六畳ほどの部屋。正面には窓、右手には安手のスチール製の机、左手には本棚。窓の外には青空。二階の一室か。窓枠を基準にすれば白い雲がじりじりと移動しており、時間が静止していないことを伝える唯一の情報である。長い間。何も起こらない。前衛劇の様相を呈し始める。突然の大音響。ちょうど諸君の右肩を跳び越すようにして、全裸の男の引き締まった尻えくぼが六畳間へ姿を表す。何かを破壊したらしい大音響に伴って白人女性の、決して拒絶ではない「ア~ン」という音声が諸君の左右後方に設置されているらしいスピーカーから流れる。全裸の男、引き締まった尻えくぼの位置はそのままに、上半身だけで諸君を振り返る。
「お家芸の”閉鎖”にすら『成田屋!』等のかけ声を期待できないのだとすれば、おまえたちがそこへ蝟集することは私にとってどんな意味を持つのだろうな。今回の件に対して釈明を求める無言アクセスに回答を与えるとするなら、再放送やDVD販売やリメイクの”リ”の部分を軽視した回数を繰り返して稼ぐ手法が存在するなら、ネットにそれを取り入れて非難される言われはないと考えたからだ。しかし、汗がしたたる人いきれと嘔吐をもよおす臭気に比して、ここは白痴と唖の王国ように静かだな」
全裸の男、引き締まった尻えくぼの窪みをいっそう深くすると、続く一つの大きな跳躍で前方の窓を破り、六畳間から消える。窓ガラスの割れる音に伴って白人女性の、決して拒絶ではない「ア~ン」という音声が諸君の左右後方に設置されているらしいスピーカーから流れる。窓枠を基準にすれば白い雲がじりじりと移動しており、やはり時間は経過しているのがわかる。