猫を起こさないように
雑文「Update of Romancing S…TARRAIL」(近況報告2024.11.7)
雑文「Update of Romancing S…TARRAIL」(近況報告2024.11.7)

雑文「Update of Romancing S…TARRAIL」(近況報告2024.11.7)

 ロマサガ2七英雄の逆襲、1周目をノーマルでクリア。プレイタイムは50時間ほどで、かなりガッツリと楽しませてもらった計算です。いにしえのスクエアにおなじみの、踏破に軽く数時間はかかる「ラストダンジョン」という名前のラストダンジョンを進軍しながら、「高速ナブラ」とか「乱れ雪月花」をはなっていると、未来への焦燥と自棄の放埒が同居していた学生時代のあの午後に、精神がタイムスリップするような感覚をいだきました。ほぼほぼ技と術は閃きつくしており、もはや作業としか呼べない最適化された行動のくり返しなのですが、それに安らぎをおぼえるのは、もしかするとファミコン時代のコマンド式RPGが、当時まだ病名の存在しなかった精神類型を持つ人々にとって、ある種のセラピーとして機能していたからかもしれません。カウンセリング室のカウチに深く身を沈めるような穏やかな時間はやがて終わりをむかえ、ラストダンジョンを永久に周回することへ後ろ髪を強く引かれながら、最終バトルへと突入してゆきます。スーファミ版は、たしか七英雄をたおせないまま投げだしたように記憶しているので、じつに30年越しのリベンジ(!)というわけです。まず、ラスボスの外見を描写しておくと、宙空に浮かんだ虹色ミートボールから七英雄の上半身だけが次々に生えてくるという、あらためて3Dモデルで見せられると、なかなかに気のくるった造形となっています(ただ、全員が生えそろったあとに、「七英雄」のキャプションが出現するところは、当時の1枚絵を再現していて、メチャクチャかっこいいです)。

 ドキドキしながら高火力技を連続で入力してゆくと、危なげなくゲージを半分まで削れてしまい拍子ぬけしていたら、オリジナルには存在しなかった「七英雄の七連携」による反撃をくらい、一瞬でパーティを壊滅させられたのには「さすがロマサガ2」と、落胆とも安堵ともつかない深いため息がもれました。調べても調べても、まともな攻略情報にたどりつかないのは、長い歳月を煮つめたスーファミ版の攻略サイトのせいか、数年前に発売されたリマスター版のせいか、はたまた本作が25万本ほどしか売れてないせいかはわかりませんが、ここで少し脱線をして、あとから来る人たちのために、七英雄の私的クリア手順を残しておくとしましょう。ラストバトルのオススメ陣形はもちろん、他をすべて無意味にするほど強力なラピッドストリームです。術役は2枚用意して、それぞれ「レストレーション」と「光の壁LV.2」を覚えさせ、毎ターンの詠唱を分担しましょう。さらに、アタッカーをふくめて「リヴァイヴァ」持ちを3枚用意して、敵の攻撃が弱かったターンに術役優先でかけてください。攻撃技は「乱れ雪月花」と「千手観音」がよく通るようです(「無明剣」は高ダメージですが、フィールド属性によるボスの回復を誘発するため、トータルでマイナスになります)。言うまでもないですが、「テンプテーション」と「ソウルスティール」の見切りを全員にセットしておくのも、お忘れなく! あとは、七連携によるパーティ半壊から、うまく態勢を立てなおせれば、勝利は目前です!

 閑話休題。ロマサガ2リメイクの評価をクリア後の視点からざっくり申しあげますと、「ゲームシステムとバランス調整は最高」「干支2周ほど遅れた品質のグラフィックは最低」「新規テキストはふんぷんたる臭気をはなつスカム」とでもなりますでしょうか。オリジナル版の七英雄は、ゲーム内でほとんど情報が示されないこともあり、謎のベールにつつまれた、非常にミステリアスな存在でした。今回のリメイクには「七英雄の記憶」として、「英雄たちは、いかに人類へ弓を引くようになったか?」の舞台裏を描写する15本の連作ムービーが用意されているのですが、これがまあ、本当にどうしようもない、もっとも控え目かつ上品に表現してさえ、カス・オブ・カスみたいなシロモノなのです。彼らが怪物に身をやつしてまで打倒を試みた相手が例の女王アリーーおそらく、エピローグにおけるリソースの都合ーーだったり、陰キャのクジンシーに対して陽キャの男女6名でイジメ的な言動をくり返したり、原典ではあれだけ魅力的に思えたキャラクターたちの個性を、まるで老婆の娼婦を白日の下に引きずりだすかのように、太陽光に劣化したプラスチックがボロボロとくだけるように、おまえの大切な記憶とやらは「くだらない、子どもだましのゴミ・オブ・ゴミ」だったのだと、執拗に上書きしてくるのです。きわめつけは、7人がアリの討伐から徒歩(笑)で凱旋したさいに、ひとりの子どもによる「7人のヒーローたちだね!」という発言を聞いた大人たちが「七英雄!」を連呼しはじめるシーンで、怒りのあまりあやうくコントローラーを画面に投げつけかけました。オリジナルでは、古代の戦争や各地の神話や古典の戯曲に由来する重厚な言葉だった「英雄」が、軽々しくもペラッペラなマーベル由来のアメコミ概念に置き換えられてしまってるんですよ! 中卒・高卒が構成員の大半を占めるかつての社会では、英単語はハイセンスな魔法のように響いたのでしょうが、令和のそれは当たり前のインフラ・イコール・下水道にすぎないでしょう。「ヒーロー」という単語にいまだ特別なマジックを感じるようなアホが、ボクらの七英雄を目の前でさんざんにテキスト・レイプするのを見せられる屈辱といったら! 王国の支配階層や七英雄たちのそもそもの行動原理も支離滅裂かつ意味不明なもので、あのスクエアがゲーム専門学校に通う学生の習作レベルを客へお出ししている現実に、もはや目をおおって天をあおぐばかりです。

