スーパーマン・リターンズ
三度目の視聴だと思うが、いつもレックス・ルーサーに感情移入してしまう。至弱を率いて至強に相対する日々、勝つことは端から放棄され、いかに損害を少なくした引き分けに持ちこむかばかりを考えるリーマン生活において、無邪気にスーパーマンの完全性を礼賛することはできなくなった。無謬の正義という虚構によって殺されないまま庇護され、ただその権威の確かさを再確認するためだけに挑み続ける道化、最も情けない小悪党。しかし、その姿を誰も笑えまい。昔から、ヒーローを扱ったシリーズもので、悪党側の主観から描かれる回が好きだった。個々人が総身の知恵をふりしぼり、組織はすべての力を結集させる。絶対に勝てないことは、あらかじめ運命づけられているのに。あの敗北は、子どもの目にとって諧謔だった。いまは、胃の腑に重たい現実である。私たちは、だれもヒーローのように勝つことができない。閑話休題。冒頭の飛行機事故から野球場へ至るシークエンスは、スーパーマンの能力とその象徴性を完璧に描ききっており、毎回感動する。せめてあの球場にいる人間になれればなあ、と思う。