猫を起こさないように
ゲーム「FGO第2部7章前半」感想
ゲーム「FGO第2部7章前半」感想

ゲーム「FGO第2部7章前半」感想

 FGO第7章前半クリア。前後編へと分割した理由がボリュームでなかったことは残念でしたが、内容的にはさすがファンガスの筆であり、他の書き手を寄せつけぬ頭3つほど抜けたクオリティに達しています。ただ、第6章と比べると物語の展開が幾分リニアーで、語り口もわずかに雑だと感じざるをえません。さらに、サッカーW杯ネタを仕込んでくる節操のなさやパロディの多用、リアリティラインをギャグ方向に下げて危機を回避する手法など、全体としてのフィクション然とした雰囲気は少し気になりました。しかしながら、これは各界のスーパースターたちが様々な記録や偉業をうち立てたあと、あらゆるライバルが背景へと消え去り、やがて己の過去と己自身だけを行為の基準とする境地に、ファンガスが突入したからだとも言えます。

 そして古くからの型月ファンたちは、20年以上前の設定集から引っぱりだされたORTなる「ボクの考えた最強生物」に大興奮の様子ですが、FGOからの新参者にしてみれば、体内で核融合反応を行うというくだりはあからさまに例の怪獣を連想しましたし、冒頭に登場した光の巨人とU-オルガマリーがアーツカードを使うときの「デュワッ!」というかけ声は、M78星雲の宇宙人へのあきらかな目配せを感じました。おそらく第7章後半で、「ゴジラ対ウルトラマン」をやりたいんだろうなーと推測するときの気分が冷めているのは、版権が存在しない偉人や英雄には女体化を筆頭とした好き勝手の狼藉を働きながら、版権の切れていない既存IPには気づかれぬようおそるおそるアプローチするその手つきが、結局はどちらも同質の根を持つとわかるからで、同人活動に出自を持つ会社の「育ちの悪さ」をいまさらながら見せつけられた気分でいます。

 FGO第2部における世界の危機が、既存作品のパロディへのオーバーラップによって解消するのだとしたら、それは昔からの同社ファンを大いに喜ばせこそすれ、新しいファンたちを白けさせるものでしかないと、老婆心から忠告しておきましょう。かすかに匂ってきたメタの香りに不安を覚えつつも、第7章後半とそれに続くだろう終章を、いまは心静かに待つつもりです。前半で描かれた「ウルトラマンが人類を好きになる過程」は充分に感動的だったので、ここからは既存IPのオマージュから離れ、ひとりで高く飛翔することを願っています。

ゲーム「FGO第2部7章後半」感想