えんじ色のブルマが宙を舞って卓上に落ちる。
「ツモ。5200だ」
積み上げられる現金を手で払いのけ、
「いらぬ世話だ。すべて幼女同人誌に変えてもらおう」
金庫から取り出される幼女同人誌20冊。規制のない昭和40年当時の幼女同人誌は、現在の価値に換算すると約200冊分…!
「少なくとも今までワシが殺してきた、ロリコンを装ってはいるが実は成熟した自我との折衝を恐れているただ自分が好きなだけの人間…そういう輩とは質が違うというわけか…!」
小鳥巣の口元に浮かぶ笑み。
「だが、それでも負けるが麻雀だ」
「悪いな。通らず、だ」
小鳥巣が白パンティを卓に置くのに反応して倒される手牌。
「8000」
テーブルを殴りつける小鳥巣。
「馬鹿な! もう100時間以上は打ち続けているはずだ! なぜ切れない? なぜ三人で交代して打つワシたちを圧倒できる? 狂ってる、狂ってる、この…最悪の童女愛趣味者め!」
引いてきた縦笛に間髪入れず左端の網タイツを切りとばす。ざわめく黒服たち。
「おい、今のでアガりじゃないのか?」
「まさか、まさかヤツは…!」
「それ以上の勝ちに何の意味がある!? 多すぎる勝ちは賭けを成立させる世界そのもののバランスを崩してしまう! やめろ、生きて帰りたかったらやめるんだ!」
流れ始めるブルージーな音楽。
「俺はただ」
ツモ山に青白い手がのびる。
「醒めない夢を見ていたいだけなのさ」
発光する、骨そのもののような指が牌に触れる。鳴り響く銃声。卓に肉のぶつかるにぶい音。
「(かすれた声で)和了、です」
力無く開かれた指の間からこぼれ落ちる黒ランドセル。男の目に白い膜がかかる。
「殺すことは、なかったのに」
勝負の終わった麻雀卓を取り囲む三人の黒服たち。冷えていく男の死体。
「奇跡は起こらなかったな。この男も小鳥巣様を倒すことはできなかったわけだ」
「いや、見ろ」
「ああ……!」
卓上に流れる血が黒ランドセルを赤ランドセルに染めていく。
「ロリータ大三元完成、か」
窓を開け、月を見上げる黒服。雲ひとつない夜空に完全な満月。黒服のサングラスから光るものが伝い落ちる。