猫を起こさないように
日: <span>2013年5月19日</span>
日: 2013年5月19日

シャイン


シャイン


『二つの旋律がせめぎあい、一つの主題を争っているんだ』。親に魂を壊された子が、親が与えた音楽によって救済される。父の死にエンドマークが置かれるのは、実に象徴的だ。諸君、これこそが世界の悲惨の正体である。

アルゴ


アルゴ


政治的な受賞との批判を聞いていたので、シリアナみたいな映画を想像していたら、現実を舞台にしながらも徹頭徹尾のエンターテイメント路線でびっくりした。外野が勘ぐるほど、このご時勢に中東を題材としたことはさして重要ではないと思う。おそらく監督をもっとも引きつけたのは、幼い頃に愛したB級フィクション、一等低いものとみなされていたSF映画が、現実の最も深刻な問題を実際に解決へと導いたという構図そのものではないか。それは例えば我々にとって、半島北部のアブダクションをエロゲーや萌えアニメの制作が解決へ導いたぐらいの、センス・オブ・ワンダーに満ちたモチーフだったに違いない。虚構を愛するものは、いつだってそれが現実に勝ることを夢見ているのだから。

トラブル・ウィズ・ザ・カーブ


トラブル・ウィズ・ザ・カーブ


父娘の典型的なトラウマ劇にベースボールで風味づけをし、終盤は怒涛のご都合展開。偶然モーテルの前でキャッチボールをしている超高校級の投手には、悪い意味で度肝を抜かれた。クリント・イーストウッドをわざわざ俳優へ引っ張り戻してまで撮る意味のある内容かと言えば、はなはだ疑問に感じざるを得ない。しかしながら宣伝効果だけは抜群であり、彼をキャスティングできたことが監督の最大の手腕と言えよう。それにしても、またもや珍妙な邦題である。有難い舶来の活動写真をアホな大衆にも届きやすいよう咀嚼して、啓蒙のために下賜するみたいな大時代の広報体質から、配給会社とその周辺が抜け出せていないんだろうな、と思った。