猫を起こさないように
よい大人のnWo
全テキスト(1999年1月10日~現在)

全テキスト(1999年1月10日~現在)

ヤマト2199劇場版


ヤマト2199劇場版


監督はきっと誠実な人物なのだろうな、と思う。ドギツイ権利者たちの妄言を聞き流して我慢強く折衝を重ね、ドギツイ愛好家たちの煮詰まった脳内映像からする罵倒に耐え、ついぞ途中で投げ出すということをしなかった。演出の方法にしても伏線の張り方にしても、どこか観客の知性を信頼している感じがある。ここでこの絵を見せて、この台詞を聞かせれば、こう理解するだろうと計算してあり、観客はどれひとつとして見落とさないはずだと信じている。この意味で、是枝監督と近い方法論で映画を作ってるように見える。だ実写と違って、端正な演出意図を補完する俳優の肉の実在感がないため、盛り上がるべき場面でもひっかかりなくスルスルと流れていってしまう。全体的に淡い風味で、老舗の板前に「親爺、味が薄いよ」と言っても、「そうですか」としか返ってこない感じ。これ対して、観客を心から馬鹿にしているどこぞの監督が作ったものは、濃厚豚骨ラーメンを罵倒されながら屋台ですする感じで、しかもこの親爺、「それくらいじゃ味が足りねえだろう」とか言いながら食べるそばから柄杓でラードをつぎ足してくる。その態度にはムカつくが、ラーメンは舌が痺れるようなうまさだ。もし酔客が一言でも味に文句をつけようものなら、親爺自身がカウンターを飛び越えての場外乱闘になり、そのあと一週間は店を閉めてしまう。閑話休題。ストーリーは新スタートレックの前後編を思わせ、ホテルでの芝居とか、星巡る箱舟のデザインとか、すごくそれっぽい。ただ、スタートレックと決定的に違うのは、女性クルーの扱いであろう。旧作の様々な矛盾に解決をつけていった新ヤマトだが、ボディラインを強調するピッチリスーツにだけは、ついぞ「この方が勃起の傾斜角が鋭かったから」以上の説明をつけなかった。この世界では、モデル体型を維持できなくなった四十路の女性は、全員宇宙葬形式で退艦させられるに違いない。もし続編があるとすれば、無意識の媚びをふりまく未通女ばかりでなく、新スタートレックのガイナンみたいな魅力あるオバハンクルーに登場して欲しい。その些細なできごとは、結果として本邦のアニメの天井を押し上げる役目を担う……かもしれない。

ゴジラ


ゴジラ


また、ケトゥ族の別の若いギークにしてやられたなあ。 本邦では若さ以外に取り柄のないゲリチンジェット噴射a.k.a.ションベンジャリタレによって完膚なきまでにファイナルウォーズされてしまったシリーズが、深いレスペクトとともに異国の地で復活する。なぜいまさら死に体ゴジラの新作企画が通ったのか、その理由がわかった。核へのメッセージを孕ませるのにうってつけの本作を、あの事故にも関わらず無視しておきながら、ハリウッド様が巨大資本で宣伝してくれたからそれに乗っからせてもらおうっていう、臭気ただよう厚顔無恥に心の底から寒気がする。しかも事情を知りながら、嬉々として監督を引き受ける者さえいるのだから、やりきれない。外的状況に対するアンテナの低い感度と、昔からのファンというアーパーギャル的脳天フェイラーと、夏休みの宿題みたいな現状から逃げることが動機を構成するほとんどだと断言してもいい。しかも、ハリウッドより低予算だからみたいなエクスキューズを早くも口にしているようだ。我々の体験が新しいゴジラの本質をいかに変えるかを外の人々は読みとりたいと思っているに違いないのに、バジェットの差が生む絵面ばかりを気にしている様子はおたくの所作そのもので、情けなくなってくる。おのれが依拠する土地に刻まれた傷跡に何らの痛痒も感じていないからに違いなく、某エヴァQのあの皮相的な仕上がりも、だとすれば納得できる。あのねキミ、カネカネ言うけどね、破のときインタビューで「皆さんのおかげで生まれて初めて潤沢な資金を得た」とか答えといてからに、結局ピアノのCG作るのにごっついカネつこてましたやん。こんどは巨大トカゲのウンコの形した、純金の延べ棒でもつくるんでっか。とにかく、いまこの国でゴジラを作ることの意味に対する鈍い感性と、たぶん無邪気さにゾッとさせられるばかりだ。だいぶ話がそれたが、エメリッヒじゃないほうの新しいケトゥ族が撮影した神トカゲ、最高です! 日本の文化考証が相変わらずアレなのは、被災した方々の感情を傷つけないためですよね、わかります!

エクソダス


エクソダス


ある虐げられた集団が国家規模の勢力に対抗しようと考えれば、狂信によるテロルを選択するしかない。そして、あらゆる権威が少数のテロルから始まるとするならば、現代世界での騒擾はやがて新たな神話と化すのか。ともあれ、この出エジプト記、神の使徒は幻覚で、マンナは降ってこず、十戒を火文字ではなく手ずから彫刻してみせる。リアリティに寄せることで逆説的に聖書の記述を真実として補強しようとするのは狡猾だな、と思った。

