ローマ
一言で申せば、「この世界の片隅に・イン・メキシコ」。監督が過ごした幼少期を忠実に再現する前半の1時間はもうタルくてタルくて(タルコフスキーぽくてタルコフスキーぽくて、の略)、特に親戚の農場に出かけて山火事になるあたりはひどい睡魔におそわれた。しかし後半の一時間、市井の一市民が生活よりも大きな流れに翻弄される様子には、大いに心を動かされた。ネタバレになるが、「子を失ったのに、悲しむのではなくホッしている自分」に気がついて涙を流す場面には、久しぶりに強く文学を感じた。なに、ありがちな展開じゃないですか、だと? このブクブク肥満の、ヘラヘラ笑いの享楽乞食めが! 貴様らのような情報と地獄に飽食した、いわば性病持ちの年増処女どころではない、知恵もなく教育も与えられない若い有色の端女が、本来ならばたどりつかないはずの感情を、否応に体験させられたことが文学なのだろうが!