フェルマーの最終定理
数学のわからぬ小生にとっては、SF的な楽しさが先行した。「ひとたび立証すれば、何人も覆せぬ」というシンプルさに憧れる。なんとなれば、nWoは何度も立証し続けているが、承認はおろか何人の追試も行われぬ状態にずっと置かれているからである。
ソファとテーブルのみの簡素なスタジオセットの中央で、一人の婦女が腰掛けている。白目に蝿がとまるが、某有名拳闘漫画の最終回を想起させる前傾姿勢で微動だにしない。突如、頓狂な音楽が流れだすと同時に、婦女、バネじかけの如く跳ね起きる。その顔面は余すところなく靴墨のようなもので着色されている。
「ハァイ、全国津々浦々、老若男女のみなさーん! 小鳥尻ゲイカがテンションあげあげのスーパーハイテンションでお送りする『nWoの部屋』の時間がやってきましたよ! (興奮の極みのロンパリで)ってゆーか、アタシがこんな有名番組の司会に抜擢されるだなんて、リアルに超ウケルんですケド! コーデリア、見てる? ついに帰ってきたの! アタシ、全国のお茶の間にまた、帰ってきたのよ! ……え、何? 全国放送じゃないの? ははあ、ネットで有料動画配信。(前髪に手櫛を入れながら、とたんに低い声で)話がうますぎると思ったわ。やっぱり裏があったのね(露骨に舌打ちする)」
画面の外でプロデューサーらしき男が両手を身体の前で振り振り口パクで『だましてないだましてない』と言う。
「(両腕をソファの背に乗せてのけぞって)あー、いっきにやる気うせたわー」
画面の外でプロデューサーらしき男が合掌して口パクで『かんべんかんべん』と言う。
「わかってるわよ。いまのアタシに仕事えらぶ権利なんか無いってんでしょ。(立膝になると片手のメモを隠そうともせず)えー、記念すべきネット配信第一回のゲストわぁ、(棒読みで)なななーんーとぉ、ホーリー遊児さんにお越しいただいておりまぁす。あの有名な(全くそれを知らない者のイントネーションで)『トラ食え』シリーズのシナリオライターに、最新作『トラ食え9』発売直後のホンネを直撃したいと思いまぁす」
「(カメラがスライドすると、サングラスの男が映される。足を組んで鷹揚に座っており、その秀でた額はスポットライトを激しく照り返している)ふん、宵待薫子で一時代を築いたあのnWoの部屋がいまやこんな安普請で(土足で軽くテーブルを蹴る)、場末のネット配信にまで堕ちてるとはね。(画面外のスタッフへ)宵待チャン、いまどうしてんの? あ、死んだの。それはご愁傷様。(値踏みするように小鳥尻を眺め)だから、どこの馬の骨ともわからない芸人が司会してんのか。不況の影響かあ? どれもこれも安く上がってんな!(馬鹿笑いする)」
「……ンだと、この野郎!」
袖をまくり立ち上がりかけるが、プロデューサーらしき男が両手を身体の前でクロスさせながら口パクで『がまんがまん。また干されたいの』と言う。
「(硬直した笑顔で)ドウゾヨロシクオネガイシマス」
「(口の端を歪めて)フン。もはや僕が出演するのにふさわしい番組の格とはとうてい言えないが、金科玉条のインタビューに雑誌を買う能動性すらない連中にも等分に僕の言葉を届けてやる義務がある。例え、こんな場末のネット配信番組で羞恥プレイに近い待遇を受けてもだよ。それが、(充分に計算された角度と速度で首を振る。前髪がはねあがり、きわどい部分をお茶の間に公開する寸前、前髪は元の位置に戻る)過去に類を見ない国民的人気作品を世に送り出してしまった、罪深い僕の才能に対する贖罪というものだからね……(右手で口元を押さえ、左手で身体を抱くポーズを作り、流し目をカメラへ送る)」
「(無視して)それでは早速、質問に参りたいと思います。(カンペに目をやりながら)今回のトラ食え9は前作から実に5年の歳月を経て、まさに満を持しての発売となりましたが、苦労なさった点や制作秘話などをお聞かせいただけますでしょうか」