平成最後のテキストサイト100人オフ顛末書

 レースのカーテンごしから注がれる暖かな午後の陽の光で目を覚ます。
 意識が覚醒し、自分がだれであるかが戻ってくるまでの、一秒にも満たない瞬間――
 その一瞬だけが、いまのわたしにとってのやすらぎだった。
 インストールされるみたいに自我がおりてきて、そして、あの日の光景がフラッシュバックする。
 やすらぎはたちまちに去り、わたしは寄る辺ない幼子のように両肩をかきいだくと、さめざめと泣いた。
 どうして、あんな場所に行こうと思ってしまったんだろう。
 あの日以来、まるで浜辺に寄せる波のように、後悔が尽きることはない。
 わたしはいけないとわかっていながら、舌でふれてしまう口内炎のように、もう幾度目だろう、あの日の記憶を反すうしはじめた……
 わたしの名まえは、琴理香(こと・りか)。どこにでもいるふつうの女の子。
 でも、わたしにはヒミツがある。小鳥猊下(ことり・げいか)ってハンドルネームで、「ねこをおこさないように」っていう名まえのちょっといけないホームページを運えいしているの。ともだちも知らない、お父さんとお母さんにも言ってない、わたしと、そしてあなただけのヒミツ。
 いま、わたしは東京にむかう新かん線にのっている。新じゅくでおこなわれる、テキストサイト100人オフ会に参かするためだ。
 ながいあいだ会っていない管り人、はじめて会う管り人、そしてなんてったってわたしのアイドル、ウガニクのホームページがやってくる!
 これからおこるだろうできごとを想ぞうするだけで、自ぜんと笑みがこぼれた。
 わたしがほほ笑むと、新かんせんの窓ガラスにうつった気もちわるいオッサンの顔も楽しそうに笑った。
 でも、ここまでくるのは本とうに大へんだった――
 わたしはかん西の中小きぎょうの営ぎょうたん当で、オフ会の当じつ、大きなプレゼンをまかされていた。でも、プレゼンが終わってすぐに出ぱつすれば、いち時かんくらいの遅こくでまにあうはず。
 鉄どう検さくで何ども「かくにん!よかった」して、一かげつまえから同りょうにおかしをくばったり、何ども何どもこの日は早たいするって、根まわしした。ブラックきぎょうのへい社では、半きゅうをとるだけでも大へんなのだ。
 でも、いちばん大へんだったのは――
 「ハア? このクソいそがしい時期に、こともあろうか私用で有給申請ってどういうこと?」
 こめかみにしっ布のカケラをはりつけたおんな上しの大ごえに、ビクッとなる。
 「あの、でも、有きゅうは理ゆうを書かなくてもいいって……労どう基じゅん法にかいて……」
 「なに、アンタ! まさか労基にでも駆けこむつもりなの!」
 おんな上しがヒステリックにさけぶ。
 「あの、そんなつもりは……」
 土よう日なのに……本とうは、休じつ出きんなのに……。しゅう職氷が期のせいで、こんなブラックきぎょうにしかじぶんのい場しょがないことに、なみだがジワッとでてきた。
 「私用とやらのせいでプレゼン失敗したら、アンタのクビくらいじゃすまないからね!」
 強れつなば倒に身がちぢんだけど、労どう基じゅん法という単ごがきいたのか、有きゅう届けはなんとか受りされた。
 当じつのプレゼンは、大せいこうだった。満じょうのはく手を受けながら、わたしははや足で会じょう出ぐちへむかう。おんな上しは出ぐちで腕ぐみして、こちらをにらみつけてきた。業むに感じょうをゆう先させるタイプで、きょうも会しゃのそん失よりも、わたしの失ぱいをねがっていたにちがいない。
 「失れいします」
 かるく会しゃくすると、小ばしりにかの女の前を通りすぎた。
 せ中にことばがとんでくる。
 「いいご身分ねえ! みんなはまだ働いてるっていうのにさあ!」
 なみだがジワッとでてきた。けれど、ふりかえらずに駅まではしった。
 電しゃを2つのりついで、新大さか駅にとう着する。駅のこう内をい動するとき、券ばい機できっぷをかうとき、何ども、何ども、うしろをふりかえった。バカげているかもしれないけど、おんな上しがわたしをつれもどすために、鬼のぎょうそうで追いかけてくるような気がして、しょうがなかった。
 発しゃのアナウンスがあって、新かん線のとびらがはい後でしまったとき、とうとう逃げきれたことに、本とうに心のそこからホッとした。このしゅん間まで、オフ会に参加できると自ぶんでもしんじていなかったみたい。
 自ゆう席の窓がわに腰をおろすと、ずいぶんかんじたことのなかった、うきうき、ワクワクする気もちが全しんをみたしているのに気づいた。ブラック労どうでよく圧されていた、心の自ゆうをとりもどせた気ぶんがした。
 どう中、ずっとそのしあわせな気ぶんはつづいた。とつ然シンナーしゅうがするとおもったら、となりの席のじょ性がネイルをはじめていたりとか、「シューマイ臭せェ」「あ、ホント……」「だれか温めるシューマイやったんじゃないのォ」「うおォン」とか、自ゆう席なので、じょう客の民どはさい悪だったけど、ぜんぶゆるせた。
 でも、新よこ浜をすぎたあたりで、ひさしぶりのオフ会だし、ちょっと身なりを気にしてみようかな……なんて思ったのがよくなかった。
 連けつ部の洗めん台で、髪の毛にディップをつけてアッパーな印しょうをつくろうとしたら、うまくいかない。何どもくりかえすうちに、顔しゃモノのアダルトビデオで大りょうにせい液をかけられたみたいな、絶ぼうてきなし上がりになった。
 ほどなく、乗りかえ駅の品がわにとう着し、顔しゃモノのアダルトビデオで大りょうにせい液をかけられたみたいな髪がたで、新かん線のかい札をでた。
 奈良の田なか者には広すぎる駅で、山手せんのホームがわからずウロウロとしばらく歩きまわるはめになった。顔しゃモノのアダルトビデオで大りょうにせい液をかけられたみたいな髪がたのこともあって、とおりすぎるみんながわたしを笑っているような気がして、なみだがジワッとでてきた。
 しょうがなく駅いんさんに、顔しゃモノのアダルトビデオで大りょうにせい液をかけられたみたいな髪がたのまま、「やまてせんはどこですか」とたずねた。そうしたら駅いんさんは、田なか者への軽べつがふくまれた表じょうで、「やまてせん? やまのてせんなら、50メートルほど行ったところですね」と答えた。
 電しゃにのったあとも、みんなが顔しゃモノのアダルトビデオで大りょうにせい液をかけられたみたいな髪がたを笑っている気がして、わたしはずっと下をむいていた。
 新じゅく駅のホームにおりると、突ぜん知らない人が、「これからどこに行くんですか?(髪の毛に精液がついていますよ)」と話しかけてきた。あれふ?みたいな、こわいしゅう教のかんゆうかもしれない。わたしは首をちぢめて、し線をあわさないようして、足ばやにその場をはなれた。
 東ぐちをでると、外はどしゃぶりの雨だった。おかげで髪の毛についたディップ(せい液)は流れおちたけど、気ぶんはもうさい悪だった。
 オフ会の会じょうダーツビー・バー? ダーツバー・ビー? バーツビー・ダー?は予そうもしてなかった、地下のお店だった。わたしは幼しょう期に段ボールで施せつのまえにおかれていたトラウマから、へい所恐ふしょうだった。
 わたしはごくりとつばをのみこむ。最しょの一だんに足をかけようとしても、黒ぐろとした四かくいやみが、段ボールの中から見あげたくもり空を思いださせて、ほんの一ぽをふみだすことができない。
 そうこうするうち、気もちが急そくにさめていくのがわかった。
 もう帰っちゃおうかな。わたしひとり来なくても、だれも気がつかないんじゃないかな。
 ううん、わたしがいたら、むしろみんな迷わくかも。
 子ども時だいの気もちがよみがえって、ジワッとなみだがでてくる。
 そのとき――
 わたしの内がわで大きなこ動がきこえた。実さいに、血のながれがはやくなって、視かいが大きくゆれた。
 だめ、パイソン、いま出てきちゃ。わたしは、琴理香としてみんなに会いたいの……!!
 ねがいもむなしく、わたしは意しきを手ばなしてしまう。
*これより先は、弊社のスタッフであるロシアクォーターの米国人パイソン・ゲイのレポートを、シリア人スタッフがアラビア語を経由して日本語に再翻訳し、それをメガネのチ……もとい、視野および垂直方向にチャレンジされているボランティアスタッフが雨だれ式のタイピングでネット用に整形したものです。一部文意の通らない部分、政治的・倫理的に不適切な部分、タイプミスおよびミススペル等がありますが、当時の瞋恚状況を考慮してそのまま掲載させていただいております。あらかじめご理解賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。Sorry, this page is Japanese only!
(切り忘れたマイクから響く怒号)いいご身分よねえ! 日本語しか話せないくせに上級市民きどりなんだからさあ!
 ウォアアアアーーッ! しみったれたネット界隈のギークどもになんでオレサマが気を使う、ユーズ・キ・オーラせなアカンねん! ワンハンドレッドミーター先で御幸のようすを察知して、入り口まで全員でお迎えに上がるのがサブジェクツ・マナー、臣下の礼儀やろガ! リカのウィーク・イナフ、脆弱なセルフ・コンシャスネスからパーフェクトリィにメタモルフォーゼしたミーは、フェイスカラーをよく見せるスカーレットの勝負ネクタイを締め、アズール色をしたイタリアン生地の高級スーツに身を包み、メイド・イン・ブリテンの革靴でステアー、階段を音高くカツカツいわせながら、ビーツバー・ダーにエンター、入場したのデス! 後からこのパーリィにはミズショウバイ・ステイトのフィーメイルが何人か参加していたと知りマシタ! ハウエバー、ナン・オブ・ゼム、だれからも 声をかけられることはありませんデシタ!  ミーのフェイスとイデタチを見てビッグ・スペンダー、太い客だとわからぬようなクモリ・ステイトのマナコ・アイズではさぞかしメイク・リビングにディフィカリティを感じているだろうコト、ご推察申し上げマス!
 レセプション、受付にはトゥー・メイルズ・アンド・ワン・フィーメイルがスタンド・バイしていまシタ! ヘイ・ユー・ガイズ、ゲイカ・コトリがいじましいネット・スカムどものミーティングにアッド・グレイス、花を添えに来てやったヨー! ミーが勢いよくオドオド・ステイト(状態)でそう告げると、イイチコ・キングダムのエクス・マネジャーであるイワクラと、名も知らぬフィーメイルは、
 「本当に実在したんですね」
 「猊下はテキストサイト界のレジェンドだから」
 「何人か、猊下が来ているか受付で聞いていきましたよ」
 などどオール・アウト、全力でミーをフラッタリング、褒めまくりマシタ! 先ほどまでのデプレッションはどこへやら、すっかり気をよくしたミーは、ファイブ・サウザンド・イェンというトゥー・エクスペンシブなエントランス・フィーをイワクラのフェイスに「テイク・ザット・ユー・フィーンド!」とアターしながら叩きつけると、「よい大人のnWo(猫を起こさないように)小鳥猊下」と書かれたドッグタグ、犬の鑑札をぶらさげてイキヨウヨウ・ステイトでステップ・イン、会場に足を踏み入れたのデス!
 ハウエバー、イイチコ・キングダムの言葉をビトレイアル、裏切るようにノー・ワン・カムズ・ニアー、だれもミーのことにアウェアー、気がつきマセン! メイド・イン・スイスの高級クロックをグランスアットすると、オールレディ開会からワン・ナワー、一時間が経過していマシタ! ダンス・フロアーのスメリー・ギーク・ルッキング・ガイどもは、ノー・ソバー・オール・ドランクン、すっかり出来上がっていたのデス!
 段ボール製のつけ鼻を貼りつけるセロテープの下の皮膚にしりしりとしたかゆみが生じる。私は自分の気持ちが急速に冷えていくのを感じていた。会場はすでにいくつかのグループに分かれ、互いに旧知の面々が談笑するという状況が出来上がっていた。無理もない。開始から、一時間も経過しているのだ。手もち無沙汰にツイッターでテキストサイト100人オフを検索すると、「テレホーダイ!」という乾杯の音頭でオフ会が始まった旨が楽しそうに書かれていた。私は、またもや自分が遅れてきたことを知ったのだ。私の人生はいつでも間に合わない。最適の瞬間を逃し続け、チャンスの後ろ姿を見送る後悔ばかりだ。もうだれとも話さずに会場を去ってしまおうかと考え始めたそのとき――
「小鳥猊下じゃないですか! お久しぶりです、テルです」
 ルックバック、声の主をふりかえると、グラッスィーズのスリムマン、優男がミーにシェイクハンズを求めてきていたのデス! ミーはモア・エクスペンシブなミーのグラッスィーズを誇示しながら言いマシタ! オーッ、テルさーん、ロング・タイム・ノー・シー、久しぶりなのネー!
