猫を起こさないように
バスタード
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ゲーム「FGOセイバーウォーズ2」感想

 ハーロ・イーン(スクランブル交差点に蝟集するスカムどもを光線で右から左へなぎ倒しながら)! 小鳥猊下であるッ!

 エフ・ジー・オーの新イベント、エス・ダブユー・ツー、たいへんに面白うございます。常ならば時限式にしそうなところがそうなっていないのも、たいへんによろしゅうございます。さすがマッシュ(SW2準拠の呼び名)、感性の合うファンの声にはキチンと耳を傾けてくれる……(マーク・チャップマンのまなざしで虚空を見つめながら)。

 メリハリのある展開に、キチッとした文章でクスッと笑わせてくれる、正しいギャグ時空。実のところ、シリアスは少し文章が甘くてもそれなりに読めてしまう。だが、ギャグはそうはいかない。おふさげにこそ、確かな文章力が必要なのです。

 ただ、キャットが私にはそろそろ辛くなってきた。黒タイツの例の芸人、ホニャララ・テン・トゥー・スリーみたいに、行動の読めないキチガイ芸で売ってきたのが、登場を繰り返すうち、次に何をするのかわかってしまうのに似ている。嫌いじゃないけど痛々しくて、チャンネルを変えてしまう感じ。

 だが、これは批判ではなく個人のつまらぬ感想であり、エス・ダブユー・ツー、本編をのぞいてはひさしぶりの、エフ・ジー・オーの名に恥じぬハイ・クオリティ・イベントであることを俺様が保証しよう! 惜しむらくは、「よーし、今回はパパ、大目に課金しちゃうぞー」などとマン札のビラビラ、いや、マン札をビラビラさせていたところ、溜まっていた呼符と無償石で新キャラを2体とも引けてしまったことだ。

 マッシュ、すまぬ、すまぬ……ハーロ・イーン(スクランブル交差点に蝟集するスカムどもを光線で左から右へなぎ倒しながら)!

 ちゅーる(スベッたギャグが場を冷やし熱力学的死を迎えたことを表現する擬音)! 小鳥猊下であるッ!

 エス・ダブユー・ツー、ストーリー部分クリア。時限式への批判に対して、大量のアホ毛と賞金首を進行遅延として用意してきたのは、ゲーム的回答でとても良いと思いました。ラストでまた、いつものとんち合戦が始まるんだけど、女神の善悪に関するくだりは年を取ったせいか、上質な語り口もあいまって、ひどく心を動かされた。「人よんで」の傍点も、すごくいい。

 ただ、最後の最後、同格であるはずの存在同士に優劣が生じるくだりで、いつものファンガスなら「五十億と十四年、神ではなく人として育てられたわずかな年月がアナタと私を分けた」みたいな内容で、人間賛歌を絡めたネッチリとしたアロガント・ゴッド・ディスをおッぱじめたはずである。ワクワクしながら、普段は強固に締め上げている涙腺を緩めて待ち構えていたところ、しかしその期待は完全に肩すかしをくらい、至極あっさり風味で話を切り上げられてしまった。この部分だけは、濃厚豚骨ラーメンを期待して店に入ったら、戦時中のすいとんが出てきたみたいなガッカリだった。常のファンガスなら、間違いなく書いたはずの展開であり、日常生活ではありえない貴重な情動失禁のチャンスを逃し、寸止めにされた射精のような悶々とした不満をつのらせている次第である。エピローグのテキストなし紙芝居から推測するに、締め切りありきでライティングを追い立てられたに違いない。

 あのね、エフ・ジー・オーの最大の価値はファンガスの最新テキストーーつまり、リアルタイムの彼の思想ーーが定期的に読めることで、その他はいわばビッグワンガムの菓子部分みたいなもんでしょ! 周囲の悪い大人たちは目を覚ましてもう一度その原点に立ち帰って、すべての作業工程にファンガスのテキスト・クオリティを優先させなさい。猊下との約束だぞ!

 あと最近、電子書籍で「もっこり半兵衛」を読んでるんだけど、目を覆うような下ネタから、人間の本質へ鋭角に切り込む落差に、年とったせいもあると思うんだけど、ひどく涙腺を刺激されるんだよね。たぶんnWoと同じく含羞が理由の、「ターちゃん」「狂四郎」の昔から変わらない手法で、そのエログロさ加減からNHKの時代劇で原作に取り上げられるようなことは決してないにせよ、狭いがゆえに逆説的に、ある感性を持った人々にとってはより深い普遍へと通じていくように思う。今回のイベントを通じて、ファンガスの手法にも同じ側面があると感じたことを最後に付け加えておきたい。