「(両手を打ち合わせて)ハハハ、上手上手。ちゃんとおしゃべりできるじゃないの」
「(目線を外したまま硬い声で)どうも」
「(ねっとりと嘗め回すように小鳥尻を見る)いいね、いいね。そういう強気なの、嫌いじゃないね。最近、草食系とやらが多すぎて、食傷気味だからさ。草くってテメエだけおつうじよくて、こっちの腹ァくだらせる連中がさ! いいですよ、制作秘話ね。実は前作から古巣を捨てて、制作会社が変わったんですね。仕事する相手もツーカーの同年代ばかりじゃなくて、若い子が圧倒的に増えてね。最近の若い子たちはね、とても頭がいいんですよ。昔なら信じられないけど、大学出てるくせにゲーム屋やってんだもん。どいつもこいつも、偏差値高いんだ。卒論とかで鍛えられてんのかな、文章も達者で、なんでも言葉で説明できちゃう。で、説明できるもんだから、やったこともないのに本質をわかった気になっちゃうんだな。体験が欠落してしまうの。でも、いまや受け手の大半も体験が乏しい世代だから、それに気づかないんだよね。だから、表面はすごく洗練されて見えるんだけど、軽いの。情念が伝わってこない。僕はそういうの、ヤなんだよ(笑)。古いって言われてもさ、受けつけないの。書き手のナマの経験値がさ、何を題材にしたって、隠しても隠しても行間から否応に染み出してくるような文章じゃなきゃ、トラ食えのシナリオを記述するのにふさわしいとは言えないのよ。ぬぐってもぬぐっても、染み出る先走りね(舌で唇を執拗に湿しながら、こぶしの人差し指と中指の間へ親指を出し入れする)。わかる?」
「(あくびとも嘆息ともつかぬ様子で)はあ」
「(サングラスの位置を直しながら)なんとも淡白な反応だね。デレないツンデレってわけだ。まあ、いいや。だから、僕は若手社員たちの教育から始めなくちゃならなかったわけですよ。みんなスケジューリングもうまくて、仕事も速くて、それでいて一定のレベルを超えるものを作ってくる。でも、僕は不満だったのね(笑)。ふつうのゲームならそれでいいんだろうけど、これはトラ食えではないって思ってたの。(興が乗るにつれてやさぐれた感じを増して)ヤニも吸わずに青白い顔でカタカタってキーボード打ってさ、ほとんど残業も無しに定時退社するわけよ。んで、飲みに誘っても、全然のってこないわけ。『それって給料分ですか?』って言われてアッタマきてさ。モノをつくるドロドロが、会社っていうシステムでおきれいに下水処理されてんだよ。だから、制作開始から一ヶ月くらいしてからかな、全員退社した後にハードディスクをひとつ残らず五階の窓から放り投げて、プリントアウトしたシナリオもびりびりに破いてやった」
「(あくびを隠すように両手を口元へ当てて)まあ」
「(得意げに)次の日、床に散乱したシナリオの残骸にあぐらをかいて、定時出社の連中をお出迎えしたのよ。どいつもあんぐり口を開けてさ、いっそ怒鳴りあいになれと思ってたね。なのに、『どうするんですか、これ』とかぼそぼそ声の抗議だけで片付けを始めやがったからよ、アッタマきて手近の青ビョウタンをネクタイごと胸倉つかんで、したたかブン殴ってやった。そしたら、女みてえに(口マネで)『なにひゅるんでひゅかぁ~』だってよ! 大切なものを土足で踏みにじられてんのに、テメエの存在ごと作ってねえから、本気で怒ることさえできねえのよ。俺はキレたね。机の上に仁王立ちして、啖呵よ。『テメエらは天下のトラ食えの制作に参加してんだぞ! なんでもっとそれを利用しねえんだよ! クオリティアップのためだったら、どんなに時間をかけたって社長からも文句を言われねえ、誰にも文句を言わせねえ、国民の一割が購入することがあらかじめ決まってんだからな! 大学出てるくせに公務員じゃねえ、わざわざゲーム屋を選んだんだ! それなりの我ってもんがあるんじゃねえのかよ! 納期を守るとか、そんなつまらん社会性はぜんぶ放り投げて、ただ創造だけを我利我利に追及しろよ! トラ食えの制作現場にいんだぞ、おまえら! もっと誇りを持てよ! もっと貪欲になれよ!』」
