これはnWo社所属の日系アメリカ人、パイソン・ゲイによる英文レポートをカンボジア人スタッフの協力で日本語へ翻訳したものです。日英のパラフレーズが困難な単語をカタカナで表記したり、一部文意の不明瞭な箇所があることをあらかじめご了承下さい。なお、このレポートに記載された内容に関するご質問・ご要望・ご批判は、弊社広報室宛のメールでのみ受付けております。なお、英語以外の言語には対応できかねますので、あらかじめご了承下さい。
十年来のペンパルであるリカが原因不明のディズィーズに倒れ、ステイツのnWo本社から奈良ブランチ所属のミーにアージェントリィ、至急トキオのコミケトー・エイティに向かえというオーダーNo.66が下りマシタ(当社のプレジデントはシスの暗黒卿そっくりのいけすかない野郎デス)! オーッ、ネオ・トキオ! ミラクルという名のパラダイス! スリー・ツー・ワン・ゴー!
ミーはスーツケースに白青のバーティカル・ストライプのトランクスを押しこみながら(なぜって、ジャパンのギークスの間では、白青のホライゾンタル・ストライプのパンティが大人気と聞きましたカラ!)、胸の高鳴りをプット・アップ・ウィズできなくなっていマシタ! オーッ、サード・トキオ! セカンド・トキオ・ユニバーシティを擁する、エンジェルたちの誘蛾灯! オダワラ防衛線、突破されマシタ! オールモスト寝つけないまま、ミーはバレット・トレイン上のパーソンになったのデシタ!
トキオ・ステーションから意気揚々とキャブに乗り込み、行き先をトキオ・ビッグ・サイトと告げると、初老のドライバーのフェイスが侮蔑的にディストートするのがわかりマシタ! プアーなジャパニーズのフェイシャル・エクスプレシオン(ミーのマザーはフランス系移民なのデース!)とは思えぬほどのディストーションだったので、ミーはひどくサプライズしまマシタ! ジャパンにおけるギークスへのヘイトは、ステイツにおけるジューズ、ユダ公どもへのヘイトとセイム・クオリティであることをペインフルに実感させられたのデス!
トゥエニィ・ミニッツ・レイター、ニードルのむしろを思わせるキャブ内のアトモスフィアーからリリースされた先に、シュガーのランプに群がるアンツの如くくろぐろと、ギークスどもがビッグ・サイトを取り巻くのが見えマシタ! まさにシュガーの粒をネストに持ち帰るワーカー・アンツみたいデース! 会場から出てくるギークスはノー・エクセプション、例外なくモエ・ガールの描かれたブックをホールドしていマス! ストリクトリー・スピーキング、厳密にはブックというよりマガズィーン、ガールというよりはベイビーのようデシタ! モエ・ガールたちの表情はいずれもステイツならノー・ダウト、間違いなく寿命をはるかに超えたセンテンス、刑期を食らいこむだろうペドフィリア感をかもしだしていマス! 加えてギークスどものフェイスに張りついた表情は、いずれもステイツならジュリーズ、陪審員たちが数百年の懲役を求刑することにわずかのヘジテイトも感じないだろうクライム感をかもしだしていマシタ!
オオーッ、あれこそがワールドワイドにノトーリアスな土人誌なのデスネ! ミーを包むディープ・エモーションは、ジャングルの奥地で幻のバタフライを発見したときの昆虫学者のイットに似ていたと思いマス! オップス、本社へのレポートは正確を期さなければなりまセン! 土人というのは、ファースト・ネイションを表すジャパニーズの単語なのデース! ジャパンはポリティシャン(ミーがステイしていたときは、The Demonic Party of Japanとかいうロックンロールな名前のパーティが与党デシタ!)も広言するように、モノ・エシック・グループから成る国家なのデス! 土人誌というネーミングはジャパニーズのプライド・アンド・プレジュディズが混ざりあった複雑なセルフ・コンシャスネス、自意識を体現しているのデショウ!
ゼアフォー、ゆえにミーのようなフォリナーのメイドした土人誌は、ジャパニーズのデフィニション、定義では土人誌とは呼べないのデス! イン・ショート、つまりコミケトーではフランスワインなみの厳しいクオリフィケーション・ジェスティヨン(ワタシのマザーはフランス系移民デース! ラブ・マミー!)、品質管理が行われているというわけなのデス! ステイツならばレイシズムと呼ばれかねない偏狭さ(辺境さ?lol)デスが、マザーがフランス系移民のミーはそのナローさがカルチャーの正体であることを知っていマース! (ファック、マクダーナルズ!)
