スリービルボード(ズ)
なんだろう、高評価をつける方々は全員、映画の中身というよりは自分の解釈に感動しているように見えてしょうがない。私の印象を言えば、「理に落ちたデビッド・リンチ」かな。現実世界の問題を、登場人物の造形とストーリー展開に仮託して比喩的に読ませるという点で同じ作家性を感じるんだけど、この作品は妙に理屈っぽい。脚本の都合でキャラクターが動かされていると強く感じるし、監督が戯曲作家であることも原因だろう、あらゆる出来事があまりに連鎖的に、悪く言えばご都合主義的に、順序よく発生していく。「混沌・暴力」から「秩序・対話」への移行を描きたいんだろうけど、作り手がそういうメッセージを送りたい気分が前提にあり、不自然に物語が組み立てられる。この映画の他者評を知りたいと思えども、「アダルトもチルドレンも、ティッツも」で有名な例の人物が取り上げたスピリチュアル映画評に妨げられ、一般大衆の感じ方へアクセスすることができない。どれほど有名だろうと、フォロワー数が多かろうと、にんげんだもの、間違えることはある。エス・エヌ・エスの弊害は、「有名人の誤謬による、真理への不到達」なのだ。