「(あくびに目を潤ませ、眠気に頬を紅潮させて)かっこいい」
「(勘違いに小鼻を膨らませて)それからよ、『おまえら、これからトラ食えが何なのかを教えてやる』って言って、問答無用で全員引き連れて、むりやり午前中から店ェ開けさせて、朝までキャバクラ三昧よ。まあ、上司の飲みすら断る青びょうたんたちをキャバクラに引きずり込むための、計算ずくの大芝居だったわけだ。んで、その日から四年間ずっと全員でキャバクラ。制作期間を一日二十四時間で計算し直したとしても、半分以上はキャバクラにいたな。もちろん、制作費も九割がたキャバクラに消えたよ。おかげでヤツら青びょうたんどもの人格もいい具合に陶冶されたね。まあ、少々やりすぎたせいで、金髪の顔面ピアスにアロハ姿で重役出勤、キャバ嬢にケータイかけながらダラダラ片手で仕事しやがるもんだから、制作の終盤にはシュラフ持ち込んで会社に泊まり込みよ。開発室は煙草の煙でモウモウしててさ、いよいよの追い込みにはビタミン注射の回し打ち。品行ホーセーだったあの若手どもがよ、修羅場に目を輝かせて、どんどんいいアイデアを出してきやがる。(舌足らずの声の演技で)『ホーリーさん、閃いたッス! セーブデータを1つにすれば、今までの三倍売れるんじゃないッスか?』(胸元で右手を握り締めて)『ビッグアイデア!』。嬉しくって涙が出るってのはこのことさ。そんなよ、社会的には落第しちまった連中がよ、本当にキレーな話を書いてくんだよ。行間からにじむ情念がさ、下手な演歌よりも泣かせんだ(手のひらで鼻をすする)。まあ、少々その他の部分で妥協することにはなったがね(カメラから目線を外す)。今回のトラ食えで、うちの会社は組織としてひとつの大きな山を越えたと感じたね。レベルアップさ(例の効果音を口ずさむ)」
「(カンペを横目で見ながら)しかし、疑問は尽きません。なぜ他の何かではなく、キャバクラだったのでしょうか」
「(足を組み直しながら)いーい質問だ。トラ食え9くらいの、文字通り日本の全家庭に一本が行き渡る規模の国家プロジェクトになると、ただ良作であるということを超えて、どうしても時代時代に即した、大衆を啓蒙する要素を盛り込む必要が出てくる。我々は常に、我々の巨大な影響力に自覚的なんだよ」
「そこで、キャバクラですか」
「(莞爾と微笑んで)おうよ。トラ食えの登場人物に対するお定まりの批判のひとつに、『女性は、処女か母親しかいない』ってのがあるが、今回はそれを逆手にとらせてもらった」
「それが、キャバクラですか」
「(ひどくいい笑顔で)おうさ。ハレとケってヤツよ。キャバクラは絶望的なケの中にあってハレを永続化させようっていう近代の試みなんだよ。民俗学的に見ても、ムラ組織が解体された結果として日本人が失った祝祭機能を代行する場所って言えるわけよ、キャバクラは。いろんな娯楽がある現代にさ、わざわざゲームっていう一頭地劣ったところに群がる連中はさ、どいつもこいつも妙にご清潔なわけ。倫理的によく躾けられていることを見せることで、ママか誰かが褒めてくれるって信じてるみたいにさ。(吐き捨てるように)誰も褒めちゃくれねえのによ! 品行ホーセーが現世での成功に直結するってなら、今頃ニートどもは大金持ちだよ! いままでトラ食えが連中の心をつかんできたのもさ、女性的なるものとして処女と母親だけを記述してきたから、当たり前の帰結って言えるわけ。でも、もうそんなのはヤになったんだよ(笑)。