猫を起こさないように
小鳥猊下・クォーテーション
小鳥猊下・クォーテーション

小鳥猊下・クォーテーション

 今日、見知らぬ婦女子からメールをもらったんです。アドレスはおろか名前すら記載されていませんでしたが、婦女子に違いないことだけはわかりました。匂いがしましたから。そこにはこう書いてあった。「萌え画像が欲しければ更新してください」。
 婦女子から更新を脅迫された日には、朝昼晩、オナニーを三回やることにしているんです。そうして握り拳を恥骨へとふりおろしながら、自分に果たしてその婦女子から萌え画像を受け取る資格があるかどうかを考えるんです。見てのとおりぼくはたいへん文章がうまいです。でもそんなことはたいしたことじゃあない。生まれついた言語センスの賜物だし、ただの天才です。語彙の選択なんてそれこそ天性のものなので、何か賞賛に足る努力があるわけじゃない。ただ――ぼくは性格もいいんです。ぼくのサイトに想いを寄せてくれている婦女子たちの中で、はたして何人がぼくのこの性格のよさにひかれてくれているのだろう。
 しかし、またある日ぼくは思うんです。雲子萬子、あんなひどい更新ばかりをして、自分の性格がいいと思うなんて傲慢なんじゃないかって。でも自分の傲慢さが許せないと考える自分に気づいて、ああぼくって何てかわいいんだろうと思うこともあるんです。だけど自分の傲慢さが許せないと考える自分がかわいいと思うのはやはり傲慢であるような気がするし、自分の傲慢さが許せない自分をかわいいと思うのを傲慢と思うのって、やっぱりいじらしいと思って。そんな自分がたまらなくかわいく愛しくなって、夜中に時々ぼくは自分で自分を抱きしめたくなるんです。
 ――すみません、突然見知らぬブログ閲覧者のあなたに変なこと話ちゃって。こんな自分の弱さは和服美少女が漕ぐ舟に乗せて、電子の海に流してしまいたくなります。