猫を起こさないように
仕事
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ゲーム「艦これ2019秋イベント」感想

 艦これのイベントは、仕事にそっくりだ。

 前のイベントのダメージから完全には回復しないまま次のイベントが始まってしまうところなんか、仕事にそっくりだ。

 一隻の大破で連合艦隊を撤退させるとき、チーム力は最も弱い者のレベルになるというマネジメントを思い出させるところなんか、仕事にそっくりだ。

 敵の旗艦をあと一撃にまで追い詰めながら撃沈を逃したとき、部下のミスで大きな契約を逃したことを思い出させるところなんか、仕事にそっくりだ。

 イベントの終了時期と残り資源から逆算して難易度を下げるとき、納期と天秤で質へ目をつぶる決裁を思い出させるところなんか、仕事にそっくりだ。

 イベント海域をクリアしたときの「もうプレイしなくていい」という解放感は、オフィスで迎える納品後の朝の虚脱感を思わせて、仕事にそっくりだ。

 そして毎回、「もう辞めよう、もうこれで終わりにしよう」と思うのに辞められないところなんか、仕事にそっくりだ。

 艦これのイベントは、仕事にそっくりだ。

 (何らかの激情に駆られて握ったこぶしを激しく交互にキーボードへ叩きつけながら)ウオアアアアーーッッ!! 小鳥猊下a.k.a.キーボードクラッシャーであるッ!

 社畜には、イベント開始と同時に攻略へ取りかかることは、ほとんど不可能である。時間も資源も圧倒的に足りず、試行錯誤の余地はあらかじめ奪われている。なので、先行者のクリア編成と装備を丸々コピーすることからイベントが始まる。慢性の鬱病で、音と光がとてもつらい。特にキンキンした若い女性の声が耳にさわる。モニターの明るさをできるだけ低減し、音声設定からBGMとVoiceをあらかじめ殺しておく。SEを切らないのは、戦闘終了とギミック解除の音を聞き逃さないためだ。なぜなら量子力学の観測問題ーー注視しながらプレイすると必ず道中大破し、ボスにはカットインせず撃破を逃す現象ーーを回避するため、攻略中は画面を他のウィンドウで覆って見えないようにするからだ。つまり私にとって、クリアまでの行程はセガサターンのリアルサウンドとほとんど変わらないのである。リアルイベントにもいっさい興味はないし、なぜプレイを続けているのか自分でもわからない。たぶん、アルコールと同じ類の耽溺なのではないかと思う。

 たったいま、甲甲乙乙乙乙でクリアしたお……もう年内はプレイしなくてすむお……ほんとうに、ほんとうにうれしいお……不幸のない状態を幸福と呼ぶんだお……(バスタオルに顔を埋める)