神職とか河原芸人とか、倫理ってのは相対的だからさ、ケガレを代行する装置が相対化を担ってきて、そこへケガレを押し付けることで相対的に清潔でいられるってことを連中は知るべきだと思ったわけ。だから今回、キャバクラで剃毛、おっと、啓蒙なわけよ。しなびたフルーツ盛やら、水道水のミネラルウォーターやらでさんざんボッタくっておきながら、帰り際にポケットのアメ玉をキャバ嬢にやったら、発展途上国の子どもみたいなすげえキレーな笑顔で『ありがとー』って、本当にうれしそうに言いやがるわけ。もう、そういうのにグッときちゃうのよ。俺くらいの重鎮になると、枕営業なんか受けることもあんだけどさ(意味ありげに小鳥尻を見る)、確かに顔立ちも整っててイイ身体してるよ。けどさ、情事の後で後ろ手に髪を束ねてるときなんかにのぞく打算的な横顔に、もう心底からどっと疲れちまうのよ。後ろ指さされないためだけの品行ホーセーで、そのくせ隣人のゴシップには目を輝かせて、娘息子から刃物刺される連中なんかよりも、パンツに大便のスジつけて、髪の毛バサバサで、ゴキブリみたいな質感の顔面で、ホントきったねえんだけど、俺に言わせるとキャバ嬢の方がもう何倍も、一億倍もキレーなわけ。もう、たまんないのよ。(突然、カメラに指を突きつける)おまえら日本男子は全員、いますぐキャバクラ行け! キャバクラ行け、キャバクラ行け、キャバクラに(天をあおいでお茶の間にきわどい部分を公開しながら絶叫する)行けぇーーーッッ!!! 日本男子なら将軍様に仕える心意気ってのが、わかるだろ? 『いざ、キャバクラ!』、なんつって!(ソファに身を投げ出して、馬鹿笑いする)」
「(あきれ顔で)ホーリーさん、ホーリーさん」
「(ずり落ちたサングラスを直して)ああ、これは失礼。少し興奮してしまったようだ」
「(冷静に)キャバクラはもう充分お聞きしました。(カンペを見ながら)今回、若手のスタッフが制作の大部分に携わったようですが、それをとりまとめるホーリーさんのお仕事はどのようなものだったのでしょうか」
「(衣服を整えると、気まずげに咳払いして)そうですね。シナリオプロットの作成と、制作進行および品質管理ですね。プロットを書いたメモ用紙をできるだけ小さくし、簡潔にまとめるのにとくべつ腐心しました。ようやく想像の翼を広げる楽しみを知った若い才能たちに、できるだけ自由にやらせてみたかったんですよ(笑)」
「そのメモには、どんな指示が書かれていたんでしょうか」
「プレイ前の方へのネタバレは避けなくてはいけないという前提の元ですが、いくつか例を挙げましょう。『魚類と父親。父親は死ぬ』『新妻と伝染病。新妻は死ぬ』『令嬢と人形。令嬢は死ぬ』『学院と院長。院長は死ぬ』『姫と騎士。両方死ぬ』……ざっとこんな感じですね」
「(目を大きく開いて)死にまくりですね」
「(深くうなづいて)テロルによる大量殺戮の時代に、死の個別性と恣意性を強調したかったんです。時代に敏感であることも、トラ食えが愛される大きな理由のひとつですからね」
「(真剣な表情で)キャバクラですね」
「(神妙にうなづいて)ええ、キャバクラです。そして、最終工程のブラッシュアップでは、視認性を高めるのに骨を折りました。ひとつの文章がひとつのウィンドウに収まるように調整する作業ですね」
「具体的にはどのような作業だったのでしょう」
「半角を全角にしたり、全角を半角にしたりする作業です。これがまた神経を使いましてね! あまりの精神的な重労働に、頭がハゲあがるかと思いましたよ(笑)」
「えっ」
「いやだなぁ、もちろん言葉のアヤですよ」
「えっ」
「えっ」
突然、画面の解像度が粗くなる。カメラが手前へ引いてゆくとスタジオの光景は遠ざかり、薄暗い部屋のモニターが映し出される。画面の前には一人の男が座っており、その手には携帯ゲーム機が握られている。
