猫を起こさないように
デフレ
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ゲーム「都市伝説解体センター」感想

 一時期、タイムラインに頻々と流れてきていた都市伝説解体センターを、1ヶ月ほどーー4話あたりでダルくなって一時中断したので、実質1週間ーーかけてようやくクリア。人生におけるアドベンチャーゲームのベスト3を挙げるならば、順に「ファミコン探偵倶楽部2」「オホーツクに消ゆ」「新・鬼ヶ島」となる昭和キッズにとって、本作をスルーするという選択肢は、あらかじめうばわれていたのです。このゲーム、「京極夏彦と逆転裁判の影響下にある、ファミコン時代のADV」といった見かけなのですが、ケレン味のあるキャラクターのわりにシナリオと、なにより各話のオチが弱く、読みすすめるのに難渋しました。作中の人物より先に真相に気づいても、ストーリーを進めるには、いにしえの「コマンド総あたり」しかなく、タイパ重視の令和キッズは、たいそうイライラがつのったことでしょう。また、本作の物語フォーマットは、安楽椅子探偵が女子大生の助手を使って事件の調査を進める、ミス・マープル的なものなのですが、解決編はいずれも真犯人の同席する警察不在の場において、丸腰の女子がケイタイのスピーカーで真相を聞かせるというものになっていて、昨今の陰惨な通り魔事件などを見るにつけ、かなり無神経なリアリティラインだなとは感じました。もうひとりの女性助手が、男性からの物理的な反撃を鎮圧する場面もあるにはありますが、一種のありえないロマンと自覚しながら、戦闘美少女を愛でていた時代はとうに過ぎ去り、「女性は男性に、物理的暴力ではかなわない」という単純な事実を忘却させるフィクションが横行しすぎていることは、すでに現実へ悪影響をおよぼしているような気がしております。

 あまり肌にあわない物語を読了することができたのは、ひとえにあざみちゃんのアホかわいさと、1話完結のオムニバス形式をとりながら、各話のつなぎで明かされる大きな陰謀のほのめかしでした。そこで流れるジャパニーズ・ラップにはヘキエキさせられましたが、ドット絵の見かけそのものがトリックにつながっているのだろうと、一日の終わりに寝落ちしそうになりながらも、チマチマと読みすすめていったのです。ネタバレ全開でクリア後の感想を述べますと、ゲーム内のすべての要素がポートピア連続殺人事件でたとえるならば、「犯人はボスとヤス」という大オチを演出するための仕かけになっていて、ずっと40点ぐらいーーあざみーのかわいさ加点がなければ、赤点レベルーーだったのに、ラスト20分の印象だけで80点に化け、しばらくして余韻がぬけると60点ぐらいに落ちつく、「剣術勝負での飛び道具」みたいな作品でした。ドット絵による世界認識そのものがフェイクで、途中から高精細なCGに変じてボイスがつく方向の変化を予想していたので、この表現形式が「ボスとヤスが同一人物」であることの可能性を、読み手に露ほども気づかせないためのギミックだったのには少々、肩すかしの感じはありました(よほどの役者を見つけないと、実写化はむずかしいかもしれません)。

 あと、警察上層部の自宅にかけられた絵の価格が5万円なのを、やたらと「高い、高い」とさわぎたてるので、なにかの伏線かミスリードかと思っていたら、特にそんなことはなく、デフレ時代におけるインディーズ・ゲーム制作者の、個人的な金銭感覚を表出しているだけでした。そもそものところ、このゲームの価格が2,000円以下というのは相当におかしな値つけで、5,000円以上とってもぜんぜん納得できる内容だと思うんですよ(その場合、ここまでバズらなかったかもしれませんが……)。我々はもっと自信をもって傲慢になり、おのれの才能に対してもっとカネをよこせと、声高に世間へ主張していくべきじゃないですかねえ。以上、四半世紀におよび無料でインターネットにテキストを提供し続けている管理人からのボヤきでした。