猫を起こさないように
残酷な天使のテーゼ
残酷な天使のテーゼ

アニメ「エヴァQ IMAX版」感想その1

 エヴァQのアイ・マックス版、行ってくる。制作者の想定する最高の状態でシンエヴァを迎えるためには、そして駄作だった場合に言い訳の余地をいっさい残さず、完膚なきまでにディスり上げるためには、これは必要な苦行なのです。たとえ0.003の違い(見た目をそろえるだけの、意味のないバージョン情報!)であったとしても、たとえ最後の予告編30秒が新作されてるのを見るためだけになったとしても、こじらせたファンとして1万円(2,500円のチケット代と90分を時給計算で7,500円)を捧げることになんのためらいもございません。

 ラわーん、エヴァQアイ・マックス版の感想をEvernoteで書いてたら、間違って上書き更新してぜんぶ消えたよう! 無料版だから履歴から復元もできないよう! もしかして、これがエバーの呪縛?(違います)

 よし、根性復元(記憶を頼りに一から打ち直し)したぜ! さすがエヴァ、怨嗟が深いあまり、ほぼ一字一句たがわずに復元できたぜ!

 んで、エヴァQアイ・マックス版、見てきた。片田舎の映画館で、鬼滅の刃と交互にアイ・マックスの箱を使ってて、少し前までの熱気が残っているようでしたが、私を含めて観客は数名しかおらず、感染リスクの心配だけはまったくない状態でした。結論から言えば、「旧版と全然ちがう!」みたいなタイコ持ち記事もあるようだけど、もし過去に劇場で見たことがあるならば、わざわざ行く必要はありません。巨神兵がオミットされて現れないのはすごくよかったし、冒頭8分だけは強い思い入れがあるので体験がリッチになった気がしたけど、それ以外の部分では旧版との違いをほとんど感じることができませんでした。エヴァQは劇場・ビデオ・テレビで軽く二桁回は見てるけど、ほのめかされていたシンエヴァに向けた台詞の変更なども、なんかトリプルセブンがスリーセブンになってた(パチ屋への配慮?)ぐらいで、まったくわかりませんでした(将棋はまだ「打って」ました)。もっとも、あの巨大IPであるエヴァを解釈違いで他ならぬ原作者がここまでブチ壊せることに、改めて感心はしましたけれど! 30秒の次回予告が新作(もちろん、8+2号機なんてどこにも出てこない)されてて、公式がスクリプト・バレしてるのでもう言っちゃいますけど、「父ゲンドウと対峙する碇シンジ」のナレーションのところーー「初号機パイロット、碇シンジです!」のシーンにクリソツーーで作画がエヴァ破のキャラデザで行われていたことには興奮しました。この5秒足らずだけでも、1万円をはらう価値はあったと思います。テレビ版のエヴァって放送はスタートしたのに制作が間に合ってなくて、19話をスタッフ全員の総力戦で作り上げたところで絵的には力尽きて、そこからはバンク・マシマシの精神世界に突入せざるを得なかったという話を聞いたことがありますけど、初号機の覚醒までは規定の線路を走ってたのに、そこから以降は語るべき物語が消滅してしまうという一種の呪いを、新劇でも引き受けちゃった感じがするんですよね。この作画の違いは、英語版のサブタイトル”thrice upon a time”ーー過去に三度(みたび)ーー通り、エヴァQ世界の終局から過去に巻き戻るか平行宇宙へ移動するかして、19話における初号機覚醒から三度目のストーリーの語り直しが行われることを示唆しているんじゃないでしょうか(早口)! 新の「”ヱ”ヴァンゲリ”ヲ”ン」が旧の「エヴァンゲリオン」へと合流・収束すると考えれば、「シン・エヴァンゲリオン」というタイトル表記も平仄が合いますね。テレビ版企画書(約束の地、アルカ!)の最終話「たったひとつの、冴えたやりかた」にあった「ラストは大団円」のイメージが、今度こそ具体的に描かれることを期待しています。

 あと以前(十年ぐらい前)、ツイッターだか2ちゃんねるだかで音大生を名乗る人物が「アニオタどもは曲の良し悪しの判断がつかず、映像と紐づけてしか聞けない。ヤツらは音楽の素養が無いから、純粋な楽曲の評価ができない」みたいなことを語ってて、私なんかは図星を突かれてショックを受けたのをいまだに覚えてるんだけど、エヴァQのエンドロールで流れる「桜流し」はこの指摘の逆になってるなあと思いました。楽曲は素晴らしいのにヘンな映像と紐づいてしまって、パブロフの犬状態で曲単体を平静な気持ちで聞くことは、もはやできないのです。「桜流し」、エヴァと関係ないところで単独で作られて、エヌ・エイチュ・ケーに取り上げられたりしてたら、それこそ「花は咲く」みたいな幅広い歌い継がれ方をしてたような気がするんですよね。カントクがUTD氏にエヴァQの脚本を渡して、「あなたもクリエイターなら、震災の悲劇に表現で応えるべきです」と言ったとか言わなかったとかいう話があるけど、さすがカントク(cunt-Q)、なんて傲慢なんでしょうか! あのね、エヴァQこそ「桜流し」という名曲になんとなく言及しにくくさせて、マイナー墓場へと葬り去った元凶アニメですよ! なので今度こそ「One Last Kiss」が、アニオタどもが楽曲の良し悪しもわからないまま、感動的なシーンの映像と紐づけて何度も聞くような曲になることを心から祈っています。

 え、「残酷な天使のテーゼ」はワンチャン流れますかね、だって? うーん、テレビ版から25年の歳月を経て、私の中で「残テ」はワンピースと同じカテゴリ(ワンチャンなんて言葉を好んで使う低偏差値ヤンキーの領域)に入ってるので、個人的には流れてほしくないかなあ。

追悼「シン・エヴァンゲリオン劇場版:呪」