グランド・ブダペスト・ホテル
センスと外殻だけがある、きれいな昆虫のような、メリーゴーラウンドのような作品。誰が言ってたか、「すべての映画はアニメになる」を地で行く、ポスプロまみれの怪作でもある。画面の色合いから構図までのすべてが監督の意図に支配されており、時間軸の違いをアスペクト比で表現したり、映画芸術の枠組みに対してもやりたい放題である。また、凡百の創作ならトラウマ感情のゆらぎがどうしても作品へにじみでてしまうものだ。しかし、この監督はそういう雑味を徹底して自作品から排除していて、それゆえのドライな手触りに憧れる。どんな人物がすごく興味あるけど、絶対に会いたくはない。