ファイナルファンタジー7リバース、インターネットが存在しなかった時代のように遊びたくて、攻略サイトのいっさいを遮断し、検索ウィンドウに文字列すら入力せず、本当にゆっくりと、ゆーっくりと進めている。ゴールドソーサーに入ったばかりの段階で、プレイ時間はすでに40時間へとせまるいきおいである。たったいま、同園長との格闘ミニゲーム・バトルを終えたところだが、ノムさん手づからデザインしたというこの人物の造形の「もしかしなくても、ギャグではやっていない」シリアスさは、ものすさまじいレベルにまで達している。サルバドール・ダリとセルジオ・オリバを「足し算だけして、いっさい引いたり割ったりしない」筋骨隆々の見た目に、胸毛から腕毛からすね毛までビッシリ生えそろっているという、ある種の性癖を持つ人々の脳内にあるファンタジーを完璧に再現ーー「筋肉マッチョも毛むくじゃらも大好きだけど、ビルダー連中は体毛を剃っちまうしな……ひらめいた!」ーーしたようなデザインになっているのだ。この人物がするポージングにモブの女性たちは黄色い歓声あげ、忍者娘はまるでエロいものでもあるかのように指の隙間からその肉体美をのぞき見たかと思えば、彼のするウインクになんと卒倒してしまうのである!
いやいや、手をふれずに若い女子を気絶させるなんて芸当ができるのは、ブカレストでのマイケル・ジャクソンぐらいのものなのよ。そもそも、十代の女子が体毛の濃い半裸のカイゼル髭にほほえまれたときの反応は「きんも」か「きっしょ」の二択で、性的に興奮するなんてことはぜったいにないのよ。女性陣にリアクションを仮託してはるけど、このシーンを思いついた人物の性的嗜好はぜったいにGかBーーいやだなあ、ゲームボーイの略称ですよ!ーー以外ありえないのよ。衝撃のあまり、口調がオネエだか例の芸人だかみたいになってしまったが、「かつて低ポリゴンで表現されていた冒険の舞台が、じつはこんな場所だったんだとわかるのを楽しんでほしい」という作り手の意図以上に、生々しくも余計な情報まで遊び手に伝わってしまっているような気がしてならない。ボクらのKURAUDOが「性に臆病なノンケで童貞の中学2年生」として送られている秋波に気づかず、すげなくソデにしたときの園長にただようひどく濃厚な薔薇族感(なんや、それ)は、夜の街における歴戦のGかBにしか描写できない境地にいたっていると言えるだろう。前作で言えば、ハニービーでの女装ダンスと同じレベルのアタオカ展開なので、ゲームをしない諸君にもぜひ、動画サイトなどで確認することをおススメしておく。
それにつけても本作の白眉は、ボクらのKURAUDOの見事なまでにキョドった挙動であろう。30年前の当時より、それこそ星の数ほどの二次創作が行われてきたにちがいないが、ノムさんの描写するKURAUDOだけが唯一のホンモノであることを、あらためて痛感させられた次第である。思いうかぶのは、孤独のグルメを実写化するにあたり、店選びや脚本は他のスタッフにまかせながらも、原作者が井之頭五郎のモノローグだけはすべて監修して、「ゴローが使いそうな言い回し」に書きかえているという逸話だ。これとまったく同様に、ノムさんがほんの少し手をくわえるだけで、朴念仁のつっけんどんな言い回しから、小心な臆病さを周囲に悟られないよう無表情をよそおう芝居まで、かつてオタク男子たちのハートをワシづかみーー「クラウドは……まるでオレみたいだ……」ーーにしたキング・オブ・ジュニアハイスクール・セカンドグレイド・シンドローム(だから、なんやねん、それ)の名に恥じぬキャラクターへと化身するのである。
あと、本作はフィールドパートとストーリーパートに加えて、「怒涛のミニゲーム」から成りたっているのですが、オリジナルの本質をふまえたうまい再構築だなーと感心しています。このミニゲームがじつはかなりのクセモノで、最高ランクの景品を手に入れようとすると、射的やら球蹴りやら腹筋(特に腹筋)やらで数時間は簡単に消しとんでしまい、フィールド探索の楽しさとあいまって、いっこうにストーリーを進めることができません。それと、エフエフ6からエフエフ7にかけて廃止されたものに「かぶと」「よろい」「たて」「みぎて」「ひだりて」があるのですが、「源氏シリーズの防具に身をかため、エクスカリバーとラグナロクの二刀流ができないこと」にひどくいきどおっていたのを、昨日のことのようになつかしく思いだしました。リバースをプレイしていると、ポリゴンで見た目の差分を用意できなかった以上に、いまより若くてトガッていたノムさんが自らのキャラデザを常に優先して見せたい気持ちが強かったのだろうと、どこか納得する感じがあります。バルダーズゲート3を経たあとだからこそ確信を持って言えますが、リアルな源氏の兜と鎧におおわれたTIFUAの上半身なんて、見たくもないですからね!