猫を起こさないように
月: <span>2009年8月</span>
月: 2009年8月

この自由な世界で


この自由な世界で


もしかすると資本主義は、選択されるべきではなかったのかもしれない。なぜなら、誰もこの過酷な思想の本質に耐えられないように思えるからだ。私たちはこの辺境で、いつまで夢の中に遊ぶことができるのだろう。

コミケットとわたくし

盆に帰るべき故郷もなく、ブヒブヒ言いながら苛烈な肉体労働で日銭を稼ぐわたくしを尻目にして、貴様らはどうせコミケットとか行ったりしてたんでしょう? ナントカさん、久しぶりッス!とか裏返った声で右手を後頭部に乗せながら発話してたんでしょう? これ、今度の新刊なんで!とかハスキーとは別種の形容を与えられがちな甲高い声で広告の裏へ身体に悪いインクでガリ版刷りの紙束を誇らしげに交換していたんでしょう? 精細に膣の内奥を描写できる貴様らは、むしろ労基署の方へ顔を向けながら与えられるコンビニの自給より少ない日当を得るわたくしを尻目に、非課税の不思議な五百円玉や千円札をたくさん手に入れたんでしょう? 親世代となった親業無自覚のおたく共が連れまわす着せ替え人形と同義の女児がその意味を理解せぬまま取らされる扇情的なポーズに貴様らはカメラを向けたんでしょう? 汗をぬぐうふりでよだれをぬぐいながら貴様らは、コミケット参加者の低年齢化には社会的な義憤を感じますよ、ナントカさん! 薄布で擬似的に二次元キャラの表皮を形成することで快楽を得るという、未だ名付けられぬ精神疾患の持ち主どもが鏡の前で練習してきた薄ら笑顔を張り付かせるのに、貴様らは舌なめずりしてたんでしょう? 若者の性風俗の乱れ、有名人の顔面を精細に描写した長方形の紙片と交換にきっと彼女らとは交歓におよぶことができるのでしょう? 馬鹿にしないで! わたし知ってるんだから、そのくらい! そして、あの有名な、身体に悪いインクでガリ版刷りした売れ残りの紙束を投げ込むことで火勢を強める最終日のとんど焼に蝟集して行われる、擬似的二次元キャラとの大乱交大会を貴様らは楽しんだのでしょう? 常人を倍する脂肪を運送した肉厚の貴様らは頭髪と入れ替わりに前進した額を脂でてらてらと光らせながら、常人を倍する速度で次々と性的絶頂に達したのでしょう? 夜明けの電車を悪臭で充満させながら先端をちり紙でぬぐうときの、社会性を逸脱した貴様らの笑顔はさぞかし素敵だったのでしょう? そして貴様らは、毎年この時期にコミケットに行かなかった旨を記述するわたくしは、さぞかしコミケットに行った貴様らをうらやましく思っていると思っているのでしょう? うらやましくなんかないもん! 全然行きたくなんかないもん! 純潔のほうが大切だもん! 来年もぜったいにわたしを誘っちゃダメ! ダメなんだからね!

チェ


チェ


「モーターサイクルダイアリーズ」「チェPart1」「チェPart2」「コマンダンテ」の順に見れば、すごく贅沢な感慨に浸ることができます。ぼくと君の世代に共通した、自己憐憫たっぷりの我が我が口調を反省したい気持ちになれますね。あと、賢明な諸氏においては改めて指摘するまでもないと思いますが、念のため。“生きながら萌えゲーに葬られ”の一節であるところの、「思えば高い代償であるが、おたく以外の人間による不断なるおたくの収奪を根絶したいと願う純粋な熱情によって、それは実現可能となるはずだ」は、氏に関する著作からのパロディです。え、気づいてなかったって? この、モンモウ教徒め!

ベンジャミン・バトン


ベンジャミン・バトン


原作未読の小生にとって目当てはケイト・ブランシェットでしたが、たいへん楽しみました。人生とはlearnとunlearnから出来ており、始まりと終わりを逆にしても成立するという構図がとても秀逸でした。ぼくもそろそろ人生を肯定するような更新をしたいです。