バット、コントラディクティング、矛盾したことにジャパニーズにおけるコミケトーのサウンドは「混み毛唐」と同じなのデス! ザットイズ、すなわち「外人たちで混みあっている」の意味をもインプライしていることになりマス! 民俗学のオーソリティー、クヒオ・ヤナギダ大佐が存命であれば、さぞやこの難問に頭を悩ませたことデショウ! ミーの推測はこうデス! ジャパニーズとネイティブ・アメリカンは同じアンセスター、先祖を持っているという仮説デス! オーッ、汝「混みあう毛唐ども」よ! ネーミングのセンスが似ているのもうなずけマース!
ギークスのウェイブに流されるままトキオ・ビッグ・サイトに入ると、すさまじいヒートとスメルにノージア、ミーは軽い吐き気とめまいを覚え、思わずシルク製のハンカチーフで口元をカバーしマシタ! すさまじいヒューマン・ガベッジに、もはや進むことも戻ることもままなりマセン! このままではファイナル・デスティネーションにたどりつく前にファイナル・デスティネーションにたどりついてしまいそうデス(訳者注:「最終目的地」と人生の終着である「死」をかけていると思われるが、同名の映画に言及している可能性も否定できない)!
バット、ドント・ウォリー、ノー・プロブレム! リカのビジネス・パートナー、ダコバのエージェント、代理人サメン・アッジーフのセルフォン・ナンバーをあずかってきているからデス! ミーのヴィジットの目的は、リカとダコバの土人誌、MMGF!(Modified Mason Gain Formula? 奇ッ怪極まるタイトルデース!)の販促アクティビティなのデシタ! コミケトーにおける裏技、セラーがバイヤーに優先してバックドアーから入場できるシステムを今こそメイク・ユース・オブ、利用するのデース!
ハウエバー、なかなか電話はつながりマセン! ジャパンはセルフォン・デベロップト・カントリーなので、奈良のようなカントリー・サイドのマウンテン・トップでも電話はつながりマス! トキオのようなアーバン・シティで電話がつながらない、こいつはミステリー、エクストリーム不可思議デス!
何度ものトライと長い長いコーリングの後、ファイナリー、ついに不機嫌そうなボイスのガイが電話に出マシタ! オーッ、ユー・マスト・ビー・サメンサーン! ハワユー!
「忙シイカラ要件ヲ手短カニ言エ!」
ドスのきいたボイスは、なぜかミーにハイスクールでのヒエラルキーを思い出させマシタ! ハイッ、手短に言わせていただきマース! リード・ミー・トゥ・バックドアー・プリーズ!
「ハア? テメエドコノ王様ダヨ? 売リ子モシタコトガネエトーシロニ貴重ナサクティケヲ渡セルワケネーダロ! 正面カラダラダラ歩イテ来ヤガレ!」
サドンリー、突然電話は切れてしまいマシタ! きっとビッグ・サイトに固有の電波シチュエーションが原因にちがいありまセーン! それにしても、サクティケとは何なのデショウカ? サクリファイス・ティッツ? ユーギオー的な? 俺はこのたわわな双乳を生贄に捧げて、胸の貧しいアーク・ペドフィリアを召喚するゼ?
そもそもイングリッシュ・ワードではなく、ライスを畑に植える作業、ソー・コールド「作付け」のことにリファーしていた可能性さえ否定できマセン! フロム・エンシェント・タイムス、古来よりジャパンではライスのアマウントが非常にインポータントなミーニングを持ち続けマシタ! コミケトーのバックドアーを使うには、イーチ・ファミリーのガーデンで栽培しているライスを持ってくる必要があったのかもしれまセーン! オーッ、日本の常識世界の非常識! 働かざるもの食う寝る遊ぶ! さすがはワールドに冠たるニート大国デース! ミーは文化の違いにソー・インプレスト、強い感銘を受けつつも、今回のミッションが想像以上に困難なものになることを感じていマシタ(弊社のプレジデントはシディアス卿そっくりのいけすかない野郎デス! アンリミテッド・パワー!)!
ほどなくして、ギークスのウェイブはミーを建物のインサイドへと運んでいきマシタ! ビッグ・サイトの中は、イグザクトリー、ステイツのスラム街を思わせるアウト・ローぶりデス! 壁際でシットダウン(sit down)しているものもいれば、壁際でシットダウン(shit down)しているものもいマス! コミケトーへ参加するために仕事をジャックイン(jack in)したことを公然と自慢するものもいれば、土人誌を片手に公然とジャックオフ(jack off)するものもいマス! 各ブースに掲げられたポスターはクリスタニティをビリーブ・インしているなら、ビッグ・サイトごとヘルファイアに焼き尽くされることを望むほど冒涜的な図画で彩られていマス!
その、サタニズム的な祝祭を体現する見かけとは裏腹に、ギークスたちはキューを乱さずに整然とならんでいるのデス! パスポートを持たないステイツのファンダメンタリストがこの会場を見たならば、あらゆるホーリーとアンホーリーが混在するありさまに、地上へヨハネのアポカリプスがアピアーしたと感じるかもしれマセン!