「クソッ、わからない! なんでG.Wなんだ! 何の変哲も無い、ふつうのゲームじゃないか! なんでG.Wなんだよ! もしかして、まだボクには見えていない何かがあるのか? クソッ、ホーリー遊児め、どこまでボクに関心を持たれれば気がすむんだ! 読みといてやる、読みといてやるぞ……!!」
インターホンの音が幾度も鳴っているが、男、携帯ゲーム機から顔を上げようとはしない。
カメラは薄暗い部屋から薄暗い廊下を引いてゆき、玄関を通過し、やがて鉄扉の外側を映し出す。新聞受けからはみ出した広告が通路に散乱している。せむしの男、インターホンから指を離し、途方に暮れたといった様子でため息をつく。
「トラ食え9が発売されてからと言うもの、ずっとこもりきりでヤンス。周陽も引き継いだ携帯ゲーム機のプロジェクトを投げ出したまま、辞表を提出しちまったでヤンス。枯痔馬監督、はやく戻ってきてくれでヤンス……」
沖縄決戦
官民に渡る膨大な群像劇を平易に理解させる演出に、硬質な台詞をきちんと聞かせる俳優の力。日本の現状に絶望的な気持ちになること請け合い。もちろん、戦後的な意味ではなく。
ぼくは反省をした。反省をしたので、みんなが読みたい更新をするべきだと思った。なので、時流におもねった卑屈な微笑を凹凸の激しい顔面へ貼り付けながら、上唇より前歯を十センチほどはみださせながら更新をしたのです。狂ったように笑いながら今回の更新を読み返し、これだけ時流におもねったのだからリンクとか張られてたいへんなことになったらどうしよう、とか食事中に期待へ胸と鼻腔とか膨らませて、家人にたいへん気味悪がられたりした一週間であったが、諸君もすでにオチは読めていると思うが、反応は全くなかった。むしろ、例によって更新の翌日には来場者とweb拍手ががくんと減った。いよいよ何を更新しても同じだという徒労感が募り、更新により欝が昂進する例の精神状態になり、更新の元ネタになったゲームへの没頭がますます深まったりした。ぼくはあんな更新をして君たちにまるでぼくは更新の元ネタになったゲームを嫌っているみたいな印象を与えたかもしれないが、それは素人考えとゆうものです。今回のやつがぼくはすごく好きなのだった。なぜかとゆうと、どこまでレベル上げしてもレベル上げが終わらない感とか、どこまでボスを倒してもまた強いボスが出てくる繰り返し感が最高だからです。大人になると現実の毎日の積み重ならない感ってちょっと絶望的でしょう。自分の子どもとか、外的なものさしがあると事情は変わってくると思いますが、昨日と今日の違いとか、一年前と今日の違いとか、ときどきすごくわからなくなる。だから、単調な繰り返しが積み重なって、するとレベルが積み重なって、そいでボスを倒すとか、宝が手に入るとか、具体的な形で報われるとゆう当たり前の希望のようなものを大人になっても体験できるところがすごい好きです。現実では最高レベルになった自分が雑魚を一蹴できなかったり、はるかに強いボスが次々と登場する無理ゲー感の中で、ただかろうじて死なないように毎日をしのぐだけだったりしませんか。ほいで、ネットでも更新するとホームページの文字数は確実に増えますが、文字数と経験値は違うのでレベルアップできない。すごい婦女子がぼくに欲情したメールを送信するとか、そうゆうステキはめったにありません。たぶんあらかじめ設定されているイベントの数が少ないのだと思った。だから、延々戦闘だけをして経験値をためてゆく終わらない感とのオーバーラップが、ぼくを今回の更新の元ネタのゲームへ駆りたてるのだ。すれ違い通信がすれ違いなのにすれ違わないのもなんかじんわりする。諸君のものすごい視線を合わせない感じに不安定な心情をやみくもにつらねたが、文字通りすれ違いのみの壊れたすれ違い通信であるところのここミクシィで、とりあえず次回にどんな更新が読みたいかなどの方向性をすれ違いざまぼくに示すと良いです。
