猫を起こさないように
D.J. FOOD(5)
D.J. FOOD(5)

D.J. FOOD(5)

 「先週は本当に申し訳ない。関係者のみなさん、番組を聞いてくれているみなさんの感じた憤り、不快感についてD.J.FOODは、いや、私人山田次郎は心から謝罪したい。昔は血気盛んなものだったから人間をビルの高所から蹴落とすどころか、人差し指を根本まで胸にうずめられても唇の端を切った程度の出血で全然平気だったり、最初は優しい激情家だったのがネクロフィリアでダッチワイフ好きの旧友にビルの屋上から飛び降り自殺を強要させたあたりからニヒルな殺戮家に君子豹変し、核で人類が滅びてしまったので拳法でもってというミノフスキー粒子より納得のいかない理由で暴力による世界支配をもくろむ親戚の血のつながらない兄さんを撲殺したり、ついでに婚約者の兄さんも撲殺するようなそんな平均的日本人の生活を1オングストロームほど逸脱してみせる程度の毎日だったんです。そして様々の紆余曲折を経たのちに自分の婚約者が産んだ暴力による世界支配をもくろんでいた親戚の血のつながらない兄さんの子供に屈折した教育指導を施し、ときどき記憶を喪失したりしながら歴史の彼方へと消えていくような凡々たる有様でした。それが今回の不祥事、本当に申し訳ない。収録スタジオから不慮の事故でもって墜落した二人のスタッフのうち一人は偶然マンホールのふたが開いており肉体労働従事者の黄色いヘルメットに運ばれてマンホールから顔を出したところをダンプに轢かれる程度のディズニー的軽傷ですみ、もう一人は金玉をひろげグライダーのように飛翔し土曜の新宿に衆人環視の中着地して猥褻物陳列罪に問われるだけで済んだのは不幸中の幸いと言うべきでしょう。こんなどうしようもない私ですが、みなさまから励ましのお便りを頂いておりますので二三読ませて頂きたく存じます。まず一枚目は住所は書いてありません、チンポ丸出しさんから。『この人殺し!!!おまえみたいなのが金もらってるから俺のとこにまわってこねーんだよ!!死ね!!!』申し訳ございません。全くその通りでございます。あなたがいい大学に入りいい就職口を見つけいいメシを喰うといった度外れの幸運にめぐまれず、いま人生の底の底のゴミ溜めを這って這って這って這いずっていて、ときどき匿名で品性の下劣なハガキを記述し無職の身には身を切るような辛さであろう数十円の切手を貼付しわざわざ投函するというハリウッド的劇的さでもって日常を疾駆なさっているのは何もかも私の不徳の致すところでございます。言葉もありません。次のお便りは板橋区にお住まいのときめきリズムちゃんからです。『私はFOODさんは悪くないと思う。どうかFOODさんを降板させたりしないで下さい。私の通う女子中学校で集めた署名と嘆願書を同封します。また面白いお話を聞かせて下さい』ありがとうございます。涙が出ます。幸い降板という事態はまぬがれそうです。不要になったいい匂いのするこの署名と嘆願書は、ちんちんの先端を包むなどし、積極的に私の私生活において役立てたいと思います。本当にありがとうございます。最後のお便りは大阪府にお住まいの小鳥くんからですが、残念ながらもはや紙数は尽きた。それでは来週のこの時間まで。ごきげんよう」