猫を起こさないように
日: <span>2019年12月1日</span>
日: 2019年12月1日

忘備録「正しい英語、あるいは人種差別について」

 お前らから萌え画像を、もらう前に、言っておきたい、ことがあるッ! それは何かと問われたならば、「ツッタイー」とか「ノトー」とか「タラムイーン」みたいな間違った表記の外来語を、俺様が多用する理由についてである。

 “Education is important, but beer is importanter.”みたいな看板がタンブラーで「いいね」されまくっているのを見たことが、そもそものきっかけだったように思う。このフレーズ、いったい何が面白いかというと、「教育よりもビールの方が重要」と言いたいのに文法が間違って(more important、為念)おり、この台詞をしゃべっている呂律の回らない低学歴のアル中を読み手に想起させ、やっぱり教育って大事だよなー、という逆の教訓を感得させるところがキモである。調べてみると、beerの部分をディスりたい別の対象に変えた派生が山ほど出てくる。つまり間違った文法というのは、時としてネイティブどもa.k.a.偶然英語圏に発生した生命体群に「軽蔑を伴う可笑しみ」を否応に惹起するということだ。

 また、トラヌプ・ビッグ・統領が本邦の棟梁(土建国家のボス、の意)であるアビー(かわいくないほう)の英語を揶揄するときの仕草と周囲の反応を見てもわかるように、正しくない発音は「公の場で指摘するのは上品ではない」が、「確実に皆の下卑た笑いを誘う」のである。何度も例えに出していると思うが、チーム・アメリカで北の総書記の言う”inevitable”へ白人女性が執拗に聞き返しをする様とか、サウスパークで単語の末尾へつけた母音を強調させる日本人の発音とか、おそらく不自由な英語を揶揄することは、人種差別などに属する性質の悪い笑いなのだと推測する。

 さて、そろそろ小鳥猊下の深淵なる意図が理解されてきたことと思う。そう、「猊下なんて衒学の極みみたいな敬称をわざわざ自分で使っておきながら、致命的に英語が間違っている」という滑稽さ、厳粛な謁見の間で男たちは下を向き、女たちは袖に口元を隠すという、権力者を笑う笑いをねらっているのだ。

 やれやれ、兵馬俑なみに無言の臣下どもへ、また重大な無私の贈り物をしてしまった。きょう以降、小鳥猊下のツイトーは貴様らにとって、ますます玄妙なる可笑しみを増すことであろう!

 それでは諸君、グッバドイー!(退場する主君へ、居並ぶ臣下からの忍び笑い)

ゲーム「FGOダ・ヴィンチちゃん礼賛」、あるいはガチャと運の管理について

 人生は、とても楽しい(バスタオルで両目を押さえてワッと泣き出す)! 小鳥猊下であるッ!

 昔からそうだが、長く苦しみを味わってきたはずの人物が最後の最後で伝える、生きることを肯定する言葉に本当に弱い。古典でいうならファウストの「時よ止まれ、おまえはいかにも美しい」がそれだし、グイン・サーガでいうならサウル老帝が「わしはいつも、生きているのがとても好きであったよ」ともらす場面なんか、読むたびに泣ける。

 「人生は、とても楽しい」ーーここまでの伏線を考えれば、ほとんど遺言のようにさえ響く。種火周回もこの台詞を聞きたいがために、わざわざシステムとやらを組んで彼女の宝具を連発しては、そのつど涙ぐむ日々である。

 キミ、FGOを愛しながら、このキャラがいないカルデアでアプリの終焉を迎えるつもりなの? ほんと、嫁を質に入れてでも引いておきなさいよ。 彼女が永久に失われる前の、最後の夏の強い輝きを、ともに喜ぼうじゃないの。そう、私たちの人生は、ビューティフル・ジャーニーなのだから!

 質問:小鳥猊下…ダ・ヴィンチちゃんマジで出ねぇっすけど…

 回答:「出る」のではない、意志をもって「引く」のだ。今回のような大きな機会をピンポイントでモノにできるかどうかは、貴君が常日頃から己の運をいかに管理しているかによるだろう。もしそれを行ってこなかったのならば、色川武大の「うらおもて人生録」を購入し、二度、三度と熟読せよ。人生における勝ち負け、そして運のなんたるかを理解すれば、次のピックアップでは必ず引けるにちがいない。とはいえ、貴君がツッタイーに貼り付けた、あまりにも漫然とした「爆死」画像群を見るにつけ、もう少し技術的なアドバイスが必要だと感じたので、そうする。『(巨デブが声音を作って)ーー五十連分の聖晶石があれば、ピックアップの星5は9割以上の確率で引いてみせる』。ありがたく拝聴したまえ。

