猫を起こさないように
ワールドイズマイン
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漫画「むこうぶち(20巻まで)」感想

 無限焚書のセールで購入していた「御無礼」の漫画をボツボツ読んでる。あまりの面白さに何度か電車を乗り過ごしたため、最近では業務に影響の出ない仕事帰りに読んでる。これだけ面白いのに、麻雀を知らないと本当の意味では楽しめないのが、なんとも歯がゆい。麻雀漫画の名作って、エロゲーのそれと同じ宿命を持ってると思うんですよね。口コミでの広がりを期待しにくく、一般の客へ向けた伝播もある程度までで天井がついてしまう感じ。本当に熱狂的なファンだけが声高に宣伝していて、「すごく好き」くらいまでの客は反社や変態と思われたくないので、おとなしく黙ってる感じ。まあ、小鳥猊下が置かれてる状況もまさにこれなんですけどね! 本シリーズの感想をいろいろ眺めていると、「主人公の正体は、いつ明かされるのか?」みたいなのがあって、そのモンモウ教徒ぶりに心底ビックリして、腰が抜けました。あのね、この主人公は物語を動かすための無人格的な装置であって、だからこそ彼に翻弄される人々のドラマが際立つんじゃないですか。もっとも、借金などの窮状に陥った人物の独白から、主観カメラで雀卓に座る黒服の彼が映される展開は、繰り返されるうちにほとんどギャグの領域ーー脳内に響く「デデーン、アウトー」の音声ーーに突入していくのですが!

 他の麻雀漫画で言えば、不朽の名作であるノーマーク爆牌党も、物語後半の闘牌において「爆岡が何を考えているのか」を明かさなかったからこそ、そのミステリアスな戦術をめぐって高いドラマ性を保つことができたのです。「何を考えているかわからない主人公」つながりで、ザ・ワールド・イズ・マインのことをいま思い出しました。総体としては空前絶後の傑作だという前提で話を聞いてほしいのですが、最終回付近でモンの生育史を詳細に語ったあげく、ジョン・レノンを模した「虐げられる側」のアイコンにしてしまったのは、ストーリーを終わらせるためとは言いながら、まずい展開だったと感じています。一貫して「物語を駆動する、正体不明の無人格な何か」であり続けたモンの正体が、「幼少期のトラウマから殺人とアオカンへの指向を植えつけられた、傷ついた子ども」だったというのは、ありきたりでドッちらけな種明かしでした。もちろん、それを含んでさえ、人類を絶滅させることで作中に繰り広げられた数々の殺人を相対的に無化するという結末は、人が持つ宿業の解決として未だに圧倒的なことは認めざるをえません。

 最後に話を「御無礼」へと戻します。まだ20巻ぐらいまでしか読めてないのですが、長期連載の果てにネタ切れして、主人公の過去編へと手を出すようになる前に終わっていることを心から願っています。

 漫画「むこうぶち(56巻まで)」感想