チェンジリング
タイトルから逆算した先入観から、寓意的な話だと思ってました。国家に狂気を立証されることの恐怖もさることながら、わたくし初めてアンジェリーナ・ジョリーが役者なんだなと実感しました。
ベンジャミン・バトン
原作未読の小生にとって目当てはケイト・ブランシェットでしたが、たいへん楽しみました。人生とはlearnとunlearnから出来ており、始まりと終わりを逆にしても成立するという構図がとても秀逸でした。ぼくもそろそろ人生を肯定するような更新をしたいです。
ラースと、その彼女
この映画は君。そして、ぼく。言われなくても、君とぼくがいちばんわかっている。けど、いつまでこの人生を生きればいいのか、わからない。
チェ
「モーターサイクルダイアリーズ」「チェPart1」「チェPart2」「コマンダンテ」の順に見れば、すごく贅沢な感慨に浸ることができます。ぼくと君の世代に共通した、自己憐憫たっぷりの我が我が口調を反省したい気持ちになれますね。あと、賢明な諸氏においては改めて指摘するまでもないと思いますが、念のため。“生きながら萌えゲーに葬られ”の一節であるところの、「思えば高い代償であるが、おたく以外の人間による不断なるおたくの収奪を根絶したいと願う純粋な熱情によって、それは実現可能となるはずだ」は、氏に関する著作からのパロディです。え、気づいてなかったって? この、モンモウ教徒め!
盆に帰るべき故郷もなく、ブヒブヒ言いながら苛烈な肉体労働で日銭を稼ぐわたくしを尻目にして、貴様らはどうせコミケットとか行ったりしてたんでしょう? ナントカさん、久しぶりッス!とか裏返った声で右手を後頭部に乗せながら発話してたんでしょう? これ、今度の新刊なんで!とかハスキーとは別種の形容を与えられがちな甲高い声で広告の裏へ身体に悪いインクでガリ版刷りの紙束を誇らしげに交換していたんでしょう? 精細に膣の内奥を描写できる貴様らは、むしろ労基署の方へ顔を向けながら与えられるコンビニの自給より少ない日当を得るわたくしを尻目に、非課税の不思議な五百円玉や千円札をたくさん手に入れたんでしょう? 親世代となった親業無自覚のおたく共が連れまわす着せ替え人形と同義の女児がその意味を理解せぬまま取らされる扇情的なポーズに貴様らはカメラを向けたんでしょう? 汗をぬぐうふりでよだれをぬぐいながら貴様らは、コミケット参加者の低年齢化には社会的な義憤を感じますよ、ナントカさん! 薄布で擬似的に二次元キャラの表皮を形成することで快楽を得るという、未だ名付けられぬ精神疾患の持ち主どもが鏡の前で練習してきた薄ら笑顔を張り付かせるのに、貴様らは舌なめずりしてたんでしょう? 若者の性風俗の乱れ、有名人の顔面を精細に描写した長方形の紙片と交換にきっと彼女らとは交歓におよぶことができるのでしょう? 馬鹿にしないで! わたし知ってるんだから、そのくらい! そして、あの有名な、身体に悪いインクでガリ版刷りした売れ残りの紙束を投げ込むことで火勢を強める最終日のとんど焼に蝟集して行われる、擬似的二次元キャラとの大乱交大会を貴様らは楽しんだのでしょう? 常人を倍する脂肪を運送した肉厚の貴様らは頭髪と入れ替わりに前進した額を脂でてらてらと光らせながら、常人を倍する速度で次々と性的絶頂に達したのでしょう? 夜明けの電車を悪臭で充満させながら先端をちり紙でぬぐうときの、社会性を逸脱した貴様らの笑顔はさぞかし素敵だったのでしょう? そして貴様らは、毎年この時期にコミケットに行かなかった旨を記述するわたくしは、さぞかしコミケットに行った貴様らをうらやましく思っていると思っているのでしょう? うらやましくなんかないもん! 全然行きたくなんかないもん! 純潔のほうが大切だもん! 来年もぜったいにわたしを誘っちゃダメ! ダメなんだからね!