猫を起こさないように
王寺
王寺

漫画「奈良へ」感想

 「奈良へ」読む。奈良県北部在住なので物語の舞台が生活圏と重なり、ほぼすべてのコマのロケーションがわかって、メチャクチャ面白かった。「奈良高やったら大丈夫やろ」みたいな、下手な帝大より公立トップ校の方が通りがいいのも、わかるなーって感じ。

 県民ではない人物の感想は巻末の解説を読んでいただくとして、奈良の住人(非ネイティブ)から見ても、土着の方々(ネイティブ)の無意識に流れているナチュラルな差別意識の感じが、とてもうまく描かれていると思いました。「奈良町ってオシャレですよね!」「あんなもん、花街やないの。三条通りから向こうに子ども行かしたらあかんで」とか、「王寺って日本一住みよい町なんですって!」「あんなもん、××業者の溜まり場やで。すぐ水つかるし、住むとこやないわ」とか、呼吸するように出てきますからね!

 これこそ、私がネットを「世界の半分」だと感じる理由であるし、いくら「正しい」と思われる「進歩的な」場所へと目盛りを指す矢印を押していったところで、手を離せば土着の方が座っているあのゼロ地点へと向かって、自動的にジワーッと戻っていくと感じるわけですよ。それに、目盛りの矢印を押してる方々って、末代が多いように見えるし……って、アンタもだいぶ意識を奈良県に毒されとりますな!

 観光向けに作られた奈良のイメージではなく、粗野で猥雑な「卑」の部分を味わいたい向きに、「奈良へ」、超オススメです。