猫を起こさないように
家族ゲーム
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 「あれは私が14歳になった誕生日のことだったわ、スコール」
 「リノア…」
 「お誕生日おめでとう、リノア。とってもきれいですよ」
 「あっ。熱いコテでもって両端を天に向けて反らしたカイゼル髭の(反らされた髭が暗示するのは男性生殖器だろうって? 馬鹿な!)見るもいやらしい精神の淫猥さを表出する風情が、娘の私にさえ一匹のメスとして本能的な危機感を抱かせるのに充分な、お父さん」
 「今何か隠しましたね? お父さんに見せなさい」
 「何も隠してなんかないわよ、何も隠してなんか…あっ」
 「ばりり」
 「なんですか、これは。乳首を起点として中央からせり出しはじめた、我々健康な成人男性にのちの豊満なバストへの連続性をいやがうえにも実感させる卑猥な、男を誘う青いつぼみ。こんな凶器を薄布一枚の下に隠しもっているなんておまえはまだレジスタンス活動をあきらめていないのですね。こんな危険物はお父さんが没収します」
 「きゃうっ」
 「精神的には表層の拒絶を表すが、それは見せかけにすぎず、肉体的にはこの上なく欲情していることを暗示する年齢制限ゲーム特有の記号を乳首をひっぱられたのに呼応して無意識に発話するような、そんなモラトリアム青年たちにとってたいへん都合のよいはしたない娘に育てた覚えはお父さんありませんよ」
 「お父さん、やめて、やめて…ひぐぅ」
 「おお、おお、なんとふしだらな。男にとって自分の襲撃を正当化するに都合のよい記号。裸体であるよりも男の劣情をよりそそる薄い布ッきれ一枚で申し訳程度にその最悪の凶器とも言うべきペドチックな身体を隠し、スカートには健康な張りつめたふとももをもっとも効果的にパンチラ的にちらちらと我々を誘うように定期的に見せる劣情発生装置として恐ろしいような深いスリットが入っています。そのスリットの深さは貴女の自前のスリットの深さを明示しているのに違いありません。お、お父さんに比喩的にではなく直接的に見せてみなさい」
 「やだ、やだよぅ」
 「この期におよんで蹂躙されることをあらかじめ神によって約束されたようなその語尾。この男にとってたいへん都合のよい抵抗の無さをして、なな何がレジスタンスか。早く見せなさい。おまえはお父さんがつくったのだからお父さんにはそれを図書館司書のように検死官のように冷徹な学者の目でもってなめまわすように閲覧する神にあらかじめ与えられた生得的権利があります。スリット、スリットォォォォォォ!」
 「ぬるり」
 「あっ」「あっ」
 「お父さん、リノア、早く降りてこないと誕生日の鶏の丸焼きが冷めちゃうわよ…あっ。(口を押さえて後ずさりながら)ジャ、ジャンクション」
 「おかぁさん、おかぁさん」
 「こ、これは違うんです母さん。使わないような場合でもちゃんとジャンクションしておかないと相性とレベルがあがらないんです。そう、それだけのことなんです。あなたが今勝手な想像を膨らましているようなことはちっともないんです」
 「嘘、嘘! あなたはそんなことを言う裏で毎戦闘で使っているのに違いないわ。その証拠に今のあなたの能力値は私とジャンクションしたときの数値の150パーセントは優に出ているじゃないの。あなたたち二人はそうやって私をたばかって陰で笑っていたんだわ。もう終わり、終わりね、楽しかった家族ごっこももうおしまいね」
 「ぱたぱたぱたぱた」
 「あっ。ち、ちくしょう。それもこれもジャンクションシステムがややこしいのが悪いんです」
 「おかぁさん、おかぁさん」
 「こんな最悪のトラウマを持つ私だもの、誰からも愛されなくて当然よね…(鉄柵に顔を押しつけて泣く)」
 「リノア…」