは、本当に胸のすく感じだったからな!

 あれから、トカトントンが響いていない瞬間は私の人生には無かったことに気づき、なんとか航空優勢のギミック解除にまではこぎつけた。しかし、それがワナだった。すなわち、ビッグ・スワンプの始まりである。大破、撤退、大破、撤退。ボス旗艦を中大破に追い込んでからの夜戦敗退は数知れず。繰り返される虚無と空費は、瞬発的な怒りとは異なった、日常生活では意識することのない、根源的で巨大な感情の存在を顕現させる。表面はしんと静まり返っていて、煮え立ちもしない。

 しかしこれこそが、他者の肉に刃物を通し、幻想の肉を火刑にし、肉親の骨を鈍器で砕き、偽りの肉を電気コードで締め上げるときの感情なのだ。私たちの世代が本質的に呪われていることの証左である。受験、就職、結婚、出産、育児、マイカー、マイホーム、昭和の追憶を表面だけトレースしても、決して満たされることはない。こんな玄妙極まる激情を惹起するゲームは、他にないだろう。

 そして、ほとんど誤差にしか見えない微細な数値を膨大な時間を費やして積み重ねた先に、かろうじて届く領域がある。これは最高のギャンブルと同じで、技術を突き詰めた究極の先には、純粋に運だけが残る。その場所では、自分は勝てないことを改めて思い知らされた。人生についての苦い学びがあるのは、良いゲームの証拠だ(そういえば、エフエフ・イレブンもそんなゲームだった)。やがてバケツが尽き、アルミが尽き、燃料が尽きた。イベントの終了期限から判断して、難易度を乙に落とす。すると、エス勝利が2回続いて嘘のようにスッとクリアできた。

 至高のステージでは敗者にしかなれず、一流にはわずか届かない技術で二流を相手に糊口をしのぐ。つまらない勝ち、達成感のない勝ち、無意味な勝ちだけが積み重なる日々。本イベントは、己の人生をふりかえって自嘲するが如き顛末に終わった。カンコレ、罪なゲームである。

ゲーム「艦隊これくしょん」感想

 FUNK LOVE(ファン倶楽部)! 小鳥猊下であるッ! 貴様ら、コミケを直前に控えた猛暑の最中、いかがお過ごしでしょうか? アー・ユー・バイイング・マイ・ファンジン? 少女保護特区効果により、いまやガイジンどもの聖地巡礼が耐えぬ四神相応の地に鎮座する小生だが、昨日全国を駆け巡った大地震の予報にも関わらず、貴様らから身を案ずる声は絶無であった!

 ネット上で小鳥猊下へ言及を行ったものへの自動発番により肥大し続けてきたnWoファン倶楽部の面々は、いったい何をしておったのか! 奈良県沿岸部在住の小生は、暗峠(くらがりとうげ)を越えて迫る大津波をサーフボード一枚で乗りこなし、あの巨大地震を命冥加に生き延びたことだけ報告しておく!

 ところで急激に話題の舵を切るが(唐突な比喩だ!)、最近ドはまりしているものがある。ちょっと手をつけてからしばらく放っておいたのだが、今ではこんなに面白いものがあったのか、これが無ければもう日も夜も呉れぬ(おっと、誤変換失礼!)という感じだ。

 戦争の悲惨を極めた場所へ身を置きながら不服の一言さえ漏らさず、日の終りのわずかな補給だけを楽しみにして、生きて戻れぬかもしれない過酷な命令に日々従事する、あのけなげさ。そして、ボーキサイトを溶かして自作した申し訳の装備を肌身離さず持ち続けるいじらしさ、豊食の日本人が永く忘れていたその清貧と愛らしさに、待ち受ける過酷な運命から逃れさせることはできないまでも、私はそっと背中から抱きしめ、暖めてやりたいような気持ちにさせられる。

 だから私は、少しでも生存率が上がるように、少しでも多くが故郷へ帰れるように神へ祈るのだ、「キラキラしねえか、キラキラしねえか!」と……!!

 さて、もうわかったと思う。いま大人気のアレだ。正解がわかった君は、web拍手などの匿名メッセージで構わないから、こっそりと私に耳打ちして欲しい。もちろん、商品名の一文字を丸の中に入れさせるくらいの簡単なクイズなので、正解者は多数になることが予想される。

 その中から抽選で一名に、nWoの今後に関わる重大な権利を譲渡しようと思う。今度こそ、ファン倶楽部(FUNK LOVE)のみんなの積極的な参加を期待しているゾ!

 うむ? 「やって」る? 「艦コレ」? なにソレ? 貴様らおたくとは、どうも話が噛み合わんな。いま大人気のアレと言えば、ソルジェニーツィン先生の「イワン・デニソーヴィチの一日」に決まっておろうが!

 戦争の悲惨を極めたラーゲリでアルミ(ボーキサイト)を溶かして自作したスプーン一本を脚絆に忍ばせ、わずかの粥と野菜汁を楽しみに酷寒(マローズ)の中での屋外作業をやり過ごす日々。「この野菜汁の一杯こそ、今の彼には、自由そのものよりも、これまでの生涯よりも、いや、これからの人生よりも、はるかに貴重なのだ」の一文にキュン死しない社畜はいないと断言できる。これだけであと十年は社に飼い殺されることができる勢いだ。

 もちろん、「キラキラしねえか、キラキラしねえか!」の台詞は、作業免除になる大吹雪(ブラーン)の到来を知らせる粉雪を祈願してのものに他ならない。「閏年のために、三日のおまけがついたのだ……」を超えるシニックを私は寡聞にして知らないが、貴様らはそうじゃないのか?

 そしてドストエフスキー以降のロシア文学のお約束とも言える、キリスト教徒からの神の愛に関する説法を黙って聞いたあげく、ビスケットを一枚あげちゃうんだぜ? しかも「腹の皮がさけるほど飲む」飽食の本邦とは違って、生きるためにギリギリのカロリーをしか与えられないラーゲリでのできごとなんだ!

 ああ、ワーニャかわいいよワーニャ!

 @nobody やっぱり! ぼくもなんかすでに死んだ人の追憶をたどる気持ちにさせられます! アリョーシュカはやっぱり死んだんだろうな、微笑みながら死んだんだろうな、とか。

 @nobody おしい! 「収容所群島」じゃなくて、初期作品の方です!

 @nobody す、すいません、うちの祖父はなんか兵役免除だったみたいで……すいません、こんな末裔が生きてて、今の繁栄を享受してて、本当にすいません……!!