猫を起こさないように
無職転生
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アニメ「無職転生」感想

 (ウマ娘の)イベントとレースをすべてスキップして育成を周回する傍らで、アマプラの「無職転生」をぜんぶ見る。評判どおりアニメの出来がいいし、長めに尺を使ったストーリーの転がし方がいいし、何より丁寧にファンタジー世界として舞台を描写しているのがいい。ただ、これらの要素が良いだけに、「転生」って要素いるの?と思ってしまった。現代人の自我でツッコミながらじゃないと受容できないほどハイファンタジーが廃れてしまったのか、はたまた「前世の主人公」と同じ立場の人物を視聴者に想定しているのか、どっちなんだろう。後者だとすれば、すでに現実では手遅れになった自分をファンタジー世界内で心身ともに「育て直している」という視点が否応に入ってきてしまう。そうなると、正しい生育史と社会状況さえあれば自分はうまくやれたというファンタジー、つまり「環境で魂はたわまない」というファンタジーが二重に入ってきて、すごく成長譚としての受け止め方を濁らせる感じがある。実は原作がこの点に意識的で、続くシリーズで「転生」という設定が話の根幹に関わってきて、何らかの形で正しく解消されるなら何も言うことはありませんけど。

 ツイッターで好評を見かけたから視聴しましたけど、タイトルは完全に内容と乖離していますよね。魅力的なファンタジー作品なのに、転生にまつわる要素がリーチすべき層への参入障壁になってる気がします。あと「性の問題を正面から扱ってる!」みたいな評も見ましたが、「そうかあ?」って感じです。

 テキトーにしゃべりますけど、日本のファンタジーはドラクエ由来で一人称、西洋のファンタジーは歴史由来で三人称だからじゃないですかね。ハイファンタジーにはNHK大河ドラマ的な視聴の仕方が求められるのに受け手にその準備が無いか、そもそも想定される観客には届いてないっていう。

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