 できる限りのチアフルネスでグリーティング、挨拶を交わしマシタガ、マイ・メモリーをいくらサーチしても、ミーにはこのスリムマンと会った記憶がありマセン! アンビギュアス、曖昧な気配を察知したのデショウ、「やだなー、前に大阪で会ってるじゃないですかー」とテルを名乗るキティ・ガイ、子猫ちゃんは言葉をかぶせてきマス! アルコールでブレイン・セルのロング・ターム・メモリー、長期記憶がデストロイされているボケ・ステイトのミーには、フロム・タイム・トゥ・タイム、ときどきこういうことがありマス!
 バット、テルを名乗るスリムマンにもミーのバッド・メモリーに対するレスポンシビリティ、責任はあるのデス! とかく古いテキストサイト界隈のハビタット、住人どものうち、特にスカしたテキストをディスクライブする連中は、テルとかニゴとかゴレとか、書いたテキストの方がリーディング・ロール、主役であると言わんばかりに、トゥー・シンプル、簡潔すぎるハンドル・ネームをつけるテンデンシー、傾向がありマス! イッツ・トゥー・ハード・トゥ・リメンバー、ジャパニーズ非ネイティブのラシアン・ハーフのミーには覚えにくいことこの上なしデス! イン・アディション、加えてネット・サーチにはアット・オール、まったく引っかかりマセン! ミーとリカのユニット名「小鳥猊下」はモア・ザン・エニシング、何よりもエゴ・サーチに特化したネーミングなのデス! アプルーバル・デザイアー、承認欲求をフルフィルするためのエゴサにつぐエゴサへ耐える強度を持ったハンドル・ネーム、それが小鳥猊下なのデス! イン・ザット・レスペクト、その点でウガニクというハンドル・ネームはオールモスト・パーフェクト、ほぼ完璧デス! この珍奇なイントネーションはワンス・ユー・ヒアー、一度聞いたらネバー・フォーゲット、忘れることがありマセン!
 オーッ、アイ・オールモスト・ファーゴット・アバウト・イット、あやうく忘れるところデシタ! このオフ会に参加したパーパス、目的はウガニクのホームページに会うことデス! ミーはテルにホエア・ウガニク・イズ、ウガニクがどこにいるか息まいてアスクしマシタ!
 「ああ、ウガニクさんならあちらの隅におられますよ」
 テルがポイント・アウト、指さした先にはワイアードなアトモスフィアーをかもすグループがいマシタ! サンクス、テル! ミーはテルに腰の引けた熱いハグをギブすると、ハート・ビート・ファスト、胸が高鳴るのを感じながら、トゥエニイ・イアーズ、二十年をかけてたどりついたラスト・フュー・ステップス・トゥ・ウガニク、ウガニクに向けた最後の数歩を歩いたのデス! ライク・エターニティ、それは周囲の光景がスロー・ダウンするような、長い長い一瞬デシタ!
 ヘイ、ウガニク・サン、ミーが小鳥猊下ヨー! ミーはできる限りのポライトネス、慇懃さでベンド・ダウン、腰をフォーティ・ファイブ・デグリーに曲げながらビジネスカード(ジョーク)を差し出しマシタ!
 「ああ、貴方が小鳥猊下ですか。ようやく会えましたね。ウガニクです」
 言いながら、そのジェントルマンはビジネスカード(リアル)をミーとエクスチェンジ、交換したのデス! そこにはマネージング・ディレクターの肩書と、ウガニクのリアル・ネームが書かれていマシタ!
 「実はね、猊下の質問箱にウガニクが来るって書きこんだの、私なんです」
 なんというソウシソウアイ・ステイトでショウカ! ミスチービアスリー、いたずらっぽく告げるその言葉に、ミーの目頭はゲットホット、熱くなりマシタ! そしてボウダ・ステイトの涙を流しながらマイ・ヒーローとシェイク・ハンズ、握手を交わしたのデス!
 「小鳥猊下のことは、スヰスの川井俊夫さんの周辺だと思っていたので、私のファンだというのには、正直びっくりしました」
 出た、出マシタ、トシオ・カワイ! ミーはス・ステイトにリターン、戻りマシタ! これを言われる・オア・言われているのを見るのはもう何度目かわかりマセン! なぜテキストサイト・ギョウカイのクロウラーどもは、ミーとトシオ・カワイをセイム・カテゴリに入れたがるのデショウ! トシオ・カワイは書くテキストとヒズ人生が不可分に融合した、深海魚のようなモノホンのモンスター、別格デス! トシオ・カワイに比べれば、ミーはニセアカギにすぎマセン! ナラ・プリフェクチャー在住のミーにとってライク・ディス、このようなトキオでのオフ会参加よりはるかに会うハードルは低いはずデスガ、フィルド・ウィズ・フィアー、怖くて偶然にも会いたいとはワン・ミリミーター、1ミリも思いマセン!
 レッツ・リターン・トゥ・メイン・サブジェクト、話題をウガニクに戻しマショウ! アンド・モア・サプライジングリー、さらに驚くことにウガニクはトゥー・ラスカルズ、二人の実ジャリをアカンパニイング、連れてきていたのデス! オーッ、キッズの相手は得意デース! ミーはサイトが示すように根っからの子ども好きなのネー! ノット・アンダーハート・バット・ピュアハートなミーは、ロウアー・エレメンタリー・ステューデントの方のジョージィ(女児の意か?)へチアフルに話しかけマシタ!
 ヘイ、ミーはユア・ファーザーのビッグ・ファンなのヨー! ユーはユア・ファーザーが本当はフーか知っていマスカ? ユーはユーのファーザーが書いたテキストをプロナウンス、音読したことがありマスカ? 我ながらひどい質問デス! バット、ジョージィはカバンから「教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書」を取り出し、「これ読んだ」と言うのデス! プリティーなその仕草を眺めるウガニクの表情は確かにファーザーのイットであり、モア・オーバー、さらに言えばドーターを持つプレイボーイのファーザーのメランコリー、憂悶をたたえていマシタ! フィーメイルに向けたかつてのマイ・バリューズ、価値観が他のメイルよりドーターにも向けられるポシビリティ、可能性をイマジンするときに訪れるペインフルネスはミーにも覚えがありマス! ミーはナラ・プリフェクチャーでドカチンをする身デスガ、ステイツにはトゥー・ドーターズ、二人の娘を残してきているファーザーでもあるのデスカラ! イン・アザー・ワーズ、すなわちウガニクのサファリングはミーのサファリングと同じイットなのデス! ゃだ……ぁたし……すごぃゎかる……ゎかりみ……すごぃょ……!!
 ミーの感慨をプリベント、さえぎるようにジョージィを不審なミドル・エイジ・パーソンが抱き上げマシタ! すわ、キッドナッピング・ユース、未成年略取誘拐の現行犯デショウカ! ミーはヒズ・フェイスへのボクサー仕込みのパンチングでウガニクズ・ドーターを救出せねばと身構えマシタガ、トーのウガニクは気に留めた様子もありマセン! 聞けばこの男、ワールド・ナイン・ワンのナガタという人物で、ウガニクのアクウェインタンス、知り合いのようデシタ! ミーはふりあげたフィストをダウンしマシタガ、ベリー・ハードなジョージィへのタッチングを見るにつけ、ナガタへのエル・ジー・ビー・ティー・ピー・ゼット・エヌ疑惑は深まりマス! ミーのフィアー、危惧をよそに酸による回転数増加?みたいな名前のサイト・マネジャーであるトモミチが、いつでも通報できる程度の距離感でウォームリィ、生暖かくそのクンズホグレツ・ステイトを見守っていマシタ! さすが、ヤンオデ周辺デス!
 オフ・レポート・ベガー、安全圏からゲンバのスィート・シズル感をデザイアー、渇望するオフレポ乞食どもはテキストサイト界のレジェンドであるウガニクのさらなるインフォメーション、情報を求めているのデショウ! オーケー、イットにアンサーするにはアッパー・エレメンタリー・ステューデントのウガニクズ・サンの容姿をディスクライブすればグッド・イナフ、よろしいデショウ! スツールに腰かけたこのボーイ、ユキオ・ミシマに見初められていた頃のアキヒロ・ミワをシリアスリー彷彿とさせるグッド・ルッキング・チャイルドなのデス! ゃだ……もぅ、みっめなぃで……ぁたし、ぬれちゃぅ……!
 「ほめられてるんだよ、わかる?」
 ホワット・ア・グッド・ファーザー・ヒー・イズ! なんというよい父親ぶりデショウ! ジェントルなその眼差しと横顔からは、ノー・アソシエイション・オブ・ギコハハ・アンド・ヒギィなのデス!
 サドンリー、ミーはウガニクのネイムカードにパブリッシャー、出版社の名前が書かれていることにノーティス、気づいたのデス! ミーのビジネス・バッグには7年前にリカと作った同人誌――SMD虎蛮へのひどいドゲザ歓待で数枚のイラストレーション、挿し絵を描いてもらいマシタ!――が忍ばせてありマス! ソウシソウアイ・ステイトをテイク・アドバンテージ、利用してエクスプロージョン・アンド・デス、大爆死をとげた同人小説をリアル・パブリッシングにつなげる布石をストライクするのデス! アザワイズ、でなければリカがノット・フロート、浮かばれマセン!
 ヘイ、ウガニク・サン、ミーはトゥエニイ・イアーズ、二十年間ミーをイグノアし続けてきたリアル・パブリッシャーどもに恨みがあるのヨー! バイ・ザ・ウェイ、ところでここにミーがセブン・イアーズ・アゴーにメイクした同人誌が――
 言いかけて、静かな圧に息を呑む。柔和な父親の印象をそのままに、目だけが笑っていなかった。それは、生き馬の目を抜く厳しい業界で三十五年を生き延びてきた出版社の、常務取締役の目だった。私は言いかけた言葉を引っ込め、不自然にならぬよう別の話題へと移った。逆の立場を考えれば、当たり前のことだ。実力も素性もわからないだれかが突然、売り込みに社を訪れたとして、私は内心の軽蔑を抑え、表面上は飽くまで慇懃に追い返すだろう。岡田は、そんな私の内面を知らぬふうで会話を続ける。段ボール製のつけ鼻を貼りつけるセロテープの下の皮膚にしりしりとしたかゆみが生じる。私は自分の気持ちが急速に冷えていくのを感じていた。コミュニケーション能力がおありですね――少しも褒められている気がせず、背筋に冷たい汗が流れる。フェイスブック、やってらっしゃらないんですか――やっていない。そもそも関西の中小企業に務める一営業に、開帳に足る恥ずかしくない個人情報などあるわけがない。また、ネットでもからんできてくださいね?――私は二十年ほど前、カナダに短期留学したとき、ホストマザーが別れ際につぶやいた言葉を思い出していた。必ずまた帰ってくると言った私に、ホストマザーは寂しげにこう言ったのだ、”It never happens.”と。
 「すいません、ちょっと飲み物を取ってきます」
 私は逃げるようにバーカウンターへ向かうと手酌でビールをつぎ、二杯、三杯と飲み干した。サフランライスと鶏肉の煮込みをガツガツと嚥下し、四杯、五杯と手酌のビールを飲み干す。酩酊という救いが脳を満たし、例えようのない負の感情はやがて虚空へと消えた。
 ウォアアアアーーッ! なんでトーキョーまで来てワークプレイス、職場と同じ気持ちをテイスト、味わわなアカンねん! ミーはシチュエーションを仕切り直すべく、グラスを片手にパーティシパント、参加者どものドッグタグをゲイズしはじめマシタ! アンドゼン、フロアーにいるヒューマンどものトゥー・サーズ、下手をするとフォー・フィフスのサイト名をまったく知らないことに気づいたのデス! これはタクティクス、作戦を練らなければなりマセン!
 サドンリー、突如ミーの頭上にライトバルブ、電球がピコーンと光りマシタ! ジャパンはエンシェント・チャイナから儒教精神を道徳としてヘリテッジ、受け継いだカントリーなのデス! 儒教精神をリプレゼントするフェイマス・ワーズがありマス! チャイルド・キャント・ギブ・バース・トゥ・ペアレント、「子は親を産めない」デス! イット・ミーンズ・ザット、それはつまり、マザーズ・チツ、母親の膣から一秒でも早くアウトサイドへ這いずり出たほうがよりグレートであるという思想デス! ミーのエヌ・ダブユ・オーは1999年のジャニュアリーに開設されマシタ! かのノトーリアス、悪名高いツー・チャンネル(現在ではファイブ・チャンネル)よりも早くインターネットにイグジスト、存在したのデス! 1997年開設のウガニクのホームページをのぞけば、この会場にミーのエヌ・ダブユ・オーに勝てるテキストサイトはいないのデス! なんというマーベラスな気づきなのデショウ! ムーブ・ウィズ・ヘイスト、善は急げ、暑苦しいポジティブネス、積極性で就職アイス・エイジ・エラ以降をサバイブしてきたミーは、このスプレンディドなアイデアをすぐさま実行に移しマシタ!
