猫を起こさないように
おはよう!スパンク
おはよう!スパンク

おはよう!スパンク

  spank 【動】《【規】【三】-s, 【去分】-ed, 【現】spanking》[1]【他】(1)しりをぴしゃりと打つ, 平手打ちにする.[2]【名】《【複】-s》(1)平手打ち. {【類】slap}
 朝の風景。レースのカーテンを揺らして朝のさわやかな風が室内に吹きこんでいる。棚の上に並べられた愛らしいぬいぐるみの数々。壁には赤いふんどしをしめた毛むくじゃらの男がひきしまった尻を誇示しながら肩越しに振り返り微笑んでいるポスターが貼られている。ベッドの上にはピンクのネグリジェを着た筋骨隆々たる男子が安らかな寝息をたてている。が、おもむろに身体を起こし頬を薔薇色に赤らめながら大きく伸びをする。
 「おはよう!」
 窓をブチ破り、黒タイツに全身を包んだ男が室内に乱入してくる。手にした棍棒で男の顔面を上半身の筋肉に血管の浮くほど力みなぎらせしたたかに打ちすえる。
 「スパンクッ」
 ネグリジェの男子、昏倒してベッドに倒れ込むもすぐに跳ね起きひしゃげた鼻から鮮血を噴出しながら何事もなかったふうで大きく伸びをする。
 「おはよう!」
 天井をブチ破り、黒タイツに全身を包んだ男が室内に乱入してくる。手にした棍棒で男の肛門上部を上半身の筋肉に血管の浮くほど力みなぎらせしたたかに打ちすえる。
 「スパンクッ」
 恍惚の表情で四季折々の花を背負いながら宙を舞うネグリジェの男子。
 場面は変わって、一人の大男と禿げあがった頭の中年男が向かい合っている。突然大男の喉が奇妙な音を立てて鳴ったかと思うとその口から大量の吐瀉物が吐き出される。流れ落ちる吐瀉物を顔面で受け、こぼれたぶんを両手ですくいとりぺちゃぺちゃと舌でなめながら、
 「あなたのゲロを 身体に受けながら」
 中年男、吐瀉物まみれの顔に知性のないものがする薄ら笑いを浮かべる。
 場面は変わって、巨大な浴槽。中にはところどころに赤いものの混じった粘りけのある白い液体が満たされ悪臭を放っている。その傍らでビキニパンツのマッチョが準備体操をしている。突然大声で、
 「膿でッ 心のお・せ・ん・たッ・くッ!」
 言うやいなや頭上で両手をあわせ、頭から浴槽に飛び込む。ひとかきふたかき、満たされた血膿をずるずると飲み干しながらときどき泳ぐ手を休めては全身のあらゆる部位へ表面に浮かぶ正体の知れない半個体状のものをなすりつける。マッチョの顔に浮かぶ恍惚の表情。
 場面は変わって、和風家屋の一室。後ろに掛け軸を背負った構図で熊のような毛むくじゃらの男がひきしまった筋肉にスポーツ刈りのさわやかな青年を膝の上に横抱きに抱いて座っている。おもむろに手を振り上げ、いっさいの手加減のない速度で打ちおろす。
 「ス・パ・ン・ク スパンクッ!」
 打たれたスポーツ刈りの青年、目を乙女のようにうるませ頬は薔薇色に赤らめ恍惚のようすで、
 「大好きよ」
 熊のような毛むくじゃらの男、青年のそぶりにさらに嗜虐をそそられたといったふうに目をギラつかせ再び手を振り上げ容赦なく打ちおろす。
 「ス・パ・ン・ク スパンクッ!」
 打たれたスポーツ刈りの青年、肩越しにうるんだ瞳で毛むくじゃらの男を見上げる。絡みあう二人の視線。夕闇の訪れる室内に時間が止まる。もはや少し離れればお互いの顔すら確認できないほど薄暗い。二つのシルエットがゆっくりと畳の上で重なりあう。
 「二人でひとり」
 バックに流れる軽々しいBGM。番組提供のテロップ。