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映画「クライ・マッチョ」感想

 クライ・マッチョ、見る。俳優人生の最晩年を迎えた齢91歳のクリント・イーストウッドによる、もしかすると最後かもしれない演技を愛でるドキュメンタリーとしては素晴らしいですが、一般的な映画として視聴すると彼が主演でなければ劇場公開どころか、撮影にすら至らなかったレベルの内容でしょう。この脚本が想定する人物像を演じるには、クリント・イーストウッドは20歳ほど年を取り過ぎています。10代の少年が想像するより身軽だったり、館の女主人に閨で恥ーー90代でチンポが勃つかいな! ーーをかかせたり、パンチ一発で暴漢に膝をつかせたり、60代のメキシカン未亡人とラブロマンスへ至るには、せめて70代前半でなければ成立しません。

 カメラワークとカット割りと、たぶんスタントでごまかした荒馬を乗りこなすシーンもそうですけど、スロー極まるクリント・イーストウッドの動きがもう本当に高齢のおじいちゃんで、そもそものところ台詞が言えてなかったり、別の意味で終始ハラハラさせられっぱなしでした。前作の「運び屋」ではまったく違和感を覚えなかったのに、わざわざマッチョをテーマにした脚本で当て書きなんかするから……。本作はここ5年、いや10年で最大のミスキャストのひとつであり、「映画好きなら、これをこそ褒めるべき」みたいな風潮に流されて、好意的な感想を述べる映画ファンとやらの盲目さには、もはやあきれかえるしかありません。

 あと、アメリカの1970年代におけるメキシコって、本邦のある世代にとってのノースコリアみたいなもんなんですかね?