 ヘーイ、ミーのサイトは1999年にオープンしマシタガ、ユーのサイトは何年に開設したのデスカ? 効果はテキメン、ミーに話しかけられたボーイズ・アンド・ガールズ、エスペシャリー、ガールズはミーからオウイツするアウラに気圧されたのデショウ、半笑いでミーから遠ざかっていきマス! 次々とジャクショウ・ステイトのザコ・マネジャーどもがキックト・アウト、蹴散らされていく中、ひとり悠然とグラスをチルト、傾けるシュッとした金髪がいマシタ! ウィズ・ノー・フィアー、恐れを知らぬヤング・ルッキング・マンのドッグタグをゲイズするとロジカル・パライソと書かれていマス! パライソ・サ・イクダ……!! ミーはインサイド・ブレインのテキストサイト名鑑を高速でサーチしマシタ! ロジカル・パライソの開設年月日は1999年1月20日、エヌ・ダブユ・オーは同年1月17日……!! 男子スリー・デイズ会わざれば汝刮目アイズ、きわどい勝負デシタガ、残念だったなカイバ! ミーの勝ちデス!
 ヘーイ、ワタナベ・サン! ミーよ、ミーがエヌ・ダブユ・オーのゲイカ・コトリなのヨー!
 「ああ、知ってますよ」
 オーッ、オールモスト・トゥー・ハンドレッド・ミリオン・ヒットのテキストサイトに、ゼロ・ポイント・セブン・ミリオン・ヒットのミーがリコジナイズド、認識されていマシタ! テキストサイトにとってモスト・インポータントなのがバース・イヤー、開設年なのはゆらぎませんが、セカンド・モスト? サード・モスト? ノンノン、フォース・モストぐらいにはアクセス数にも意味はありマス! ミーはうれしくなって、たたみかけマシタ! エヌ・ダブユ・オー、読んでマスカ? どの更新がモスト・フェイバリットなのデショウカ? ミーの問いかけにワタナベはリップを侮蔑的にディストート、歪めマシタ! 
 「アハハ、読んでません」
 一瞬のためらいもない即答だった。満面の笑顔の中で、目だけが笑っていなかった。本当に、心の底から目の前の人間をどうでもいいと考える人間にだけ可能な、殺人鬼の目だった。この男は、私が目の前で生きたまま解体されたとして、何の痛痒も感じずに私の臓物を肴にグラスを傾け続けることだろう。段ボール製のつけ鼻を貼りつけるセロテープの下の皮膚にしりしりとしたかゆみが生じる。私は自分の気持ちが急速に冷えていくのを感じていた。沈黙のうちに渡辺のファンを称する女性が現れ、彼の意識はそちらへ移った。そして、眼前のいじましい存在は、彼の人生の中から永久に葬り去られたのである。
 私はグラスを持ったまま、フラフラと壁際まで歩いていき、背中を預けた。すっかり気持ちが萎えて、立っていられないような状態だったからだ。
 そんな私のすぐ目の前をどこかで見覚えのある、白いTシャツにジーンズの大男が勢いよく通り過ぎていった。後ろ姿が会場の奥へ消えるのを見送って、思い出す。テキストサイトの商業化に成功した会社のメンバーだった。マリオのペットみたいなハンドル・ネームの男で、ネットで見かける柔和で剽軽な印象とかけ離れた、やぶにらみの恐ろしい凶相だった。かつてムラの住人だった土建屋社長の久しぶりの帰郷に、村人たちは寂れたムラへの投資を求める。彼は言い放つ。このムラ出身であることはどうしようもない事実だが、お前たちに俺のカネはいっさいやらない。やがて、おのれのアイデンティティに苦悩する彼は、ついに生家ごとムラをダムの底へと沈める決断を下す――そういった性質の凶相だったのに違いない。
 気づくと隣には、グラス片手の巨漢が私と同じく所在なげに、呆然と立ち尽くしていた(ように見えた)。犬の鑑札を提示しながら期待せずに弱々しく「知っていますか」と聞くと、勢いよく「知っています!」という。
 オーッ、エヌ・ダブユ・オーの威光はこんなバスエ・サイトのマネジャーにまで及んでいたのデスネ! ミーはすっかりうれしくなって喜びの歓声をスクリームしマシタ! 観測できないけれど宇宙の大半を占めるエレメント?みたいな名前のサイトを運営していたダク(またカタカナ2文字デス!)であるとのセルフ・イントロデュース、自己紹介デシタ! 確かザンテツケン?的なやつデスヨネ! ミーの言葉にダクは曖昧な表情を浮かべマシタ!
 リザレクション、復活した自意識をフルフィル、満たすために一方的なマシンガン・トークをダクに浴びせているとミーは突如サースティ、喉の渇きを覚えマシタ! ミーはダクとのカンバセーションをカット・アップ、切り上げると、アナザー・パイント・オブ・ビアーを求めてバー・カウンターへとリターンしマシタ! アゲイン・アンド・アゲイン、またまた手酌のビールを勢いよく飲み干してルックバック、振り返るとそこにはダクがいるのデス! ミーはマイセルフのアヌス、ツーケのナーアがきゅっとシュリンクするのを感じマシタ! クラスの冴えない男子にグリーティングしたらザ・ネクスト・デイ、翌日からストーキングが始まった美少女のディスガスティングな気持ちデス!
 イフ・マイ・フレンド・シー・ミー・ウィズ・ユー・イッツ・クワイト・ア・シェイム・フォー・ミー、ミーはダクにアヌスを、すぐ近くのブラック・ティー・シャート・マンにピーニスを向けマシタ! イフ・ボイン・ルック・アット・ウエスト・ヒップ・ウィル・ルック・アット・イースト作戦デス!
 ヘイ、ユー! ミーは1999年オープンのエヌ・ダブユ・オーというレジェンドなのデスガ、フー・アー・ユー? フードをテンコ・マウンテン、てんこ盛りにしたマン・イン・ブラックは、マンガみたいに食べカスを口元につけたまま、「ああ、小鳥猊下ですよね、知ってますよ」と朗らかにアンサーしマシタ! ワンサイズ小さいパツパツ・ステイトのティー・シャートに身を包んだこのメイルはブラザーズ・マンションズ・ブラザー、アニキの館のアニキとかいう回文みたいな名前のパーソン、人物デシタ! ストレンジリー、奇妙に親しみやすいアトモスフィアーのグッド・ガイなのデス!  ミーはその心の壁の低い有様にアマエ・ステイトで話かけマス! ネー、聞いてヨー、みんなドイヒーなのヨー! わざわざ関西ディストリクトからイキヨウヨウ・ステイトでトキオまでクンダリ来たのに、だれもミーに会いたいと思っていないのヨー!
 「いやあ、猊下なら会いたい人はたくさんいると思いますよ。それに比べてうちなんか、背景筋肉だったし、ホモゲームの紹介とかひどい企画ばっかりやってたし」
 ミーはこのセリフを聞いてアヌス、ツーケのナーアをきゅっとシュリンクさせマシタ! シリコダマ・ボールが大腸の奥へと後退していくのをフィール、感じながらミーはガタイのわりに異様にジェントリーなこの男のジェントルネスの正体にガテンがいった(ダブルミーニングデス!)のデス! ゲイ・ステイトのパーソンはたぎるセクシャル・デザイアー、性欲とそれに伴うデストラクション・インパルス、破壊衝動をノンケ・ステイトの好みのメイルに悟られぬよう、オン・ザ・サーフィス、表面上は異様に人当たりのよいホトケ・ステイトをキープすることがありマス! ミーゎ……すっかりこゎくなて……ぃしゅくしたちんぽぉ……りょぉまたにまきこんで……はんゎらぃでそのばぉはなれた……ゃだ、ぁのひとずっとこっちみてる……とぅきょぅ……こゎぃょ……!!
 アヌスをガードするためのザリガニ・ムーブメントで会場を後退していくとミーのピーチ、臀部がサムシング、何かと接触しマシタ! ひゃあん! 思わず漏れたミーの本来のシー・ブイであるところのクギミヤ・ボイスをごまかすために、ミーはことさらストロング、強くそのガイのドッグタグをねじりあげマシタ! オウオウ、貴様ナニしてバイト・マイ・アス、ケツカットンネン! ホワット・アイランド、どこのシマのもんジャイ! ンン、外見への影響があるハンディキャップを持って生まれた赤ン坊みたいな名前のサイトのサイト・マネジャーじゃネエカ? テメエ、エヌ・ダブユ・オーとイヤゴト・サンから影響を受けてエクストリーム・アンナチュラル、極めて不自然な日本語を書くヤツだろう、エエ! ミーが問い詰めると黒づくめのその男は、「えっ、ぼくのこと知ってるんですか!」と嬉しそうに言いマシタ! アドレッセンス、思春期がまだ継続中のようなイデタチのこのパーソンはどうやらエヌ・ダブユ・オー・フォロワーのようデス! オーッ、キケイジ・サン、カンボジア人が辞書を引きながらハシシきめて書いたみたいな不自然な日本語をディスクライブしていたカラ、てっきりジャパニーズじゃないと思ってたヨー! これだけワン・ウェイ、一方的なアビュース、罵倒を受けながらニヤニヤと妙に嬉しそうなのは根っからのエム・ステイトなのに違いありマセン! 「猊下、おひとつ!」なんて言いながら、同席のフィーメイルと争うようにして顔射モノのアダルトビデオで我先にペニスをグイグイ押し付ける男優もかくやという勢いで、ミーのグラスに2本のビール瓶の口を突っ込んできマシタ! ゃだ……ぁふれちゃぅ……ミーゎりぃさらなので……らべるゎぅぇにしてそそぃでほしかたょ……!!
 ミーとキケイジとワン・フィーメイルのクンズホグレツ・ステイトをエンヴィアスリー、フィンガーをシグルイみたいにチュパチュパいわせて見ている男がいマシタ! ドッグタグを見ると百から一を引いた髪みたいなサイト名のミヤモトと書かれていマシタ! ミーはインサイド・ブレインのテキストサイト開設年名鑑をわずかゼロ・コンマ・ゼロ・ファイブ・セカンドでサーチしマス! ミヤモトのサイトは2000年にオープンしており、エヌ・ダブユ・オーには遠く及ばぬシンザンモノ・ステイトであることが判明しマシタ! ミーはハマキをくゆらすプレジデント・ステイトでミヤモトに応対しマス! イヤー、ミヤモト・クン、最近調子はどうナノ? ミヤモトは「じつはまだサイト更新してるんですよねー」なんて言うのでミーはカッとなってイエロー乱杭歯をむき出しにして「ミーも2016年までは更新してマシタ!」とパツイチ、カウンターを食らわせてやりマシタ!
 「みなさん、ご無沙汰しています」
 オール・オブ・ア・サドン、突如アフロにサングラスをかけた男が一段高いところからマイクで会場に語りかけはじめたのデス! ディス・イズ・ザ・ファースト・タイム・アイ・メット・ヒム! 初対面なのにご無沙汰と話しかけてくるのはエクスペンシブ・ツボの販売か宗教勧誘しかありマセン! ミーは臀部に力をいれてアヌスをシュリンクさせマシタ! ウェイト、ウェイト! このガイ、ネットで見覚えがありマス! ブシドーソウルみたいな名前のサイトを2001年に開設した、アクセス数だのみの新参者デス! ミーやウガニクをさしおいて、エム・シーを行うとはいったいどういう了見デショウ!
 「えー、実家に先行者のフィギュアが余ってまして、今日はこれをかけてジャンケン大会をしたいと思います。先行者フィギュア欲しい人、手をあげて!」
 特に企画は行わないアナウンスメントのあったオフ・ミーティングにおいて、なんというロウゼキ・ステイトなのデショウ! ミーのアンガー、憤りをよそに会場のほとんど全員がプット・アップ・ゼア・ハンズ、手をあげているのデス! キコツ・ステイトのサイト・マネジャーたちのミーティングだったはずの会場は、もはや新興宗教がバックについた有機野菜販売にむらがるチホウ・ステイトのオールド・ガイズと同レベルの群れへとフォール、堕しマシタ! ミーはディスプリーズド、渋面のまま会場の隅に移動するとジャンケン・トーナメントを拒絶するためにフォールド・マイ・アームズ、腕組みをしマシタ! ウガニクの方を見るとグラサンアフロに背中を向けて、このケンソウ・ステイトとは何の関係もないといった風情でキッズをあやしていマス! この会場においてミーとウガニクの二人だけがアクセス数だのみの新参テキストサイト運営者によるセンオウ・ステイトを拒絶していたのデス! 俯瞰したカメラから見れば、それはまるでミーとウガニクにだけセレスティアル、天上のスポットライトがあたっているような光景だったことデショウ!
 健によるジャンケン大会はほどなくして終わり、会場は元のようなグループに分かれての歓談の場へと戻った。しかし、先ほどの輪に入れなかったことで、テキストサイト系と呼ばれるこの集団を構成する要素に、おのれが含まれていないことを私は痛感していた。段ボール製のつけ鼻を貼りつけるセロテープの下の皮膚にしりしりとしたかゆみが生じる。私は自分の気持ちが急速に冷えていくのを感じていた。どうして臆面もなく現実の知り合いが一人もいないオフ会に顔を出そうなどと思ってしまったのか。終了までまだ少しあるが、こっそり抜けだしてもだれも気づくまい。出口へと足を向かわせようとしたそのとき――
 「まさか、小鳥猊下ですよね」
 「いやー、ほんとにいたんだ」
 ルックバック、振り返るとそこには背格好も異なり年齢も離れているハズなのにストレンジリー、奇妙に似通ったトゥー・ガイズがスタンドしていマス! ミーはたちまちキショクマンメン・ステイトになってスマイリー、笑顔で応対しマシタ! イエス、イエス! ミーがゲイカ・コトリなのヨー! ユーたちはエヌ・ダブユ・オーのこと知っているのデスカ?