ハウエバー、フランス系移民の息子であるミーにとってこの程度のエンタルテテ・クンスト(祖父はドイツ系移民デス! ラブ・グランパ!)、退廃芸術はパリの路地裏でエッフェル・タワーの先端を見ながらアルジェリアンにアヌスを突き出して言うファック・シルブプレ、昼下がりのコーヒーブレイクと何ら変わらない平穏なものデース! ミーはギークスどもを持ち前の体格でオーバーフェルムしながら、サメン・アッジーフのブースを目指しマシタ!
バット、なかなか目的のブースを見つけることができマセン! シック・イン・ベッド、病床のリカが手を握るミーへ息も絶え絶えに、「これ……ダコバちゃんの……おっきなポスターにして……はってくれるって、そう、約そくしてくれたの……」と言いながらあずけてくれたイラストを元にブースを探すのデスガ、いっこうに見当たりマセン! ダコバのサークルはウォール・サークル(ウォール・マート? ウォール・ストリート? 意味不明デース!)なのでアット・ワンス、すぐに見つかると聞いていたのデスガ……
イヤ、見つかりマシタ! 会場のウォール沿いへセグリゲートされたエリアに、リカからもらったイラストを発見したのデス! どうりで見つけにくかったはずデス! なぜなら――
二枚の大判のポスターの下に、ひと回り以上小さなサイズで掲示されていたからだ。加えてテーブルの奥、山積みになった在庫の裏側へすっぽりと隠れてしまっており、よほど近くから注意深く見なければ気づかないだろう。段ボール製のつけ鼻を貼りつけるセロテープの下の皮膚にしりしりとしたかゆみが生じる。私は自分の気持ちが急速に冷えていくのを感じていた。地元のだんじり会を軽蔑し、地域の夏祭りを嫌悪する私も、コミケという場でならば祭りの一員になれるかもしれないと信じていた。しかし、待ち望んだ祭りの只中にあって私の胸を満たしているのは、一種の諦念と虚無感である。結局、私はこの人生において「いま」「この場所」に実在することを忌避し続けてきただけのことだったのか――
オオップス! あぶなかったデース! あやうくオサム・ダザイ的なノー・イグジット、出口の無いデプレッションに引きこまれるところデシタ! 気を取り直していつものようにチアフルにいきマース! ハーイ、ディス・イズ・パイソン・ゲイ! ホエア・イズ・サメンサン?
呼びかけに応じて、ウォールを背にしたテーブルの向こうから、ミドル・イースト風の容貌をした男が不機嫌そうにミーをギロリとゲイズしマシタ! その瞬間、ミーの背筋にはハイスクールでの理由なきヒエラルキーの感じと同じ種類の悪寒が走ったことを認めなくてはなりマセン! 口髭にターバン、イエローのアロハという正気をダウトするいでたちのこの男が、リカの言っていたサメン・アッジーフなのデス!
サメンはショルダーズをアングリーさせて隣のブースを占拠するロトン・ガールズ、腐女子ども(これは注釈が必要デショウ! ステイツのゾンビムービーのように身体が腐っているわけではありマセン! 腐っているのはその性根の部分でアリ、精神そのものなのデス! 魯鈍ガールズ、デース!)を押しのけて出てくると、ミーに向けて両手をあわせマシタ! アンドゼン、「あら、アクバル?」みたいなことを言ったのデス!
オーッ! ソレ、知ってマス、知っていマース! ミーはたちまちマイセルフがフルフェイスの笑顔になるのがわかりマシタ! ソウ、これはファースト・ガンダムからの引用に間違いありマセン! ミーはギークスとして試され、合格したのデース! ハートのボトムからハッピーな気持ちになったミーは、サメンのショルダーをバンバンどやしながら「アックバル兄サーン! アックバル兄サーン!」と連呼しマシタ! すると、サメンのフェイスはなぜかたちまち険しさをインクリースし、ミーはハイスクールでの理由なきヒエラルキーの感じをアゲイン、思い出しマシタ!
サメンは再びロトン・ガールズをかきわけテーブルの裏側へと戻っていきマス! ミーは両手でアス・ホールをカバーしながら、サメンとミーを見てウケとかセメとか(ハレとかケのような民俗学用語に違いありマセン!)ひそひそ話をする魯鈍ガールズと視線を合わさないようにしてブースに入りマシタ!
