猫を起こさないように
日: <span>2026年2月27日</span>
日: 2026年2月27日

ゲーム「崩壊スターレイル・月満ちる時に神はなし」感想

 崩壊スターレイルのバージョン4.0「月満ちる時に神はなし」を実装部分までクリア。今回の舞台について簡単にまとめると、「1999年の日本を下敷きとした二次元パラダイス」であり、江戸星などの既出ワードから原神における稲妻のような世界を予想していたので、かなり意表をつかれました。おそらく、昨今の二国間の情勢に影響されたのでしょう、「無国籍なアジア地域の繁華街」と強弁できなくもない街並みになっているのには、ある種の配慮を感じます。余談ながら、原神に右のボール、スターレイルに左のボール、エンドフィールドに中央のスティックをつかまれている身にとって、希少土などよりもよほど供給を止められてはこまる産業ですので、いちオタクとして早期の関係回復を切にいのるものです。当局に目をつけられるかどうかのラインで”反体制”をしのばせてくるライティングは健在で、突如として「世界が滅びようってときに、お上にいったいなにができるっていうの?」みたいな中共へのビーンボールが顔面スレスレにとんできたりして、喝采より先に心配がきました。鴨川をモジった”鳩川”なる地名がサラリと提示されることからも、この街を前世紀末の京都に見立てていることは確定的にあきらかで、もしかすると制作サイドに本邦への留学経験のある「学生さん」か「同やん」がいるのかもしれません(「立ちゃん」は、鴨川に思い入れなんてないでしょう)。以前にもお伝えしたように、学生時代は四条河原町あたりでのたくる日々を送っており、ゲーム内の光景に「川をはさんだ街並み」以外の共通点はないはずなのに、どこかなつかしさをくすぐられるのは、じつに不思議な感覚でした。「オンパロスという一大叙事詩のあとに、なにを持ってこられても、格落ちにしかならんよなー」とヘラヘラ笑っていたところへ、「おのれの過去の情動とヒモづいた、他国から見る特定地域の魅力」みたいなものを正面からぶつけられて、すこし動揺してしまったのは否定できません。

 さらに、マップ移動には土管を起点とする、スーパーマリオをオマージュした、横スクロールの8ビット・ワールドが用意されていて、ブラウン管につながれたファミコンの前にすわる小学生の自分が、エロゲー全盛期にむかえる大学生活を先どりして体験しているような、じつに倒錯した気持ちになりました。また、大好きなキャラ造詣でありながら、ピノコニーでは悪役としてイマイチ不完全燃焼だった花火たんに、あらためてスポットライトが当たったのもうれしく、彼女とウリふたつのライバーである火花たんとの実存をめぐるやりとりは、いちテキストサイト運営者として感じいるものがありました。特に、「1万人の仮面を演じることのできる役者は、はたして最初の人格をおぼえていられるか?」という問いかけは、1999年1月10日にインターネットへ投下されたnWo最初の記事を読みかえすとき、「これを書いたのは、いったいどんなヤツなんだ?」と首をかしげる人物にむけた虚構耽溺者の掘りさげとしては、”かいしんいちげき“クラスの中身だったと言えましょう。そのあとにつづく、「ベッドの上で金縛りに身動きがとれず、人格排泄ボタンを押さないよう懇願する少女」の有り様には、「爬虫類の表皮と同じヌメヌメとした質感をした、忘却のうちにあった小昏い性癖」を刺激され、いまや得体の知れぬ反社会的な衝動に、ひどく動揺させられたことを告白しておきます。

 バージョン4.0の結末において、本邦の公立高校を思わせるあかねさす教室で、たがいにたがいをずっと昔に死んだはずだと信じる父娘が、「おまえはだれだ?」と誰何しあう場面で幕を閉じたのは、前世紀末に隆盛をきわめた「雫」「痕」「久遠の絆」などに代表される伝奇ノベルゲーへの強い目くばせがあり、瞬間、1990年代のフィクションがまとっていた独特な空気感の中へ、あたかもタイムスリップしたかのようでした。虚構内ニュース番組で初代Fateについてパロディめいた言及などもあったり、オンパロスの重厚さとはまったく異なったアプローチながら、自分自身が過去に通過した現実と虚構、双方の遍歴と密接にからみあうような物語体験になっていて、いまは今後の展開へ期待と恐れを半々にいだいております。もう幾度目になるかわからない、「どうして我々がうみだすべきだった物語が、我々とはちがう場所から、世界にむけて問われているのだろうか……」という重たい嘆息とともに、このテキストを閉じることといたします。