インターミッション
その石はずっとひとりぼっちだった。
意思の介在をさえ疑わせる整った円錐形が、ゆっくりと回転しながら漆黒を漂流する。
周囲の莫大な空間に比して、あまりに小さく寄る辺無く見えた。
その石はいくつもの生命の傍らを通り抜け、気の遠くなるような長い時間を旅してきた。
そして同じくらい気の遠くなる長い時間を旅して、石さえも形を保てぬあの輝きへと身を投げ、終焉へ没するはずであった。
はるか見下ろす彼方に無数の生命がうごめくのを眺めながら、他人の幸福を祈るときのぬくもりだけを内側に残して、いつものように旅人として去っていくはずであった。
しかし――
楽しげな楽曲や町のさんざめきがいつもより優しく聞こえたように。
人恋しさが人嫌いをほんの少しだけ上回ってしまったときのように。
ふらふらと、ほんのわずかだけ道程をたがえたその石は、あっというまに、暖かな星の抱擁にからめとられてしまっていた。
人ならば、軽率が招いた早すぎる結末に自棄の安逸を感じただろうが、それは石に過ぎなかった。
そして見た。
夜の底に規則正しく響く軍靴の足音と、窓から目だけをのぞかせて破滅を眺める子どもとを。
これまで、どれほど同じ光景を目にし、ただ傍らを通り過ぎたことだろう。
人ならば、あらゆる知性が避けえぬ矛盾に悲しみさえ感じただろうが、それは石に過ぎなかった。
永遠にまじわるはずのなかったふたつが、ひとつの気まぐれによって出会う。
もしその気まぐれに理由があるとするならば――
やはり、ひとりで永遠を行くのは、さびしかったからなのかもしれない。