 ある疑惑が確信へと近づいたので、いっときの感情で下品にブチまけてしまうと、かつてテレビや映画やアニメの各業界に全共闘の闘士たちが流れこんだのと同様に、ゲーム業界が就職氷河期のハイスペック無内定者たちの受け皿になっていた時期が存在し、業界の輝かしい一時期を作りだしていた事実は、あるんじゃないでしょうか。それがいまや、旧帝大の上澄みは外資コンサルに流れこみ、中上位の私立大の学生さえ、その空隙を埋める形で国内の大企業に席を得ることができてしまう就職状況の帰結として、ゲーム業界にはかつてのようではない、ロースペック人材しか漂着しなくなっているのかもしれないなと、ロマサガ2リメイクへの失望(主にシナリオ)から、ここに吐き捨てておきます。同時並行で崩壊スターレイルの「美少女忍者編」をプレイしていることをお伝えしていましたが、ニンジャスレイヤーそのまんまな世界観に、「しょせんは、大陸産のコピーキャットよ」などと唇の端をゆがめる軽い侮蔑からはじまった視聴が、ストーリーを進めるにつれて、カウボーイビバップのマッド・ピエロ回のような全容が立ちあがってきて、奇矯な彼女の言動は過酷な成育環境から文字通り、おのれの心身を守るための「忍者バリヤー」とでも呼ぶべき、精神防壁の一種だったことが明らかになるのです。この、小鳥猊下を名乗って25年が経過する疑似パーソナリティや、もしかすると肉の現実における本体の人格と言動さえ、劇中に語られる「忍者バリヤー」と等価なのかもしれないと遅れて気づいて、その妖しくも滑らかな語り口に、背筋がゾッと寒くなりました。彼我のシナリオが持つクオリティの差は、もはや天文学的な単位でしか表現できないとさえ言えるのかもしれません。

 しかしながら、トリリンガル以上を駆使する理系の博士号を持った人物たちによる崩壊スターレイルを、モノリンガルさえ満足にあやつれない専門学校卒のシロウトたちによるロマサガ2リメイクが確実に上回っている要素は、まちがいなく存在するのでした。それは、この場末のテキストを記述しているあいだにさえ、絶え間なく脳内に鳴り響き続けている、ゲーム・ミュージックです。崩壊スターレイルのピノコニー編で、ずっと不満に思っていたのは楽曲の弱さで、銀河の歌姫であるはずのロビンが、リン・ミンメイにもランカ・リーにもなれなかった事実に内心では失望していたことへ、いまさらに気づかされた次第です。今回、彼女が銀河のラッパー?としてマイクをDJコントローラーに持ちかえて臨んだ野外コンサートも、映像の美麗さに比べると音楽部分があまりにショボすぎて、まったくと言っていいほど耳に残りません。それに対して、ロマサガ2のバトル・ミュージックは50時間中40時間を聞き続けたせいでしょうが、油断すると頭蓋の内側で勝手に演奏されはじめて、もはや日常生活に支障をきたすレベルです。(満員電車の座席で、スーツ姿の男が跳ねるように起立し、よだれを垂らしながら)ぱーぱらぱぱっぱーぱーぱらぱらぱー、ちゃーちゃらららっちゃーちゃーちゃららららー、ぱーぱらぱぱっぱーぱーぱらぱらぱー、ちゃーちゃらららっちゃー、ちゃーちゃららららー……あかん、またプレイしたくなってきた! セブン・ヒーローズ(笑)のフヌケた裏の顔は見なかったことにして、グラフィックのダメさは薄目で物理補正して、冥術と陣形の取りのがしを埋めるために、いまからベリーハードの2周目いってきます! やはり、ゲームのバランス調整とBGMは、まだまだ半島や大陸のおよばない、本邦のお家芸ですね! ロマサガ2リメイク、新規のライティング部分は本当に、なんの擁護もできないほど、クソ・オブ・クソなんですけどね!