 FGOのガチャは、ファンガスの素晴らしい文章を勘案してさえ、企業の強欲なる収奪を目的とした許しがたい倫理欠如(人類悪)である。実際、サービス開始からプレイしている古参にとっては、ピックアップ・サーヴァント以外のカードはもはや全く必要のない、文字通りのデータ・クラップと化している。いまや日本銀行券を直接シュレッダーに投入するが如きマシンと化したこのガチャに対して、貴君のように徒手空拳で当たるのは、ブルーカラー的労働(ドカチン)を資本家に搾取させることと同義だ。

 例えば一般に、ポーカーや麻雀は運の要素が大きすぎる遊戯と思われている。しかしそれらにも、最善の結果をたぐりよせる技術やセオリーが確かに存在するのだ。FGOのガチャはおそろしく勝率のしぼられたギャンブル沼だが、ポーカーや麻雀のような遊戯としてとらえなおせば、勝ち筋が見えてくる。「十連の内容(星4以上の出現数および礼装とサーヴァントの比率)をエクセルに記録し観察する」「フレポの星3サーヴァントおよび星5種火の排出頻度を記録し観察する」「強化時の大成功、極大成功の出現頻度を記録し観察する」、これくらいはやって当たり前である。もしひとつもやっていないとすれば、それは腹をすかせた猛獣の群れの中を全裸で歩くようなものだ。そして、「星4が礼装一枚の場合は連続では引かず、時間帯を変える。どうしても欲求を抑えられないなら、少なくともアプリを再起動する」ことも忘れてはいけない。

 さらに付け加えれば、貴君がクレジットカードの審査にパスできるほどの社会的な強者ならば、「課金をコンビニ等で購入するプリペイドカードに限る」ことも重要だ。繰り返すが、FGOのガチャはイカサマの横行する場末の賭場である。手放す日本銀行券の額面と生活とをリンクさせて失うものへの実感を持つと同時に、賭場を出るまではそれが紙切れと等価である状態を維持するためには、カード決済は後者に寄りすぎる。体感に満たない気配を細く細く積み重ねていけば、どのタイミングでガチャを回すべきかが見えてくるはずだ。ガチャを引く際の、自分のフォームを作ることが肝要なのである。どこで引けば星5ピックアップを引く可能性を最大化できるかのルールを決め、それに己を殉じさせる覚悟が、胴元の圧倒的に有利なーー運営(ビースト)の、十一連開始みたいな目くらましに騙されてはならぬーー賭場で胴元を出し抜くには不可欠である。

 最後に、「うらおもて人生録」から少し引用しておこう。『フォームというのは、これだけをきちんと守っていれば、いつも六分四分で有利な条件を自分のものにできる、そう自分で信じることができるもの、それをいうんだな。(略)ことわっとくが、フォームに既製品はない。自分で手縫いで作るんだよ』

 とりあえず、貴君の長年の忠誠に応えて、入り口部分だけは伝えた。これ以上を知りたければ、指定の口座に現金を振り込むか、棚ざらしとなっている萌え画像を寄贈するとよかろう。「描くと出る」らしいよ?

 質問:小鳥猊下が突如ガチャ必勝法めいたツイートをおっぱじめたが、まだまだ精度の低い初歩的な内容であるが、それでもそこに羅針盤を求めてのことだと思う。「ガチャ必勝法などと言う世迷いごとを言う暇があれば毎日ログインしろ!ログイン1日以上はリムーブ対象だ」と言われたことを思い出していた

 回答:喝ッ! 「必勝法」などという万人が利用可能なティップスぐらいに、色川御大の金言を矮小化するでないわ! 運を人為的に操作するのではなく、運を感得し管理することこそが重要なのだ! 貴様に足りないのは、「いかに負けるべきときに負けるか」の視点である。「必勝法」とやらで浮いた端金で御大の著作を百冊ほど購入し、致命傷を負う前に負け方を学ぶがよい。あとログイン間隔が一日を超えると、どんなカネのかかったアカウントだろうと即座にリムーブするのが、俺様のフォームである。このブラック労働に耐える自信があり、なおかつ俺様とエフ・ジー・オー・フレドンになりたいのならば、ディー・エムせよ!

 レベル100にした女史とする種火周回を通じて、例の台詞に心が動かされるのは、絶妙なラインを踏まえた演技(ファンガスの監修に違いない)もまた、素晴らしいからだと気づいた。ぬけるような青空の下、生命の絶頂がかすかに死の陰を帯びるーーすなわち、本邦に生きる者たちの心性に深く刷り込まれた「盛夏の滅び」への共鳴を惹起するには、あれ以上はしゃいでも、あれ以上おとなしくても、ダメだ。

 この意味で、スキルをまくときの「とても楽しかったさ」は少しマイナス方向へ逸脱していると感じました。