子どもの絶望だけが真の絶望であると少女保護特区で喝破したところの俺様だが、近々に発生した例の陰鬱な児童遺棄事件の顛末を想像するとき、なぜかその映像が新井英樹の絵柄で生々しく脳裏に再生され、ひどく気の塞ぐ日々である。灯りのない暗い部屋で、食事も与えられないまま、届かぬ悲鳴を上げ続けるのはいかばかりの絶望か。かたや、アクセスの無いネットの片隅で、感想も与えられないまま、届かぬ更新を続けることの、衣食足りた惨めさは、はたして余人の同情や憐憫に値するだろうか。
四方を妄想の敵に囲まれたnWoの乾坤一擲、少女保護特区は、いまこの文面を閲覧している諸君の一人ひとりが直接関与した加害者として知っているように、凄惨極まるネグレクト、黙殺のうちに幕を閉じた。ネット大道芸人のあげる悲鳴の切実さは、モノラル・スピーカーに濾し取られた雑音へと変じ、nWoのURLを通り過ぎる人々はそれへ一顧だに、一瞥だにくれようとしなかったのである。極めて優しい俺様は、それがネット世界に長く生息した人々の習い性であることもまた、理解している。ここでは、心に何かさざ波が生じたとして、その衝動を誰かへ手を伸ばす正の閾値まで高めることは困難だし、もし不快を感じたとしてさえ、ただ強めにマウスをクリックしてブラウザのタブを閉じさえすれば、晩飯がまずくならない程度には充分に胸がすくからだ。
だが、俺様が言いたいのは一般論ではない。少女保護特区であり、nWoである。ホームページという擬似メディアの無力さを改めて確認させられる今回の顛末に、アルコール性の健忘症でずいぶんとならした俺様も、さすがに同じアプローチのままでは本当にアクセス数ゼロのネット無縁仏と化してしまうと危惧し始めた。いよいよ、全く異なる芸風を開拓することによって、緘黙症の諸君のみならず、新しい客層を積極的に求めねばならない季節が訪れたということだ。
しかしそうなれば、十年をかけてnWoが提示してきた世界観が破棄されることに対して裏切られた気持ちを抱き、悪し様な声高に、あるいはひっそりと去ってゆく者たちが生まれることも、また必定であろう。少なくともこの文面を閲覧している諸君には、たいへん心優しい俺様が、諸君の繊細極まる心へ徒に流血を求めたとの誤解は与えたくない。交わされた虚しい約束や、通りすぎていった愛のささやきが、ついに“萌え萌え学園ファンタジー”へと集積することをあらかじめ心得て欲しいのだ。
どうやら一部の諸君には、俺様の意図するところが正確に伝わっていないようだ。抽象的な文言を論理として脳内へ構築することが困難な、表情筋の退化した、鳩の如き表情を浮かべている君へ、よりわかりやすい映像を与えよう。君の立たされている場所は、両方の側頭部が著しく後退した宇宙人の王子の俺様が白手袋の握りこぶしを眼前に誇示しながら、「どうなっても知らんぞー!!」と君に向けて絶叫しているくらいの危地なのである。
まだ、間に合う。諸君は思いのたけを俺様へ進言してよい。しかし、言葉を捧げるための流麗な文体を模索するあまり、一昼夜をかけるうちにちんちんまんまんへ手が伸び、すべてどうでもよくなってしまう例の作業を経る必要はない。考えてみたまえ。王の問いへいらえを返すのに、まず己が王であらねばと苦悩する臣下がどこにいようか。問いは単純である。“萌え萌え学園ファンタジー”を次回更新とするべきかどうか。肯定か否定のみで、求める内容として全く過不足はない。幸福な未来のために、俺様はいましばらく時間をかけようではないか。
あと、今回の話題と全然関係ないし、全然気にしてもいないんだけど、え、もしかして、今年もコミケ近いの? ヤだ、アタシったら、コミケがそんな近いなんてちっとも知らなかったー、いやーん、って思った。
シャーロック・ホームズ
今更ホームズをやろうというのだから、何か尋常ではない切り口を発見したのだろうと思っていたら、やっぱり尋常ではなかった。原作のマイナーな要素を切りだして造形したキャラクターが、いずれも立ちまくっている。しかしながら極東在住のおたく諸氏の抱く感想は、その大勢が「不二子」ないし「勇次郎」へと帰着するに違いない。シリーズ化希望。
インセプション
結論から言えば、本編の主要な映像をコラージュした配給会社による予告編がいちばん面白かった。君は「何度も見る価値がある映画」という評論筋のふれこみに騙されてはいけない。なぜなら、物語が難解なのではなく、設定が難解であるに過ぎないからだ。以下の括弧内は読み飛ばしてもらって全く問題無いが、「ゲメレ星人の右脇の下から伸びているのは我々で言うところの生殖器である。彼らは我々のようには、その露出を躊躇しない。なぜならそれは、文化的役割を持つ第三肢と考えられているからである。重力方向に対してそれを垂直に三十度捻りながら性交を行えば快楽目的の情事となり、三十五度を越えて捻った場合は本来の目的、すなわち純粋な生殖の合意となる。ただし、ゲメレの母星における重力は直下へ向かうが、その衛星においては天頂へ向かうことを念頭に置かねばならない。