 「猫を起こさないように、超有名じゃないっすか。読んでましたよ、レジェンドっすよ」
 「いやー、でもこんな人だったとはなー、てっきりデブか美少女だと思ってましたよ」
 サカイとカズヤと名乗った二人はコメディアンのようにチアフルで、ミーへのフラッタリングも息ピッタリデス!
 「それにしても、本とか出してないんですか」
 「そうそう、どっかで書いてないんですか」
 オフ会のたびにワン・ハンドレッド・タイムスほど聞かれるこのクエスチョンにアバウト・トゥ・クライ、ミーは泣きそうになりマシタ! オーッ、ショウギョウ・ステイトでは出してマセンガ、ドウジン・ステイトでは一冊出してマスヨー! セブン・イヤーズ・アゴー、7年前にコミケトーで販売もしマシタガ、テキストサイト・ムラで買いにきてくれたのはファースト・クラス・ホームページだけだったヨー!
 「ああ、ゴトウ来てますよ、一流ホームページ。呼んできますよ」
 アス・スーン・アズ・ヒー・セッド、言うやいなやサカイはゴトウをひっぱってきマシタ! ゴトウは7年前と同じく匂いたつようなオタク野郎デシタガ、この会場でただ一人ビー・アクウェインテッド、面識のある(テル? ソリー、アイ・ディドント・リメンバー・ヒム!)パーソンなのデス! ミーはマイ・テキストにこの会場で唯一カネを払ってくれたゴトウへのタイコモチ・ステイトから、オサム・ダザイばりの我が身をカット・アップする決死のサービスをエグゼキュート、実行しマシタ!
 ネー、サカイ、カズヤ、聞いてヨー! トゥエニイ・イアーズ・アゴー、ミーはクリラバに相互リンクを断られた腹いせに、ゴトウからの相互リンク依頼をイグノアー、無視したのヨー! そうしたら、ゴトウのホームページはどんどん一流になっていってエヌ・ダブユ・オーのアクセス数をあれよあれよと追い越していったのヨー! エヌ・ダブユ・オーは閉鎖したケド、ミーのサイト・マネジャー・ライフの大きな後悔はゴトウと相互リンクしなかったことデス!
 感心しながらミーのテキストサイトサイト・ヒストリーを聞くサカイとカズヤに対して、ミーと面識のあるゴトウは「またその話ですか」といったあからさまに迷惑そうなアトモスフィアーをかもしていマシタ! いまやゴトウがベジータならミーはサイバイマンみたいなものヨー! 得意のオドケ・ステイト、道化状態でゴトウをフラッタリングしていると、いつの間にかブシドーブレード?のケンが同じテーブルにいマシタ! ノー・アフロ・アンド・グラサン・ステイトだったのでドッグタグがなければ見逃すところデシタ!
 ウォアアアアーーッ! この新参者の先行者にテキストサイト界のビック・パイセンとしてパツイチ・モノ申しておかなければなりマセン! ヘイ、ケン! ユーのご職業は何か、もし差し支えなけれな教えていただけませんデショウカ? ビック・パイセンからの強烈なストライク、一撃にケンはドウドウ・ステイトで答えマス!
 「いまは実家の稼業を継いでまして。業種は勘弁して下さい」
 イット・ミーンズ・ザット、ユーはプレジデント、社長ということデスネ! ヨッ、シャチョー、にくいネ! ミーのタイコモチ・ステイトにもケンはゆらぐ様子がありマセン!
 「いやいや。社長っていっても中小企業ですし、何人かの徒競走で選ばれたみたいなもので――」
 穏やかに話すこのガイからは少しもダークネス、闇を感じマセン! なんらかのフグ・ステイトを抱えた人々の群れにパーフェクトリィ、完全に健やかな人物がやってくれば勝負はスタートラインにスタンドする前から決まっていマス! サムライスピリッツ?の正体は、係員に歯痛を申告したらなぜかパラリンピアンと競技をさせられたオリンピアンだったのデス! ひるがえってゴトウに目をやると、全身からオタク・ダークネスがオウイツしてイマス! ミーとケンのカンバセーション、会話を聞いていたゴトウが突然、スットンキョウ・ボイスをあげマシタ!
 「え、猊下、結婚してるんですか? 子どもまでいる? 今日いちばんのショックだー!」
 どういう意味やネン! 前回のオフレポに登場しながら、ステイツにトゥー・ドーターズを残してナラ・プリフェクチャーへドカチンに来た米国人というミーの設定が頭に入ってないゴトウに、ミーはシンイ・ステイトになりマシタ!
 「でも、ぼくもちゃんと婚活してるんですよ。ホラ」
 ゴトウが見せてくれたスマホ・ディスプレイにはスノウやらの画像加工ソフトでモリモリ・ステイトになったアヒル・マウスのヤング・フィーメイルが映っていマシタ! ミーはその写真を見てス・ステイト、真顔になりマシタ! ゃだ……ゴトウ……っっもたせ……きぉっけて……!!
 「猊下でも結婚できるのに、ショックだー!」
 言いながらテーブルにお道化て倒れこむというオサム・ダザイばりのサービスを演じるゴトウの両目は、インシデンタリー・トンチンカンのヌケサク・ティーチャーのようなシェイプと剽軽さをタタエながらバット、黒目は少しも笑っていないのデス! ベリード・アライブ・イン・ザ・モエゲーを書いたミーにはゴトウの気持ちがわかりマス! この男は二次元のグラビティにソウルを引かれた本物のオタク、自涜による単体生殖ですべてを完結できるモンスターであり、三次元のフィーメイルなどその深奥のダークネスをハイド、隠すためのアクセサリーに過ぎないのデス!
 ゴトウをイン、ケンをヤンとした陰陽ドー・ステイト状態のそのテーブルには、他にもスリー・フィーメイルズ、3人の女性がいマシタガ、オール・オブ・ゼム、全員が「もっとケンさんと話したいのに、一方的にしゃべってるこのデカイのは何? どっか行ってほしいけど、何か言ってからまれてもうっとおしいな」とでも言いたげなアイマイ・ステイトの微笑を浮かべ続けていマシタ! フォー・レター・ワーズ! 呪殺、貴様らあとで呪殺デス!
 ソウコウしているうちに、ドナルド・トランプとシージンピンを足して2で割ったようなルッキングの人物によるクロージング・ステートメントが始まりマシタ! フー・イズ・ヒー? だれか尋ねると今回のオフ会を企画した一人であるカンチョウ(浣腸? 間諜?)とのことデシタ! ミーは初めて見るそのフェイスに向けて、客席からゆっくりとサムズ・アップしたのデス! サンキュー・フォー・ディス・プレシャス・タイム、カンチョウ!
 ワンハンドレッド・サイト・マネジャーズはスリー・スリー・ファイブ・ファイブ、三々五々帰りはじめマシタ! ミーはミーをこのバスエ・バーにキャリー、運んだ原因であるところのウガニクにフェアウェル、別れのアイサツをするために近寄りマシタ! ワールド・ナイン・ワンのナガタがウガニクズ・ドーターにピーまがいのタッチングをリピートするカタワラで、アキヒロ・ミワのフェイスをしたヒズ・サンに見守られながら、ラスト・ワード、最後の言葉を交わしたのデス!
 「猊下のエヴァQ評を読んで、見なくちゃと思ってエヴァQ見ましたよ。私は楽しめましたけど」
 オーッ、ミーはウガニクにエヴァー・キューを視聴させたという一点においてヒストリー、歴史に名を残す可能性がありマス! テキストサイト・レジェンドのウガニクが認めたとしてもエヴァー・キューがタワーリング・シット、そびえたつクソであることに変わりはありマセン! シン・エヴァが破の続きから作られたら、ミーのシビア・クリティシズムを撤回しマスと伝えマシタ!
 「ほんと、またネットでもからんできてくださいね」
 オフコース、イエス! アフター・ディス・パーティ、ミーとユーはアナ・キョウダイヨー!
 アイ・ウィル・マリー・ハー・イフ・アイ・キャン・ゴー・ホーム・アライブと同じレベルのデス・フラグに目頭をゲット・ホットさせながらミーとウガニクはエターナル・フェアウェル、永久の別れを別れたのデシタ!
 ハウエバー、ウガニク、くれぐれもナガタには気をつけてクダサイ! シー・エス・エーのモア・ザン・ナインティ・パーセントはキッズに近づくことがナチュラルな身内によるものなのデスカラ……!!
 人であふれていた会場は次第に閑散とし始め、私は自分の過ちを知る。このオフ会は旧知の仲が、その旧交を温めるためのものであって、これまで一度も現実に姿を表さなかっただれかが新しい人間関係を作るような場では、決して無かったのだ。段ボール製のつけ鼻を貼りつけるセロテープの下の皮膚にしりしりとしたかゆみが生じる。私は自分の気持ちが急速に冷えていくのを感じていた。この場にいた全員は一国の主、王様だった。絶対君主が他の僭王の支配を認めるはずもない。つまり私の行為は、すべて逆逆だったのである。常に正しくない方を選択し続けてきた私は、小鳥猊下としての最後の舞台でもまた間違ってしまったのかーー
 ノオオオオオオーーーーッ! ドント・レット・ミー・ダウン! ミーにオウイツするダース・ベイダーもかくやというフォース・パワーはバーカウンターにならぶビール瓶をガタガタはさせませんデシタ! モア・オーバー、ビア・サーバーの蛇口をねじ切り、大量のビアーをブラッドのように噴出させたという事実も決して観測はされなかったのデス!
 ウガニクズ・ファミリーを見送ったミーはアフター・パーティ、二次会に向かういくつかのグループをイグザミン、吟味しはじめマシタ! ミーのブランド・バッグに忍ばせたリカの同人誌をリアル・パブリッシングにつなげるべく現世のオーソリティに押し付けねばなりマセン! サドンリー、スリー・フィーメイルズがミーをサラウンド、取り囲みマシタ!
 「猊下! あたしタカハシ! 同人誌送ってもらった!」
 ワン・オブ・ザ・フィーメイルズがブレイン・ランゲージ・センターへのダメージを疑わせるスモール・ボキャブラリーでミーに話しかけてきマシタ! あまりに距離感が近くミーはのけぞりぎみに「アア、ソウナノ?」とレスポンス、応答しマシタ! 
 「ほら、猊下の同人誌も持ってきてる!」
 言いながらミーに文庫本を提示してきマス! ブックカバーの下にあるSMD虎蛮のイラストレーションはシュアリー、ミーとリカの同人誌デシタ! アプルーバル・デザイアー、承認欲求を満たされることに弱いミーはたちまちソウゴウを崩しマシタ! オーッ、ユーがディー・エム経由で同人誌のフリー送付をウィッシュした、関西ゴリラガラスみたいなサイト・マネジャーのワイフであるタカハシなのデスネ! アンドゼン、ショウワ・エラのイデタチをしたアナザー・フィーメイルがミーにオズオズ・ステイトで話しかけてきマス!
 「あの、ずっとファンでした。DJフッドがすごい好きで」
 ホ、ホワッツ? アー・ユー・リアル・ファン・オブ・ミー? ミーはDJフードを書きマシタガ、DJフッドは書いた覚えがありマセン! そもそもFOODのスペリングはフードとしか読めマセン! フッドと読むならならHOODとスペリングするはずデショウ! ミーがオズオズ・ステイトで指摘するとトマホーク・ブーメランみたいなサイトのマネジャーであったフィーメイルはターン・レッド、赤面しマシタ!
 ウェイト・ア・ミニット! アー・ユー・ゴレ・サン? オーッ、いまインターネットでレイテスト、最も新しい小鳥猊下へのリファー、言及はユーのツイーティングによるものデス!
 「あの、それ違う人……」
 アリガトオッ、アリガトオッ! ミーはゴレの両手をにぎってブンまわしましたが、なぜかゴレはアンビギュス、曖昧な微笑で反応が悪いのデス! ジャパニーズのエモーションは読みとりにくいこと、この上ありマセン!
 「ええっと、こちらの方は漫画家なんですよ」
 サドンリー、ゴレはミーとはまったく関係のない、脚本に書かれていないことを即興でやる?みたいな名前のカートゥニストを紹介してきマシタ! パブリッシング・バージンのミーに対するマウンティングなのデショウカ! ミーはそのフィーメイル・カートゥニストに対してイエロー乱杭歯をむき出しにしてキャメルの如く唾液を撒き散らしながら、「ミーは1999年オープンのテキストサイト運営者デシタ! いまはただのリーサラデス! リーサラ・ウェポン!」とシャウト・アットしマシタ! そのカートゥニストはあからさまに怯えた表情になり、不思議なことにアフター・パーティではミーの前に姿を現しませんデシタ!
 「猊下、このあとどうするの? 二次会いく?」
 タカハシがウワメヅカイ・ステイトでミーをセデュース、ユウワクしてきマス! ここはゴー・トゥ・フォーティーン・オア・アライブ、重要な分岐点かもしれマセン! 聞いたこともない弱小サイトの運営者バット、ミーの同人誌を持参するほどのビッグ・ファンを選ぶべきデショウカ? オア、現世のオーソリティに近いアクセス数を持ったビッグ・サイトのアフター・パーティに参加すべきデショウカ? 聞けばこのフィーメイルたちが向かうイザカヤ・ストアにはゴトウをはじめとしたミリオン・アクセスのビッグ・サイト・マネジャーたちもギャザー、集結するとのことデス! これはキル・トゥ・バーズ・ウィズ・ワン・ストーン、一石二鳥デス! タカハシ、キミに決メタ! この決断をミーはレイター、後悔することになるのデスガ、それはまだア・リトル先の話デス! シラヌガホトケ・ステイトのミーはタカハシとショウワ・エラのゴレに挟まれるようにして、ダーバツー・ビー?をゲット・アウト、後にしたのデス!
