猫を起こさないように
日: <span>2012年3月11日</span>
日: 2012年3月11日

ツリー・オブ・ライフ


ツリー・オブ・ライフ


「このクズを撮影したのは誰だぁっ!! 物語以前の空虚極まる台詞の断片を思わせぶりな映像と宗教音楽で二時間強に引き伸ばし、神が人に与え賜うた映画芸術を完膚なきまでに愚弄した上、神が観客に与え賜うた知性を根底から嘲弄したのはっ!!」「あなた、落ち着いて! 観客が自らの生活と神の恩寵を結びつけて感情移入できるように、そして人類誕生以降繰り返されてきた父と子の相克を普遍的に描くために、わざとドラマ性を抑えた表現にとどめているのかもしれないじゃない!」「ならば無名の俳優を使うべきだろうが!! ブラッド・ピットとショーン・ペンを主演にしている時点で、そんな言い訳は許されんわ!! しかも神がショーン・ペンに与え賜うた演技という恩寵へ一切の敬意を払わず、彼に演技をさせないまま幕を下ろすなどという冒涜、思い上がりを許すわけには……なに……テレンス……マリック……だと!?」「あなた、急にどうしたの?」「ええい、腹が立つ!! ワシとしたことが、事前のリサーチをぬかったわ!! シン・レッド・ラインの監督ではないかっ!!」「ええッ! 人並み以上に映画を見ているあなたが耐え切れず、生涯でただいちど上映途中に席を立ったという、あのシン・レッド・ラインの?」「そうだ!! 泥酔後のタルコフスキーにさえ眠ったことのないワシが上映中、何度も意識を失うという屈辱を味わわさせられた、あのテレンス・マリックだ!」「ただでさえ場末のインターネットで普段から繰り返し辛酸を舐めさせられているあなたに、そんなひどい仕打ちを……ゆるせない!」「その通りだ、ゆるせん!! しかし、何よりゆるせないのは、主よ、私自身です。なぜなら死者への黙祷を捧げるべきときに、私はこのクソ映画への怒りをただ身内へ充満させていたのですから……おお、罪深き私を、どうかゆるしたまえ」