猫を起こさないように
忘備録「託宣の少女について」
忘備録「託宣の少女について」

忘備録「託宣の少女について」

 質問:例の国連スピーチ、どう思いました?

 回答:男性原理の支配したこの世界では、一人の少女が突如として託宣の巫女に選ばれることがある。大人になるまでのわずかな時間、時々の政治の潮流を批判し、相対化するメッセージを、原理の外側から伝えるためだ(不思議なことに、少年がこの役割を果たしたことはない)。

 しかしながら、彼女はその試しとなるはずのスピーチに失敗した。ひとつ前の巫女であるマラ×2のスピーチが好対照だ。穏やかな語り口で対立を煽らず、「ワン・ティーチャー、ワン・ペン、ワン・ブック」みたいな、だれもが切り取りやすい知的で簡潔な、印象に残るフレーズが織り込まれていた。

 それに比べて、みんなのうらみはと言えば、米・ビッグ頭領に対する憎悪に満ちたやぶにらみとハウ・デアくらいしか印象に残らないというていたらくである。世の裏側にいるオーソリティたちは、カミさんに叱られているときみたいな口ごたえを許されない感じに、イヤな気分にさせられたに違いない。

 このスピーチを境として、線は引かれなかった。少し期待していただけに、じつに残念だ。私は、次の少女の到来を待ちたい。