 「いやあ、楽しいオフ会でしたねえ」
 店の外に出るとミーの隣にスタンドしたミーと視線がホライゾンタル、水平に合うほどのビッグ・ガイがシミジミ・ステイトで言いマシタ! ミーは本当にこの男と同じミーティングに参加していたのか疑わしい気持ちになりマシタ! ミーと同じく仕事帰りなのデショウ、ミーとはテン・タイムスほど値段が違うだろうノット・オーダーメイド・バット・ツルシ・ステイトのスーツに身を包んだこの男からは、テキストサイト・マネジャーが否応に抱えるイービルネス、邪気がありマセン!
 「ほんと、わざわざ福岡から来たかいがありましたよー」
 ワ、ワッツ? ディッド・ユー・セイ・フクオカ? パーハップス、おそらくミーの聞き間違い・オア・トキオにあるまったく同じ地名のシティから来たに違いありマセン! こんなバスエ・ステイトのいじましい会合にわざわざフクオカ・プリフェクチャーから参加するなんて、スロー・ユア・マネー・イントゥ・ザ・ドレイン、カネをドブに捨てるようなものデス! ユーはそのエア代を使ってもっといいスーツを買うべきデス!
 ミーとビッグ・ガイのビーエル・ステイトに嫉妬を感じたのデショウ、タカハシが割りこんできマシタ!
 「猊下、本当に本とか出してないの? 編集者の知り合いいるけど、猊下の同人誌送っていい?」
 オーッ、ラブリー・クレバー・タカハシ! ホワット・ア・テキカク・ワード・ユー・セッド! なんという的確なくすぐり文句デショウ! こんなア・グッド・フォー・ナッシング・フェローの人生を気にかけている場合ではありませんデシタ! ヘイ、タカハシ、センド・イット・アサップ、いますぐそこのレッド・ポストに放り込んでクダサイ!
 「ねえ、本当にどこにも書いてないの? 賞とか出さないの?」
 ホワット・ア・クルーエル・ワーズ・ユー・セッド! オフ会のたびに聞かれるワン・ハンドレッド・ワン・タイム目のこのクエスチョンにアバウト・トゥ・クライ・アゲイン、ミーはまたまた泣きそうになりマシタ!
 ショートリィ・アフター、ミーとトゥー・フィーメイルズのいるグループは、ゴトウのいるグループからはぐれてしまったのデス! ちょうどゴールデン街のサインが見えるあたりの、ディープ・イン・シンジュクで道に迷うという恐怖体験にミーのニーはガクガク・ステイトになりマシタ! サイドにアダルト・アドバタイズメントがデカデカ・ステイトで掲載されたトレーラーが道路を走っていきマス! ミーたちのアラウンドには明らかにカタギ・ステイトとは遠いイデタチの呼び込みが距離を詰めてきていマス! ミーはフランスでフォリナーをねらった窃盗団とおぼしきグループが背後から獲物を追い込むウルフ・パックのように迫ってきたときのことをマザマザ・ステイトでリメンバー、思い出していマシタ! ミーにとってトキオの知識はメインリー、主にメガミテンセイとリュウガゴトクでラーンしたものでしかありマセン! インセキュアー、高まるミーの不安をよそにアラウンドのトウの立ったボーイズ・アンド・ガールズはまったく動じた様子がありマセン! ユウゼン・ステイトでポキモン・ゴーをプレイしたり、ミーたちのグループにデジカメを向けたりしていマス! ワッツ! ミーはリップス、唇からシュッと息を吐くとカメラのフラッシュを危機一髪、ジョジョ・ステイトの上半身でアヴォイド、かわしマシタ!
 ヘイ、ユー! テイク・ピクチャーは相手の許可をとってカラというオフ会ルールを読んでいないのデスカ! ミーはリゼントメント、憤慨してカマキリ顔の男につめよりマシタ!
 「ネットに上げたりしませんよ……」
 ミーのケンマクに男はモゴモゴ・ステイトでエクスキューズ、言い訳をしマシタガ、テキストサイトを運営しているようなストレンジャーにパーソナル・インフォメーション、個人情報を渡せるはずがありマセン! イン・アディション、おまけにスマートフォン全盛のこの時代にわざわざデジカメを使うようなフシン・パーソンをどうして信用できマショウカ!
 ミーたちのグループはすでにア・フュー・ミニッツ、数分はセイム・プレイス、同じ場所にとどまり続けていマス! ヤクザ・ステイトの呼び込みがジリジリと近寄ってきマス! ヘルプを求めてタカハシを見ると、息子のクラム・スクール・ティーチャーと電話をしている最中デス! ヘルプを求めてショウワ・エラのフィーメイル(ゴレ?ニゴ?)を見ると、濡れ濡れとした子鹿の目でミーを見つめかえしてきマシタ! ゃだ……このこ……すごぃめきれぃ……!!
 「とりあえずツイッターでつぶやいてみますねー」
 アウチ! エス・エヌ・エスのこれほど間違えた使い方は聞いたことがありマセン! ほどなくしてアフター・パーティの会場はミーたちのプレイスからほんの数メートル先にあることがターン・アウト、判明したのデス! テイウカ、すぐ目の前に見えとるガナ!  ユー・ドント・ハブ・パワー・トゥ・リブ・アト・オール! 生きづらさにメイビー、ノーティスさえしていない頭ハピネスのセカンド・グループは、ファースト・グループから遅れることトゥエニィ・ミニッツ、セイリュウにアライブ・アット、到着したのデス!
 オフレポの舞台は新宿ゴールデン街の側、テキストサイト管理人行きつけであるところの清瀧に移った。突然だが、弟の話をしなければいけない気持ちになった。なぜ、突然そんな気持ちになったのかはわからない。弟は私とまったく似ていない。眉目秀麗、長身痩躯の私とちがって、弟は短躯で小太り、最近では前髪の後退によりゴツゴツと形の悪い額があらわになって、見苦しいことこの上ない。結婚はしているが、長く子宝に恵まれず、三十も半ばを過ぎてから第一子を授かった。子育ては体力勝負だ。四十を越え、衰えるばかりの体力で、はたして息子が成人するまでの十年以上を耐えることができるのか。インターネット黎明期を知る私にとって、十年は人々の考え方や生活の仕組みが根こそぎ変わるのに充分な時間だという実感がある。弟の幸せを望みながらも、彼の抱えていくだろう不確かさと苦しみについて思いをはせずにはおれない。弟の話を終える。
 後藤を含めた大手テキストサイト運営者たちは、すでに奥座敷に陣取って飲み始めているようだった。アクセス数に劣る出がらしのようなこの集団こそが、私に残された居場所なのだった。なぜ私を含めた彼らがアクセス数に劣るのか。その理由はここまでの道中で、痛いほど感じることができた。場をしきる者はだれもおらず、全員がなんとなく空いている席に腰を下ろす。
 私の目の前にはゴレを名乗る昭和の風情を漂わせた女性、ハンサミストを自称する松本なる男性、そしてナフ周辺を名乗るベネディクト・カンバーバッチと同じアゴの輪郭をした男性が座っていた。私たちには何の共通点もない。明日には街で出会っても、互いのことを認識することさえできないだろう。
 隣のテーブルに座ったグループには、しかし共通点があるようだ。カンバーバッチに言わせるとあの集団もナフの竹田周辺なのだという。ナフ? イナフのナフだろうか? ナーフのナフだろうか? カンバーバッチの説明に、私はすっかり混乱してしまった。しばらく隣のグループとカンバーバッチを交互に観察すると、外見に共通点を発見することができた。ディップ(精液?)で無造作に固めた髪型に、カマキリのような細面がそれだ。ナフ周辺の咬合力を天内悠だとするなら、私はジャック・ハンマーとさえ言えるだろう。聞こえてくる話し声に耳を傾けるが、私には彼らの話題どころか、文法からして全くわからない。
 理解をあきらめ、昭和の風情をした女性に声をかける。nWoのファンを自称するくらいだから、二十年の孤独を慰撫する言葉が聞けるかもしれない。
 「あの、カルメン伊藤さんにお会いしたことがあります」
 意外な共通の知り合い。FGOつながりですかと尋ねると、ニンジャスレイヤーつながりだという。なぜか、九十九式の宮本の顔が浮かんだ。しばらく会話をしてから、私はニンジャスレイヤーについての理解をあきらめた。そして、nWoについての質問をする。どの更新が一番好きですか。印象に残っている文章は何ですか。ファンなら当たり前に答られるだろう質問を投げかけるが、何ひとつとしてはっきりとした回答は無かった。
 「ねえ、二年も前に閉鎖したサイトなんでしょ? そんなの覚えてるわけないじゃないですか」
 助け舟をと考えたのか、ハンサミストの松本が会話に割り込んでくる。その通りだ。莫大な情報が日々流れ続ける近代のインターネットで二年という年月は、ほとんど言語そのものが変質するような気の遠くなる時間だ。
 聞けば松本は、ナタリーだかナンシーだかルーシーだかいう漫画批評サイトの編集者なのだという。
 漫画、か。私は内心密かに落胆する。小説批評サイトなら私の同人誌を預けるのだが、そんなサイトが商業的に成り立つわけもない。松本はパトレンジャーについて書いた文章が五万人以上に読まれた話をしてくれたり、森田まさのりに送った荒木飛呂彦のメールの写真を見せてくれたり、いつの間にかいなくなったカンバーバッチと、ボーイズ・ラブの話題――といっても、真夜中の天使を知らなかった――以外は黙りがちなゴレの隙間を埋めるかのように、淡々と場をつないだ。マウンティングのつもりがないのは口調でわかったが、華やかな彼の現在に私の心は沈んだ。
 途中、マトリックスのセラフを少し太らせたみたいな外見の男が、進行方向だけをにらみつけるようにそばを通り過ぎていった。聞けば、テキストサイトの商業化に成功した会社の管理職なのだという。確かに俺たちはテキストサイト出身かもしれないが、お前たちに俺たちの金は一切やらない――通り過ぎる彼の後ろ姿からは、その強い意思を感じた。
 「猊下の横にはあたしが座るから!」
 突然、長く席を外していた高橋が現れ、だれも私の隣に座ろうとはしないのに、なぜか周囲に宣言してから通路への出口をふさぐ形で私の真横に陣取った。女性と二人きりで話すときは部屋の扉を開けておくよう教育されてきた私は、男女の性別は真逆ながらおのれの置かれている状況にかすかな恐怖を感じた。
 「ねえ、猊下。さっきの編集者の知り合いに同人誌を送る話だけど、ほんとに送っていいの?」
 オーッ、ラブリー・スゥィート・タカハシ! ナフもタケダもオモコロもトゥ・テル・ザ・トゥルース、正直なところファッキンどうでもいいデス! オフコース・イエス、モチのロンに決まってマス! さっきからミーは繰り返しそう言ってるじゃないデスカ! センド・イット・ライト・アウェイ!
 「どこがいいの? シンチョウ? カドカワ? どのくらい編集の言うこと聞けるの?」
 オーッ、ノット・トゥー・ビッグ・ディール、ミーの同人誌をシュアリー、確実に印刷してくれるサイズのカンパニーがベストなのデス! アンド、ジ・アンサー・イズ、オール・オブ・イット、リアル・パブリッシングのためならなんでも言うこと聞きマスヨー! バイ・ザ・ウェイ、ところでミーの同人誌のどこが良かったデスカ?
 アイ・ドント・ノウ・ホワイ、ディス・シンプル・クエスチョンに熱くミーを見つめていたタカハシの目はなぜかスイム、泳ぎマシタ! アイ・ハブ・ア・バッド・フィーリング・アバウト・ディス! ユーはミーのツイートを読んでいマスカ?
 「あたし、猊下のツイッターアカウントなんて知らないし」
 オーケー、ならどうやってミーにディー・エムを送ったのデスカ?
 「え、あれ? そうそう、――の管理人が亡くなったの知らなかったってホント?」
 ミーに少しでも関心があるならば、エヌ・ダブユ・オーにとって最も重要なできごとを知らなかったのかなどと、インセンシティブに問いかけられるハズはありマセン! ミーは垂れこめるブラック・クラウドのようなギシンアンキ・ステイトにおちいっていきマシタ! エディターにイントロデュース、紹介しようと思うくらいナラ、必ず気に入ったポイントがあるはずデス! ユーはミーの同人誌のホエア、どこが良いと思ったのデスカ?
 ディーズ・ピュア・クエスチョンズに、いよいよタカハシは目をそらしマシタ! ミーはさらに問い詰めマス! どの場面が気に入りマシタカ? どのキャラクターが好きデスカ? どの文章に感銘を覚えマシタカ? アンサーズ、返事のすべてが要領を得マセン! グラデュアリー、次第にタカハシは黒目の内側にうずまきを浮かべたアウアウ・ステイトにドロップ、陥りはじめマシタ! ファイナリー、しまいには素のステイトをネイキッド、丸出しで本音をトークし始めたのデス!
