猫を起こさないように
映画「ホビット」感想
映画「ホビット」感想

映画「ホビット」感想

 ユアハイネス、小鳥猊下であるッ! 同じ猊下つながりから、ベネディクト16世のツッタイー参戦を心から歓迎したいッ! ウェルカム・トゥ・アンダーグラウンド!

 さて、投票ついでにホビット見てきた。児童文学としてのコミカルな部分を切り捨て、スターウォーズでいうところのエピソード1を作った印象。スプラッタ好きの一オタクを世界的な大監督へと押し上げた前トリロジーでの原作に対する深いリスペクトは、指輪物語と聞けば誰もがロード・オブ・ザ・リングスを思い浮かべるようになった今作ですっかり鳴りを潜めており、純粋なトールキンファンにとって二次創作の如き様相を呈している。

 そして、前作と比して旅の目的がスケールダウンし、旅の仲間も同じほど魅力的とは言えなくなった。また、前作はダイジェスト感さえある三時間だったが、本作は同じ三時間でもアクション増量の引きのばし感が漂っており、二部作を三部作に変更するだけの内容がこの先にはたしてあるのか、不安は残った。

 しかしながら、これらは超絶的な快作である前トリロジーが存在するからこそ気にかかる些末事だ。ベタな決まり芝居をカッチリと仕上げる監督の手腕はさすがであり、特にビルボがゴラムを殺さない選択をする場面には目頭が熱くなった。ふつうの人の小さな善意が、結果として世界を救済する。日々の絶望的な凡庸さを持ちこたえ、我々が善良に生きていくことを肯定する、力強いメッセージだ。当然、トールキンの織り込んだそれが秀逸なのだが、映像的には前トリロジーがあるからこその名場面であり、ピーター・ジャクソンに帰すべき手柄と言えよう。古くから受け入れられてきた物語の王道を崩さず、普遍的な感動の持つ避けがたい凡庸さから逃げず、それでいながら己の原点である悪趣味全開のグロを必然としてさらりと観客に提示する。その手腕には、メジャーの大監督としての風格すら漂う。

 一方で、同じオタクの出自を持つ和製ピーター・ジャクソンはと言えば、ようやくメジャーのハコを与えられたにも関わらず、未だにブレイン・デッドのリメイクを続けている。そう、ロード・オブ・ザ・リングス1&2の続編を期待して映画館に入ったら、ハリウッド版ブレイン・デッドを上映していたときの気持ちを想像して欲しい! てめえ、ゲンキスクナイネ? だれのせいと思っとんじゃコノヤロー! ブチ殺すぞコノヤロー!

 『言葉で整理しないと自分が受け止めたことにならないという強迫観念を持ってる人たちがいっぱいいます。その人たちは観客じゃないんです。その多くは物書きですから、仕事で文章を書いて稼いでいるんでしょうから、どうでもいいんです』