原神の最新バージョン6.2、伝説任務と魔神任務をともにクリア。始まったばかりと思っていたナド・クライ編もすでに序盤を越えて中盤へとさしかかっており、「博士」が「少女」の拉致を試みる事件で、物語は劇的にいったんの幕となりました。つくづく感じるのは、本邦の大手ゲーム会社が中高年のファンにむけて、ポキモンやらエフエフやらメガテンの続編だか派生作品だかの制作へしこしこと数年をかけた上に、シリーズのお約束と前例踏襲に満ちた自己模倣きわまるシステムと、スタークリエイターの主観世界を回遊ーー教祖の気がくるっても、信者は指摘どころか気づくことさえできないーーするようなストーリーによる低品質の仕上がりにもかかわらず、間遠すぎる供給ゆえに冷えた界隈がわずかばかり熱を帯びる状況を見るときの、島国的な息ぐるしさです。他方で大陸産の原神は、日本ファルコムなら30年、福本伸行なら300話ぐらいに薄く薄く引きのばすだろう話を、リリースからわずか5年で語りきろうとしていて、特に今回のドゥリンを描いた伝説任務には、現在のホヨバ幹部たちの思考が色濃く反映されているように感じました。
「物語が語り終えられると、登場人物たちの運命が定まる」という考え方がそれで、いま世界でもっとも多くの読み手を持つ創作者によるストレートかつ赤裸々な心情の吐露に、目からウロコが落ちた次第です。運命の確定を回避する手段について、「物語の登場人物に語り手を移せば、作り手がいなくなったあとも、永久に物語を続けることができる」と結論づけるのですが、これは前バージョンへの感想でも指摘した、本質的に不要の大蛇足である原神ツクール「星々の幻境」を導入するにいたった初期動機を言い当てているようにも思えます。もしかすると、「物語を語り終えないことで、登場人物の運命を定めない」という無意識の希求は、長編型の創作者にとって普遍的な指向性なのやもしれず、ガラスの仮面や王家の紋章やグイン・サーガやバスタード!の顛末は、終わりたがる物語の自走性と終わらせたくない作者の欲望が綱引きをした結果、ある時点でたがいの力が均衡して、完全な静止をむかえた状態だったのかもしれません。だとすれば、未完となったはずのベルセルクを残された作画スタジオと作者の友人が終わらせようとしている例の取り組みは、登場人物たちに「造物主ではない存在による、運命の確定」を強いる行為であり、本来的にゆるされない性質のものであるような気がしてきました。
だいぶにそれた話を原神へともどしますと、メインストーリーであるところの魔神任務は、達成率のともなう本マップの追加は無いまま、フルボイスによる台詞のかけあいとムービーだけで進むスターレイル形式を、またしても踏襲しております。しかしながら、生粋の萌えコションである小鳥猊下の本バージョンに対する満足度は、きわめて高いとお伝えせねばなりません。なんとなれば、全体として「少女」の去就へとフォーカスした展開になっており、鈴をころがすような愛らしいお声を聞きながら、そのおみ足とご尊顔をバグッた距離感でながめる栄誉にあずかれるばかりか、デートイベントと見まがう夏祭りの屋台めぐりに同伴させていただくサービスまであるのだから、チンケなマップの追加なんてメじゃない、夢の旅人として真実の愛をさまよい続けるための、広大な心のMAZEをあたえられたと言っても、過言ではないからです(どこの天空戦記やねん)。また、「世界に拒絶され、生への実感を失っていた者が、仲間たちに名前を呼ばれることで、世界との接続を回復する」という組み立ては、ちょうど初めての恋愛を運命だとカンちがいするように、家庭に問題をかかえただれかが町の愚連隊に居場所を見いだすように、鬱屈をかかえた思春期の若者たちの心に、強くひびく内容ではないかと思いました。
いよいよ年始には、プレイアブル「少女」(エロい表現)がガチャに投入されそうなので、今年のクリスマス・ディナーはキャンセルせねばならないし、正月には遺伝的類似をともなった存在たちから、泣く泣くお年玉を取りあげる覚悟を決めるべきでしょう。まったく、ホヨバの世界戦略にふりまわされる家族が、不憫でしょうがありません。あと、空の軌跡がいったい何度目だかわからないリメイクをされる(た?)との記事を目にしましたが、本邦のニッチきわまる大長編シリーズ群は、そろそろホヨバの狡猾な手口を見習って、単一タイトルのもとにオンラインで続編を順次リリースする形へと、再構成するべきではないでしょうか。英雄伝説は2まで、テイルズは初代ファンタジアまでなロートルにとって、いまさらどの順番でプレイするかを調べるのも億劫ですし、サーバー管理などのリスクもあるのでしょうけど、少額ながら継続的な課金をお約束しますので、スターレイル方式で既存の物語が時系列に提示されていくことを希望します。