猫を起こさないように
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忘備録「ベネディクト16世との思い出」

 これでインタネトー上に光の猊下と闇の猊下が揃ったことになる。互いの存在を強く意識してはいるが、バベルの呪いから未だリプライには及んでおらぬ。もしそうなれば、光と闇の対消滅に、現世は無へと帰すだろうがな。それも世界の選択か。ラ・ヨダソウ・スティアーナ。

 質問:ククク……ついにローマ法王が退位を決意したようだな……。しかし、不用意なツイッター参戦がその引き金となったことを看破した者は多くあるまい……。奴らにとって決して世間に漏れてはならぬ秘中の秘……すなわち、コンスタンティヌスの寄進状に裏書きされた、光と闇の両猊下の禁じられし融合による、実存世界の対消滅……!! 小癪なヴァチカンの都市結界による援護があったとは言え、ベネディクトの奴め、この光の猊下との精神念波を通じた千日戦争を、命冥加に凌ぎきりおったわ……!! 敵ながら天晴れな奴よのう……観念世界からの侵略を水際で防いだ、正に世の英雄というわけだ……。ククク……教皇選出のコンクラーベがこの千日戦争、すなわち日本語の「根比べ」を語源に持つと知る者は、もうシスティーナにも限られておろうがな……。(次第に小声で)しかし、あのヘテクロミアの枢機卿め……なるほど、面白い……きゃつが17世というわけか……!!(kotorigeikaさん)

 回答:聞こえていますか? あなたの心に直接語りかけています。この類の妄想を三十代で保持し続けているとは、さぞやおつらい現実をお過ごしのことでしょう。しかし、あなたのそれは借り物の言葉と設定に満ちており、オリジナリティの欠片も見当たりません。この類の妄想は、素晴らしいフィクションへの昇華でマネタイズできる才能が無いのなら、早々に放棄してしまうのが賢明です。さもなくば、悲劇的な結末が待っていますよ。ねえ、聞いてるの? 直接心に語りかけてるんだから、耳ふさいだってムダよ?

アニメ「あしたのジョー2」感想

 過度なアルコール摂取にしばしば意識を喪失する、いわゆる寝正月の最中、西方蛮族提供の流感みたいな名前の動画配信サービスに、「あしたのジョー2」が追加されているのを発見し、長い前髪で片目を隠しながらジャージ姿の体育座りで視聴を行う。途中、家人が無神経に部屋の扉を開け放ち、「マア! また暗い部屋でテレビ見て! 目が悪くなるわよ! 前髪も切りなさい!」などと甲高い声でまくしたてるので、「うるせえババア! ブッ殺すぞ! あと、お酒買ってきて!」と絶叫したりした。

 最終話近く、少年鑑別所時代のジョーの仲間が喫茶店に集い、昔のことをふりかえるシーンがある。うろ覚えの記憶で再現すれば、こんな感じだ。

 「ぼくたちは変わってしまったけれど、矢吹丈だけがあの頃の青春のままにいる。それが、たまらなく嬉しいんです」

 「へえ……おまえ今、小説家とか、学校の先生でもやってんの?」

 「いいえ、地方の工場の、ただの工員ですよ」

 かつては気にも留めなかったこのやりとりが、いまでは強く胸に迫る。おのれが矢吹丈その人ではなく、矢吹丈のことを語るだれかであることを知っているからだ。ウルフ金串の回といい、元全日本チャンプの回といい、昔はものをおもはざりけり、年齢を経た現在だからこそ感じられる哀切の数々に、成熟を拒否し続けてきたこの身が、遠くまでよろよろと、なんとか歩いてきたことに気づかされた。物語後半へ進むにつれて力尽きてゆく作画と演出も、ジョー自身の崩壊とリンクしているように感じられ、涙なしには見ることができない。

 「へへ、ほんと、テキストサイトなんてのは運だよなあ。たった一発のラッキーヒットですべてが決まっちまうんだから。あのとき、あのラッキーヒットさえなけりゃ、メジャーのスターダムにいたのは、俺だった。俺の方だったんだ」

 あのころ、ぼくたちはみんな、矢吹丈になりたかった。