猫を起こさないように
月: <span>2012年11月</span>
月: 2012年11月

テルマエ・ロマエ


テルマエ・ロマエ


バカほど手を抜かず、大真面目にやらなきゃダメだ! 前半は手を抜かず大真面目にやった、すごくいいバカだ! 端々からスタッフの悪ノリが伝わってきて、思わず笑顔になる! だが後半の展開はいただけない! 木ッ端アイドルとのクソ恋愛を必ず入れるという邦画の旧弊から逃れられていない! 逃れろ!

アメイジング・スパイダーマン


アメイジング・スパイダーマン


いや、本当によくできてますよ。ヒューマンドラマを丁寧に追っていて、良作以上の仕上がりだと思います。ですが、サム・ライミによる前三作を否定してまでリブートする意味があったかというと、はなはだ疑問に感じざるを得ません。あれ、つい最近なんか似たような感想を持った作品があるなー、なんだったかなーと思ったら、エヴァQだった。あと、ヒロインがキルスティン・ダンストを彷彿とさせる同系列のブサイクだった。これが、スパイダーマンの呪縛か。

バトルシップ


バトルシップ


恒星間航行可能な宇宙船のミサイルが一発では駆逐艦を沈められなかったり、音速の戦闘機の突撃にも耐えるバリアを生成可能な宇宙船が駆逐艦のミサイルに損害を受けたり、現代のネイビーが打倒し得るよう絶妙に配慮された控えめ兵装のエイリアンたち。どっかで似たような話を見たなー、どこだったかなーと考えてたら、ロサンゼルス決戦だった。ロシア、日本、中国、もはや仮想敵国を持てないアメリカは、好戦的な宇宙人の侵略をいま世界で最も待ち望んでいる国であろう。NASAへの積極的な財政支援が待たれるところだ。あと「こんな老朽艦、動かせるわけない」とか叫ぶところで、すぐさまミズーリの艦橋に立つ退役兵を写すカメラアングルにすごい笑った。ツッコミどころは満載だが、アメリカン青春グラフティのテンプレートに2億ドルぶちこむハリウッド特有の物量感に、もはや一周した敬意をしか感じない。

MMGF!!(0)

 プロローグ
 思えば、世界に倦んでいたのではなく、未知に倦んでいたのだろう。
 過去を語る老人は、未だ成さざる者にとって、白紙の課題と同義だった。
 達成される前には重荷で、達成されれば無と同じになる、人生という名の課題。
 はたして、この世界を美しいと思い、愛せる瞬間など本当に訪れるのだろうか。
 その人は、ぼくの諦念へやってきたのだ。
 端正な横顔は少年のようでもあり、少女のようでもある。
 黄金色のくせ毛は、陽光に輝く秋の麦畑のように豊かで、
 ほそく通った鼻筋は、冬に冠雪した尾根のように冷厳で、
 春の若芽のように柔らかな唇は、触れるものを溶かすほどに甘い。
 夏の陽射しを思わせて燃える瞳がうつす表情は、
 ときに賢者の白髪のように老獪で、
 赤子のうぶ毛のようにあどけなく、
 そして、あらゆる光を絶望させるほどに、その深淵には底が無い。
 憧憬を得た者だけが、我が苦しみを知る。
 ぼくの苦しみを、他のだれが理解しよう。
 未だ憧れの熱狂も醒めぬこの身で、かつて魂すら捧げた崇拝を砕かねばならぬ、我が苦しみを。耳朶に残る熱さは、あの人が触れたせいか、憧れが燃え残るせいか。
 鈴のような忍び笑い。虚ろな心に反響して、虜にする。
 では、こうしようか――
 時が経巡り、経巡った時が循環の果てにお前の掌へと還ったその日、
 もし世界が醜いままで、可愛いお前の憎悪にしか値しないとすれば、
 そのときは、乱暴な子どもへ与える玩具のように、この身をお前の恣にさせよう。
 時が経巡り、経巡った時が循環の果てにお前の掌へと還ったその日、
 もし世界が美しく優しさに満ち、お前の愛を捧げるに足るとすれば、
 そのときは、最良の主人を持つ奴隷の幸福の如く、お前の生命を私に捧げるのだ。
 では、手始めに――
 この世界すべての栄華と叡智を順に、お前の卓へ饗することにしよう。