 「あのさ、なんか全体的にむずかしくない? 単語とか表現とか。なんか伝わらないっていうか、感情移入しにくいっていうか。あたしカポーティとか読むけど、冒頭におじさんの話とかあって入りやすいっていうか。あとマルケスとかも読むけど、百年の孤独も家族の話でわかりやすいっていうか」
 ビー・トラップト、ミーはここにいたってワナにハメられたことにノーティス、気づきマシタ! ヘンシュウ、シュッパンというマジカル・ワードをダシに、ウブなパブリッシング・バージンのミーはフィーメイル・アント・ライオン、女蟻地獄のすり鉢のボトム、底へとキャプチャード、とらえられてしまっていたのデス! ホワット・ア・海外ブンガク系サブカルクソ女・シー・イズ! 血と汗と涙でひねりだしたテキストたちを気軽なジュエリー・オーナメントぐらいに考え、トッカエヒッカエ・ステイトでウブ・ステイトのサイト・マネジャーどもをカント(もちろん、哲学者の名前ですよ、やだなあ)・バイト、九郎判官してきたに違いありマセン!
 「あとこれ、センセイの話だよね? ちがう? あたしセンセイなんかしたことないから何のことかよくわかんない。やっぱ家族の話とかのほうがフツウは入りやすいっていうか」
 シャット・アップ・ユア・フェイス・アンクル・ファッカー! このアマ、フィクションを全否定しやがりマシタ! アット・ザット・タイム、ミーのこめかみには血管のクロスが浮いていたに違いありマセン! この発言をサイエンス・フィクションのビッグ・ファンであるという関西ゴリラガラスのサイト・マネジャーが聞いたらどう感じるデショウカ! デフィニットリー、間違いなく「エデュケーション(教育)!」とシャウトしながらヒズ・ナックルをハー・ノーズが高さを失うほどねじこむに違いありマセン!
 ミーはタカハシ・アズ・ノウン・アズ海外文学系サブカルクソ女の話をペイシェントリー、我慢強く聞きながら(シュッパンというニンジンのためデス)現存する最古のテキストサイト・マネジャーであるキョウト・ユニバーシティのプロフェッサー・モチヅキが、ボン・ユニバーシティのプロフェッサー・ショルツから宇宙際タイヒミュラー理論へのクリティシズムを聞いているときのようなイライラ・ステイトにおちいっていきマシタ!
 イエス! イエス! オフコース、アイ・コンプリートリー・アグリー・ザット・ザ・ノベル・ユー・アー・ディスカッシング・イズ・コンプリートリー・アブサード・アンド・ミーニングレス、バット・ザット・ノベル・イズ・コンプリートリー・ディファレント・フロム・エムエムジーエフ!
 タカハシによる明確なハラスメント・ステイトに対して、目の前に座る子鹿の目をしたゴレ?ニゴ?はフェイスをわずかにチルト、傾けてスマイルするだけで何の援護もしようとしマセン! その頭蓋のインサイド、内側ではミーとマツモトのビー・エル妄想が膨らんでいるのデショウカ! そのマツモトはと言えば、スマホにディスプレイされたマッスルマン?のコミックに対してピーを思わせるシツヨウ・ステイトのタッチングを繰り返すばかりデス!
 段ボール製のつけ鼻を貼りつけるセロテープの下の皮膚にしりしりとしたかゆみが生じる。私は自分の気持ちが急速に冷えていくのを感じていた。高橋の弁明を聞きながら、改めてぼんやりと周囲を眺める。参加者の多くは四十の声を聞いているだろう。なのにだれ一人として、こんなプライバシーも守られない、接客もなっていない、言わば大学生向けの居酒屋で飲食をすることに抵抗を感じている様子はない。私は、就職氷河期が私たちに失わせたものへ思いをはせた。いつまでも二十くらいの精神状態で、大人になることもなく、社会へ責任を果たすこともなく、みんな昆虫みたいに死んでいくのだ。
 ねえ、高橋。出版社や編集者に紹介したいほど、私の同人誌を気に入ってくれたのなら、何か理由があって然るべきではないですか。答えを得られないまま繰り返される、虚しく宙空に消えていくその問いは、たぶん、私にとって切実なものだった。二十年間、ずっと言葉が欲しかった。私の更新は下劣だったかもしれない。私の更新は拙かったかもしれない。ただ、その時々に必死だった私の生き方を肯定してくれる言葉が欲しかったのだ。
 もはや目を合わせようとしない高橋の横顔をじっと見つめたまま、私は壊れたレコードのように同じ問いを問いかけ続ける。
 やがて高橋は大きなため息をつくと、あきれたように言った。
 「ねえ、なんでそんなにほめてほしいの?」
 ほめてほしいわけじゃない。ただ理解が欲しい。肉親にだけ可能なような、濃密な理解が。
 「悪いけど、あたしはアンタの母親じゃない」
 しかし、小鳥猊下としての二十年をまさに終えようとするこの瞬間にも、求めていた答えが返ってくることはなかった。
 「ごめん、少しだけトイレ行ってくるね」
 白けた様子でそう言いおくと、高橋は席を立ち、そうして二度と戻ってくることはなかった。
 出版の話と、たぶんnWoは、こうして終わったのだった。新宿の場末の酒場で、だれにも看取られることなく、ひっそりと。
 沈黙が降りた。私が口を閉じれば、もはやだれも自分から話そうとする者はいなかった。
 「このテーブル、なんなんすかね?」
 やがて、松本がため息とともに吐き出す。
 「小鳥猊下周辺、かな?」
 女は視線をさまよわせながら、聞こえるか聞こえないかの声で言う。
 狂騒的なおしゃべりが途絶えたあとに残る、いつもの気まずい沈黙。
 眼の前に座る、もはや名前を思い出すことさえできない昭和のいでたちをした女は、濡れた子鹿のような目で私を見るばかりで、何もしゃべろうとはしない。
 二十年近くを思い続けてきたと自称するファンが、私の書いたテキストの一行さえそらんじることなく、ほんの半時間を感想や称賛でもたせることができない。この状況こそが、nWoの二十年間を象徴的に表していた。
 「――さん!」
 突然、その昭和の女を後ろから抱きすくめるようにして、別の女が現れる。私のファンだと名乗った女は、別の女にひっぱられるようにして、席を立った。行きかけて、気づいたように自分のグラスを取りにもどる。瞬間、上目遣いにこちらを見た彼女の視線が忘れられない。
 そこには、二度と戻ってくることがないという意思がたたえられていた。
 そして、私は松本とふたり取り残される。松本は沈黙を気まずいと思っているふうもなく、スマホを触り続けている。
 当然だ。酒席におとなしいサルやチンパンジーが同席していたとして、彼らに気まずさを感じることはないだろう。
 私はひさしぶりに、大学のゼミの飲み会を思い出していた。最初のひと騒ぎが終わると、だれもこちらに興味を残さない。ビールのジョッキに浮いた水滴をながめる他はなく、ただぽつねんと、からっぽのままひとりで座っている感じ。
 あのときのように、私はだれにも気づかれないようカバンを取り上げ、ひっそりと店を出ようとした。ワリカンの際にだって、だれも私がいたことには気がつくまい。
 「松本さん、ひさしぶり」
 しかし、突然あらわれた大男が通路をふさぐようにとなりへ無遠慮に座り、私の計画は妨げられたのだった。
 どうやら、松本の古い知り合いのようだった。オッパッピーみたいなハンドル・ネームの男で、ずいぶん昔からネット界隈に棲息する古株らしかった。
 この男には、オフ会での唯一の拠り所であった開設年マウントは通じない。私はおのれの席でますます小さくなった。
 「1994年はパソコン通信が始まった頃で、自分が立ち上げたサーバーに掲載した情報が、数日かけて全国に広まっていくのを見るのが面白かった。ぼくたちのひとつ上の世代は筒井康隆さんで、ASAHIネットの大騒ぎを横目に見てて――」
 どういう素性だろうか、すべての話題を時系列に話すクセがあった。
 男がよどみなく昔話をし、松本がそれにうなづく。この場で確かなことは、男も松本も私の書いたテキスト、私の来歴、私の存在にまったく興味がないということだ。
 後藤がいるだろう奥座敷から楽しそうな笑い声が聞こえる。
 ぶぅん、ぶぅん。
 頭の中にドグラ・マグラのような羽音が響きはじめ、自分の体が自分のものではないような、離人症の感覚が私を満たしはじめた。水のようにせり上がってくるこの感覚は、やがて喉元へと達し、私を窒息させるだろう。
 「松本さん、最近なんか面白い漫画ないの?」
 「ありますよ。この一コマを見ただけで、絶対に続きが読みたくなります」
 「え、どんなの? ……ハハハ、ベンキマンとカレクックだ」
 意味を持つことを否定した、底なしの、徹底的な虚無のような会話。
 ぶーん、ぶーん、ぶーん。
 脳髄を満たした羽音はますます高まり、この瞬間にも頭蓋を破壊して、外にあふれだしそうだ。
 たまらず席を立とうと腰を浮かしたところで、私は気づいた。
 天井と壁の間にある薄い薄い隙間から、少年の体躯をした全裸の美輪明宏がじっとこちらを見ていることに。
 ウガニクだ!
 私は泣き出したいような気持ちになった。この二十年間、私が気づかないときにも、ウガニクはああやって、ずっと私を見守ってくれていたのだ。
 感極まって声をあげようとする私を、ウガニクは唇に人差し指を当てて制した。
 ウガニクは人差し指と親指をピストルの形にすると、松本の後頭部へ向けた。
 「ばぁん」
 小さな囁き声とともに、松本の顔面に穴が空いた。
 「ハハハ、ブラックホールだ」
 だ、の発声と同時に、男の頭部が内側からはぜる。
 天井にまで届く真っ赤なその噴水を浴びながら、私は立ち上がり、ウガニクに心からの喝采を送っていた。
 そうだ、ウガニク。いまのインターネットはすべて偽物の、まがい物だ。テキストが魔法として機能した神代のインターネットは1999年まで、それ以降はただの言葉の下水道じゃないか。
 きみの汚い言葉は最高にきれいだった。ぼくの下劣な言葉は最高に美しかった。ぼくたちのテキストサイトには、確かなキュレーションがあった、審美眼があった。
 それがどうだ。回線は馬鹿みたいに速く安くなったけれど、いまや恐ろしい分量の美しい言葉ばかりが下品に乱雑に、かつて美術館であり博物館であった場所の床へ足の踏み場もないほどに、ただ放置されている。
 さあ、ウガニク。君のあとから来たまがい物どもを、ぜんぶ、ぜんぶ殺しつくしてくれ。
 ウガニクをさしおいて、アクセス数だのみのアフログラサンの先行者も。
 「ばぁん」
 ウガニクをさしおいて、テキストサイト最長更新記録を標榜する金髪も。
 「ばぁん」
 ウガニクをさしおいて、ホームページ作成が一流だと誇るオタク野郎も。
 「ばぁん」
 ウガニクをさしおいて、テキストサイトをマネタイズする拝金主義者も。
 「ばぁん」「ばぁん」
 ウガニクをさしおいて、小鳥猊下の御幸を晒し上げした不敬の輩どもも。
 「ばぁん」「ばぁん」
 ウガニクをさしおいて、他の運営者たちに色目を遣うロンパリ女どもも。
 「ばぁん」「ばぁん」「ばぁん」「ばぁん」
 「ひぎぃ」「ひぎぃ」「ひぎぃ」「ひぎぃ」
 あとに残されたのは、清瀧とは名ばかりの血と汚濁の残骸だった。
 天井にはりついていた美輪明宏そっくりのウガニクは、きょとんとした表情で頭部をくるりと一回転させると「ギコハハ……」と鳴いて、そのまま煙のように消えてしまった。
 ありがとう、ウガニク。あなたはいつでもテキストサイトを守護ってくれる、永遠のチャンピオンだ。
 すっかり満足した私は、ネジで締める式の入口扉をタックルにて破壊し、店外へとまろび出た。
 先端に鎌のついた弁髪を振り回して、夜の新宿をひと通り飛翔したあと、両足で屋根を突き破る方法にてタクシーへ乗車する。
 「お客さん、どこまで?」
 魔界都市・新宿のドライバーは、アバンギャルドな乗車方法を気に留める風もない。
 「そうだな、とりあえず半蔵門までやってもらおうか」
 車が走り出すと、やわらかなGが体を押す。それに抵抗せず、腹を満たされた肉食獣の笑みでシートに身を預けた。
 ああ、ウガニク、いまなら何だってできそうだ。
 ポケットからおもむろに黒電話を取り出すと――
 おんな上しからの着しんがびっしりと画めんをうめていて、わたしは一しゅんビクッとなった。かい外では、休み中のぶ下にでん話をすることはきん止されているのに……そう考えると、なさけなさでジワッとなみだがでてきた。あ、ごめんね、現じつなんてつまんないよね。虚こうで現じつをぬりかえるのが、虚こう日記の主しだったよね。わたし、ひっこむね。
 ――ポケットからおもむろに黒電話を取り出すと、ジーコッ、ジーコッとダイヤルを回す。
 トゥルルルッ、トゥルルルッ。数回のコールで電話がつながる。
 「ヘイ、総理大臣官邸かい。今から一時間後、首相をブチ殺しにいくぜ」
 よい大人のnWo 第二部~めぐりあい・邂逅編~完

