猫を起こさないように
私はここで、誰と話をしてきたんだろう
私はここで、誰と話をしてきたんだろう

私はここで、誰と話をしてきたんだろう

「僕はいつも思うのは、自分がほんとに恥ずかしいことだと思うのは、自分はおたくの文化を否定してきた。否定することでホームページを更新して、アクセス数をもらってnWoしてきたということは、もうほんとうに僕のギルティ・コンシャスだな」
「いや、それだけは言っちゃいけないよ。あんたがそんなことを言ったらガタガタになっちゃう」
「でもこのごろ言うことにしちゃったわけだ。おれはいままでそういうこと言わなかった」
「それはやっぱり、強気でいってもらわないと……」
「そうかな。おれはいままでそういうこと言わなかったけれども、よく考えてみるといやだよ」
「いやだろうけど、それは我慢していかないと……」
「それじゃ、我慢しないでだよ、たとえば、おたく文化を肯定して、二次元の少女に射精することは非常に素晴らしいことだ、これなら誰に対しても恥ずかしくない、と言えるかな」
「言えないでしょう、それは」
「言えないでしょう。そうすると、われわれだって射精も否定もどっちもいけないじゃないの。どうするのよ……」
「だから最後まで強気をもつということよ」
「強気をもつということは、もうホームページを更新することじゃないだろう、そうすれば。テキストサイトじゃそれは解決できる問題じゃない」
「だって、テキストサイトだって、あの長いもの更新するのに、強気でなければ更新できないよ」
「しかし僕は、それはテキストサイトで解決できない問題だと気づいたんだ。まあ頭は遅いけど」
「もちろんテキストサイトでは解決できないよね。それは、いまの問題とちょっとちがうんじゃないかな」
「でもね、僕、耐えられないのは、たとえば僕が一回の更新をする。それにアクセスしてくれる人がいる。カウンターが一回まわる。そうするとカウンター一回分はどういうアクセスなのかと思うんだよね。それはある一つのおたく社会の中に、引きこもりでもなんでも生きている、そして類型的な萌え礼賛に不満ももっている。しかし少女、子どももかわいい、そしてなんかこれで、そのうちにネットゲームでもしていたらなんかいいことがあるかと思っている。そういう男が僕のホームページにアクセスするわけね。そこでカウンターを一回まわすんだ。かなりの時間の浪費だ。彼のどの部分がカウンターをまわすかと思うんだ。そうすると、僕は、彼の一番鋭い良心の部分が僕の更新を読んでいるなんていう己惚れは全然ないよ。絶対ないよ。彼はやっぱり、なんかこのおたく社会や時代に対する不満の中から、まあ逃げ道というか、自虐というか、なんか追う気持ちがあって、ふらっとアマゾンでエロ漫画でも注文するように更新を読むだろう。そして彼は、三十分か四十分か、彼がアクセスしたものを喜ぶだろう。それは僕らだってサービスするんだから、サービスするだけのものは読むわね。その中からカウンターの一回転をもらうんだ。そうすると僕はいったい何のために更新しているんだ。この人たちからカウンター一回転もらうということは、やっぱりこの人たちをつまり生かしておくためだろう。そしてその人たちはそれがなかったら生きていかれないかというと、なくても生きられることは確かだろう。その瞬間に、おれはやっぱりいやになっちゃうんだな、ほんとうに。なにをやっているんだ、おれは、ということね」