さらに、150日周期で母星と衛生の重力方向が入れ替わることは、触れるまでもない常識である」と同程度に混みいった設定を開始直後から一時間足らずで叩き込まれ、後に訪れるトリックの衝撃と物語の感動がその設定の理解度に大きく依拠するという作り方になっており、SFとミステリーの融合はギャグにしかならないというのは、改めて真理であると気付かされた次第である。それと、「マトリックス以来の新しい映像表現」って、ほんとに北米メディアが言ったの? 英語で記述されてる第三世界の掲示板から適当に拾って極東メディアが翻訳したんじゃないの? ウォシャウスキー兄弟つながりで言えば、ザ・ウォーカーがたちまち上映終了になって、あちこちインセプションだらけになったのもすごく気持ち悪い。つまり、ケン・ワタナベの出演こそが本邦における高い評価の理由なんじゃないの? なんとなれば、我々は学校で、職場で、ネットで、あるいは家庭でさえ、愛国心を検閲される社会に生活しており、 抑圧されたその感情は常に出口を求めているため、いったんそれが見つかれば高圧で噴出するのである。例えば、芸術とか、スポーツとか、もしかして差別とかね。あと、「最後にコマが倒れるシーンをフィルムに入れなかったのは、深いよね」としたり顔で語る学生カップルの男の方、ちょっとこっち来い。直々にチョウパンいれてやるから。
約2名という圧倒的な臣下からの要望を受け、約1名しかおらぬnWo構築担当を泣かせて、ついばみ乳首、ではなくツイッターとやらをnWoからのリンクに加えた。貴様らマイミクa.k.a.緘黙観客どもは積極的にこれをフォローし、リツイートし、エレクチオンしてよい。
http://twitter.com/kotorigeika
加えて、萌え萌え学園ファンタジーの更新可否について、継続して意見を受け付けている。詳しくは前回の日記を読むがよい。
あと、えッ、コミケって今週末なの? いやーん、全然知らなかった! 全然興味なんかないけど! ないんだからね!
父として考える
挑発でフックを作り集客につなげた初期のnWo風に記述すれば、私はずっと、子どもも伴侶もいないのに人文・社会学系の言説で飯を食う連中を胡散臭く、全く信用に足りないと考えてきた。その類の人々は己のライフスパンを越えた先についてめったに思考しないし、例えしたとしても我が身に引きつけての切実さは求めるべくもない。彼らは人類という名の船へ一時的に乗船した客に過ぎず、その言葉が覚悟に欠け、何より決定的に軽いのは、己の死をもってここから下船できると心のどこかで考えているからだ。自我の消滅が世界の終焉を意味するがゆえに、人類の継続を笑止の絵空事としてとらえている。そうすれば、どこまでもシニカルに生命の営みを嘲弄できるし、あるいは無謬の傍観者に徹していられる。この本を読んだとき、常の遠雷ではなく、初めて鼓動としての声を聞いたと思った。子を持つとは、一個の意識の消滅を越えた先に不滅を信じ、善と永遠を信じる愚かさに添い遂げることである。
第9地区
突っ込みどころは満載だけど、それをあえて指摘したくないほどに面白い。グロな地球外生命体とかに仮託して、きれいなものが実は汚く、汚いものが実はきれい、みたいなテーマを描くときのSFって大好き。ただ最近、ヨハネスブルグ方向へアフリカのイメージが舵を切りすぎているので、そろそろ誰かキリンヤガを映像化してください。あと、低予算でSF映画作ったら何でもブレードランナーって言っとけって売り方、そろそろ止めにしようよ。
インビクタス
ようやくモーガン・フリーマンがネルソン・マンデラを演じたことに、誰もが溜飲を下げたことと思う。”Your country is proud of you.” ”Listen to your country.” スポーツに預けた単純かつ力強いメッセージに胸を打たれた。人は、自分以外の何かのために働いたとき、その力を最大に発揮できる。この実感を与えられないまま生を終えることは、悲劇に他ならない。それにしても、こういうのを見せられると、つくづく映画芸術は本邦の持ち物じゃねえなと、元・名誉白人で政治嫌いの一おたくは極東で感じるのであった。でも、フォレスト・ガンプのノリで歴史映像を改竄した冒頭だけはどうかと思った。
過去更新の電子書籍版頒布を開始した。サイドバーの“非実在性虚構”からダウンロードページへと進みたまえ。第1弾は「生きながら萌えゲーに葬られ」である。
http://newworldorder.jp/ebook/
epub版、i文庫版の2種類を用意した。ちなみに、縦書き閲覧の可能なi文庫版が小生の好みだ。今後の展開については、諸君の双肩にかかっていると言っておく。なんとなれば、再三表明しているように、nWoはインタラクティブ性を最重要視するホームページだからである。
また、前回の日記に述べたように、ツイッターでツイートのツイーティングを開始している。積極的にこれをフォローし、リツイートし、クリトリスしてよい。
あと、事後報告でたいへん申し訳ありませんが、今回のコミケのことです。結局、だれからの声かけもありませんでした。世界よ、滅亡するがいい! 小鳥猊下と、少女たちだけを残して!