インサイドから見るとスーサイダルな狭さで、在庫のバレーに二人の売り子がひしめいていマス! 一人はエクストリーム猫背のヤングマンで、リアルをゲイズする時間よりもスマートフォンの画面をゲイズする時間の方が明らかに上回っていマシタ! 聞けば、このヤングマンもサメンのブースを間借りして土人誌を販売しているとのことデス! オーッ、フェローシップ・オブ・ザ・コミケトー! ホワッツ・ユア・ネイム?
ミーの問いかけに、ヤングマンはコリア製のペドフィリアだかセクスフォビアだかいうスマートフォンから一秒も目を離さないまま、リプライしマシタ! そのボイスにはミュートとブラーがかかっており、ジャパン在住歴三十余年のミーにとって久しぶりにリスニング力を試される良いオポチュニティーとなったのデス! ヤングマンの名前はオットマン・ゲイリー、栄枯盛衰みたいな名前のマガズィーンに、ソワカ反吐みたいなタイトルのカートゥーンを連載しているとのことデス! ジャパンのコミック・アーティストの多さはルーモア、噂には聞いていマシタが、すでにこのシット狭いブースだけで漫画家占有率は50%を越えていマス! オーッ、まさに「狂うジャパン(ギーク・カルチャーを推進するガバメントの標語)」デスネ!
そしてもう一人はシャドーの薄いカレッジ・ステューデントで、ティピカル・ジャパニーズがオーフンするところのネックをチルトさせるだけのインギン・ブレイなおじぎでレスポンドしてくれマシタ! 苦虫をイートしたような顔でサメンが言うには、このカレッジ・ステューデントがリカとダコバの土人誌をエディット、編集したとのことデス! オーッ、アナタが――
漫画と小説の余白設定を勘違いし、文字密度の高い、極めて読みにくい紙面を作り上げた張本人なのか。生涯に一度とまで思い詰め、本業に影響を生じるほど睡眠時間を削った校正の一部を反映させないまま製本に出した張本人なのか。売れるほどに赤が膨らむ、採算度外視の同人誌を、家人に使途を明かせぬまま土下座して捻出した虎の子の金子による同人誌を、不満の残る形で世に出さざるを得ない状況を作った張本人なのか。段ボール製のつけ鼻を貼りつけるセロテープの下の皮膚にしりしりとしたかゆみが生じる。一瞬、板垣恵介の格闘漫画の如く顔面の中央が陥没するほど右拳をねじこんでやりたい衝動にかられたが、そうしなかったのは単純に怒りを諦念が上回っただけのこと。私の人生に馴染み深い、消極的な惰性による問題の回避だった。
オオオップス! ステイツ・オブ・デプレッション・アゲイン! いまのは本当に危なかったデース! 気を取り直していつも通りチアフルにいきマショウ! ミーはエクストリーム愛想よくシャイシャイとハンドクラップしながら、「ヘイ、ボーイズ! ミーが来たからにはもうダイジョブヨー! 売って、売って、売りまくるネー!」とシャウトしマシタ! ハウエバー、返ってきたのはジャージャー・ビンクスを見るときの古参スターウォーズマニアと同じ中身の視線デシタ! ミーはたちまちマイセルフのフェイスがシリアスになるのを感じマシタ!
オーッ、アウェイ! すさまじいアウェイ感デース! ミーはヘルプを求めてサメンを見マシタが、「オイ、ボサット突ッ立ッテンジャネエヨ。狭イブースニデクノボーヲ入レテオクスペースハネエンダ」とアンチ・ソーシャルなピクチャーの土人誌が山積みされているテーブルへとミーを激しくプッシュしたのデス!
確かに、ミーに売り子の経験はありまセン! ハウエバー、ミーはガイシ(骸死)系企業にふきあれたリストラクチャリング・ストームを生来のチアフルネスのみで切り抜けたほどのガイなのデス! 売り子? プロバブリー、売女の親戚みたいなものに違いありまセン! ミーは肩幅に足を開くと、アスホールをワイドに構えマシタ! サア、ムカイ、どこからでもかかってきなサーイ! ミーの耳元では「帝王V!」の連呼が実際に聞こえるようデシタ!
バット、マイセルフのチークにキアイの平手を打ちつけながら顔を上げると、そこには生気の欠落した目をしたリビングデッドの群れが、内臓疾患を疑わせる土気色をした無表情で棒立ちにスタンドしていたのデス! そして、ケイオスそのものの見かけといでたちをしたギークスが、整然とした二列のキューでコスモスそのものを体現するかのように並んでいるのデス! サド性向を持つデブ専ホモのネクロフィリアならば、あるいは両手をクラップして大喜びするかもしれない光景デス! ハウエバー、いずれの性癖にも該当しないミーはそのとき、ベジタリアンが人食い族の村をヴィジットしたとき感じるだろうディープでマッシブなカルチャー・ギャップに、マイセルフのアスホールがきゅっとシュリンクするのを感じていたのデシタ……!!
To be continued…