スターウォーズ6


スターウォーズ6


エヴァンゲリオンが本邦の母子関係を暗に描いた傑作だとするならば、スター・ウォーズは米国の父子関係に焦点を当てた傑作である。そして旧トリロジー完結編の本作は、アジアの一小国を核兵器で半壊させ、中東の一小国を執拗な空爆で沈黙させつつあるかの大国が、原住民にならばその石弓に滅ぼされても構わないと願う、無意識の贖罪を暗示しているのだ。ルーカスは奇しくも彼らの建国に根ざすトラウマ、避けがたい原罪を白日の下に描きだしてしまった。これこそ、スター・ウォーズがかの国の存在する限り語り継がれていくだろう神話たる所以である。

スターウォーズ7


スターウォーズ7


スペオペ好きの小生もご多分に漏れず旧三部作、新三部作とも二回は通して視聴し、さらにザ・ピープル・バーサス・ジョージ・ルーカスを神妙な顔つきで鑑賞してから劇場へと足を運んだ次第であるッ! 新スター・トレック派の小生としては、パトリック・スチュアートが出演していないことが残念だったくらいで、旧作の構成を模しながら少しずつ位相をズラし、ついには全く違う場所にたどりつきそうな展開にワクワクさせられた。あれっ、以前もなんか同じような感想を抱いて興奮したのに、手ひどく裏切られた経験があったなー、なんだったかなーと思ってたら、エヴァの序と破だった。大胆に予想しておくならば、新たなシリーズはカイロ・レンのライトサイドへの転向がひとつの焦点になるように思う。なぜなら、未熟さと育ちの良さを感じさせるこのキャラクターの造形は、ISISに身を投じる英米の若者の迷いを投影しているように見えるからだ。思えば、3で描かれた「万雷の拍手の中で息絶える民主政」も、当時の政権の対外政策に向けた批判を濃く反映していた。もうひとりの主人公・レイに関しては、ルークの娘かミディ・クロリアンの落とし子か、はたまたシスの末裔かはわからないが、否応に手に入れた強大な力を行使するという事実だけで、当人の意志に関わらずそれはダークサイドとなり得ることを描かれるのではないか。ライトサイドがダークサイドに勝利したことで、フォースにバランスがもたらされた旧作の結末は、いまや現代世界の実情に対してあまりに単純すぎる解決である。おそらく両サイドを二つの文明に見立てた、両者の中庸的な混郁としての落としどころが模索されるはずだ。本邦の時代劇から多くの着想を得た本シリーズが、我々の精神性を汲んだこの結論にたどりつくことは必然とも言える。2017年、2019年に答え合わせをするとき、私の言葉を思い出して欲しい。

シン・ゴジラ


シン・ゴジラ


西日の差す四畳半の自室の辺縁をぐるぐる周回しながらする、齧歯類と猛禽類しか登場せぬポケットモンスター・ゴー(毛唐語で“CHINPOイッちゃう!”ぐらいの意)にも飽いたので、貴様ら大騒ぎのシン・ゴジラとやらをアイ・マックス(毛唐語で“AIが止まらない!”ぐらいの意)で視聴してきた。貴様らもご承知おきの通り、本邦の悲劇を気楽な創作に流用したエバー・キューなる凄絶の冒瀆を世に問うたあげく、それへの非難から逃れるためのファッション鬱で周囲の同情さえ買おうとしたカントク(cunt-Q)を所謂絶許(いわゆるぜつゆる、小粋なジャパニーズラップの一種)だった小生である。鑑賞前は1メートルはあろうかというリーゼントに2メートルはあろうかという長ランで、前の席でブヒブヒゆうおたくの背もたれに両脚を投げ出し、粗探しでクソミソにけなしてやろうとの構えであった。しかしながら2時間後には、背筋をすっくと伸ばしたゴスロリ美少女が真剣な眼差しでそこに正座していたのである。前の席のおたくは別の意味でブヒブヒゆっていたので、一瞬だけヤンキー姿にもどってチョウパンしておいた。もう公開から1週間も経過しておるので、おそらくどこかですでに語られてしまっている内容かも知れぬ。しかし、だれが言うかが問題となる時代であるので、屋上屋を架すを承知で予のお気持ちを貴様らに述べたい。ゴジラというキャラクターの本質とは、無意識の奥底でつながる我々全員の足元を浸す水のような、民族的とさえ言える恐怖とその共有である。先の戦争において死と破壊を共有した人々にとって、初代はひとつの映画を越えた滅びの追体験となった。我々は先の震災による国難をすべからく(皆を意味するエヴァ語)共有するがゆえに、今作において初代を視聴した人々がどのようにゴジラを眺めたかをついに知ることができたのだ。また、本作では冒頭より連続する会議場面が出色の仕上りである。その面白さは本作のテーマを補強しており、否応にカメラの中心に置かれる主人公格への物語補正を弱め、登場人物たちの扱いに一種の公平性を担保する機能を果たしている。いまは亡き小鳥猊下の名同人誌「MMGF!」に、この構造の類似を指摘しておきたい。かつて、同作者がノーラン監督のダークナイトとその続編、ライジズに対して述べていたことは、エヴァQとシン・ゴジラの関係性にも当てはまるだろう。震災の悲劇を皮相的に流用したエヴァQに対して、今作はゴジラという舞台装置を、明確な意志をもって利用することで、本邦の抱え続けている長い国難を描き切った。エヴァQでの批判がシン・ゴジラにつながった事実は前者のファンにとって非常に苦々しいが、私はここに監督の真摯な反省を見る。また、無人在来線爆弾など終盤のCGの不出来を批判する声があるようだが、それは制作側の意図を汲むことができていない。現実の重さを虚構の軽さの側に引き寄せるというメタ的な方法でしか、ゴジラという厄災に対する勝利を日本に与えることができなかったのである。しかしながら、次の国難を望むことは決して無いと言いながら、ゴジラがその時代が抱える恐怖の象徴として都度、復活し続けるメタ的な可能性の土壌が生まれたことに関しては、たいへん喜ばしい。そして、シン・ゴジラを経たシン・エヴァンゲリオンにおいて、生みの親から長く放置されたあの少年が、ついにはトラウマ電車を降りることをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。皆様の理解を得られることを、切に願っています。
シン・ゴジラ追記。まだ2回しか見ておらぬ不熱心なカントク(Cunt-Q)ファンだが、浮かれ騒ぐ交尾犬の貴様らにバケツで水をぶっかけ(Bukkake)ておきたい。東日本大震災に感情をゆさぶられ、クリエイターとしてこの国難を作品に反映させねばならぬと奮い立ち、自らに引き出しの無い、現実に依拠した完全なオリジナルをぶちあげたがゆえの大失敗作、エバー・キューが無ければ、シン・ゴジラの成功は存在せぬ。「自らの感情」と「オリジナルへの色気」を完全に廃し、彼の本来である「編集の執拗さ」と「コピーのリファイン」へ徹したからこそ、シン・ゴジラは空前絶後の大傑作となったのだ。頼みにならない己の主観、独創性のつまらなさ、この2つのマイナスがかけ算となり、プラスへと転じたのである。エンターテイメント作家でありながら、すべての作品に私小説的な動機が内在するところがカントクの魅力であり、シン・ゴジラを絶賛する貴様らは、エバー・キューを4回も劇場で見た俺様の偏愛にこそ、まずひざまずくべきである。

クリード


クリード


前回のファイナルから相当度の自己模倣が行われていたものの、あくまでロッキー・バルボア個人の物語であったため、作品テーマそのものがぶれることは無かった。しかし本作では、新人ボクサーの話をしたいのか、引退したボクサーの話をしたいのか、最後までどっちつかずのまま進行していく。過去作の名曲をフレーズのみで引用し、頑なにフルコーラスを流そうとしないことを考えれば、おそらく制作者のつもりは前者なのだろうが、オールド・ファンは射精直前の寸止めを幾度も食らった気分に陥り、イライラは募るばかり。そしてポッと出の新キャラが偉そうに愛する旧キャラをディスる様は、そう、まるでエバー・キューにおいて桃色タラコ唇がシンジさんを見下す様を想起させ、小生の怒りのボルテージは否応に高まるのであった。父親の名前を借りたのではない、自らの能力を証明するというテーマは、いまさらオリジナルの新規ボクシング映画を売る自信が無いという制作者の怯懦により、完全に裏切られている。さらに言えば、主人公が金持ちのホワイトカラーとか、恋人の難聴設定とか、ロッキーが癌になるとか、いくらでも刈り込める不要な枝葉が多すぎ、全体のバランスはグダグダである。あとさあ、試合に負けて勝負に勝ったっていうの、もうエエから。主人公のレガシーとやらの継承にテーマがあるなら、物語の必然として勝たせるべきちゃうん。ロッキー方向に日和っとるから、作品の自走性を信頼できずに自己模倣になるねん。ホンマ、けったくそ悪いわ。

君の名は。


君の名は。


あのさあ、非モテ童貞ロリコン野郎であるところのシンカイ=サンの作品は「ほしのこえ」(ひらがな表記なのがまたムカつく)から見てる熱心なアンチであるところのこのボクから、本気で感想を聞きたいワケ? 語作りの薄っぺらさを直視せず、厚塗りの絵作りに逃走し続けている、あの犯罪に至らなかった方のペドフィリアについて、いまさらまた語れってえの? キミ、小鳥猊下の「ボイシズ・オブ・ア・ディレッタント・オタク」読んでないの? わかった、わかったよ、わかったからそれ以上、こっちに顔を近づけないでくれ。キミの臭いの粒子がボクの敏感肌に付着したらどうしてくれんだよ、もう(謎の擦れ音)。初期作から一貫して、いかに膣口と陰茎を遠ざけるかというテーマをストーリーに落とし込もうとし続けてきたカントクだけど、今作の方法はじつに奇抜だったね! ネタバレにならないようにしゃべるけど、カントクの性的嗜好へ新たにネクロフィリアが加わるおぞましい瞬間を、観客たちは否応に見せつけられたというワケだね! 話は変わるけどさあ、ドクター・マシリトと、なんだっけ、飲尿マキアートみたいな同人作品を商業誌に臆することなく発表する剛の者との対談記事を偶然ネットで読んだんだけどさあ、近年のカントクはこの剛の者と同じワナに陥っていると感じたよ! 画面の細密さを増すことで、物語の希薄さと失速感を補おうとしていながら、まったくそれに自覚的でないというワナだね! シン・ゴジラのCunt-Qはエバー・キューへの反省から自身の弱点へ意識的になり、徹底したそれらへの逆張り、長所へのレイズにつぐレイズでついに大傑作をモノにしたけど、シンカイ=サンにこの方法が有効かは疑問だよ! だって、伸ばすべき長所、拡大するべきイビツがどこにも無いんだからね! 整形にまで手を出した厚化粧の醜女、これこそがカントクの表現の本質と言えるよ! もう20年、この非モテ童貞ロリコン野郎が作るものを見てきているけれど、加齢によるセカイ系からの離脱がまったく見られないのは、わたせせいぞう的マンネリズムの崇高さをもはや読み取るべき域に達しているのかもしれないな! 映像的には第1作目から執拗なエヴァ・フォロワーで、なぜそこでこの構図、なぜいまこの画なのかという問いに対する答えはすべて、「庵野秀明が、エヴァの中で最高にカッコイイ使い方をしていたから」なんだよね! 隕石が落ちて村が消えるときの描写とか既視感が強すぎて、見てられないくらいだよ! そして、オイィ! 毎年8月15日に旧エヴァ劇場版を見返し、おそらく来年からは3月11日にシン・ゴジラを見返すことになるだろう俺様に向かって、手のひらアップの演出を多用するんじゃねーよ! もう精液がトッピングされているようにしか見えねーんだよ! あとさあ、あちこちにオンナの若さ(あるいは幼さ)に過大な価値をつけくわえる中年のオッサンがチラチラ見え隠れして、気色悪くて集中できねーんだよ! ふつうの女児は自分の唾液が売れるなんてブルセラ的発想は持たねーし、ババアは「私が“少女”の頃は」なんて回想はしねーんだよ! とは言いながら、生本番をいかに避けるかのSFトリックを考案し続け、映像的には一貫してエヴァ・フォロワーのカントクだが、本作のラストシーンでは陰茎の先端が大陰唇へわずかに触れていたことは間違いない! 最後の最後で作品タイトルを男女にハモらせることで醸成される作りごと感、クリエイターの自意識臭にノックアウトされながらも、その前進だけは認めてあげようじゃないの、ええ? 以上、アベックどものすすり泣きが広がる劇場で、ひとり苦虫を噛み潰した表情で、眉間のシワだけが中年だったゴスロリ少女の俺様が述べる手前勝手の感想だった。もうッ、アタシに聞くのが悪いんだからね!